第51話 レイヴェルが冒険者になった理由
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
オレ達が里についてから時間が経って、夜を迎える頃。
ギルドから派遣されて来た他の冒険者達も続々と里に到着していた。って言っても、里の中にはやっぱり入れてないみたいだけど。
オレ達が里に中にいるのがバレたら顰蹙買いそうだな。まぁだからってオレ達にはどうしようもないことだけど。
中に入れてあげてくれ、なんて言えないし。
まぁ今のところ大きな文句も出てないみたいだし、大丈夫だろ。たぶん。
オレとレイヴェルは夜ご飯を食べ終わって部屋でのんびりしてるところだ。
ラミィはお風呂の準備をしてくれてる。
んで、リューエルさんは冒険者達のところに言って話し合い中と。
「ギルドから派遣されて来たのはA級の冒険者チームが一つ、B級が三つ。あとはC級とD級の混合チームがいくつか……結構な戦力だな」
「そうなの?」
「当たり前だろ。A級の冒険者チームなんてそうそうお目にかかれるもんじゃないしな」
「ふーん。あれ、でもA級の冒険者チームって出払ってたんじゃなかったの?」
「イージアのA級冒険者はって話だ。他の所から派遣されてきたんだろ」
「イージアに持ってこられた依頼なのにそんなことできるんだ」
「まぁ依頼によっては他支部の力を借りないとできないようなものもあるし。何よりあのイグニドさんだからな。動かすことくらい簡単だと思うぞ」
「やっぱりすごいんだねぇイグニドさんは。いいよねぇA級冒険者。いっぱい稼いでるんだろうなぁ」
「いきなり下世話だな。確かに相当稼いでるとは思うけど、だからって金を持ってるってことにはならないと思うぞ」
「そうなの?」
「あぁ。A級冒険者が受ける依頼は危険度の高いやつも多いから必要とされる道具の経費も高くなる。武器とか防具とかもな。稼いでもそれだけ出費がかさむってことだ。稼ぎたいだけならB級が一番良いって言われてるな」
「へー、そうなんだ。ん? でもじゃあなんでA級とかS級になる人がいるの?」
「別に稼ぐだけが目的じゃないからな。名声が欲しい人は上を目指すし、ただ力が欲しい人も上を目指す。冒険者としてのランクは後からついてくるものって感じだ」
「なるほどねー」
確かに知り合いの冒険者も変な人多いし。そういうもんなのかな。
「イグニドさんが言ってたけど、A級以上になるような冒険者はどっかがおかしいんだとさ」
「おかしい?」
「あぁ。目的のために自分の命を投げ出せる。そんな奴ばっかりだって言ってた」
「レイヴェルはその変な人達の仲間入りしたいの?」
「変な人の仲間入りってなぁ。別にそういうわけじゃないけど、でもいずれそこまで強くなれたらいいなとは思ってるよ」
強くなりたい……ね。
強さって言うなら、オレがいる時点でもう十分以上の力は持ってるわけだけど。そういうことじゃないんだろうな。
「ねぇレイヴェル。どうしてレイヴェルは強くなりたいの?」
「どうしてって、それは……」
「あ、話したくないって言うなら無理には聞かないけど」
「……いや。話すよ。どうせいつかは話そうと思ってたことだ。って言っても、大した話じゃないぞ」
よくあることだ。そう前置きしてレイヴェルは自分が強さを求める理由。そうなった原因について教えてくれた。
「俺はどこにでもあるような村の、どこにでもいる普通のガキだったよ。あの日のまではな」
レイヴェルの顔が陰る。
オレはただ黙ってレイヴェルの話を聞いていた。
「魔物が俺のいた村を襲ったんだ。大型の強力な魔物がな。冒険者もいないような小さな村だ。太刀打ちなんてできるはずがない。あっという間だったよ。仲の良かった友達も、気のよかったおっさんも……俺の父さんと母さんも……殺された。俺は……何もできなかった。父さんに家のタンスの中に隠れてろって言われて、そのままずっと息を押し殺してた。あの暴虐の魔物がいなくなるまで。目の前で父さんと母さんが殺されるのを見てることしかできなかったんだ」
グッと拳を握りしめ、悔し気に俯くレイヴェル。
その心中はオレにはとても推し量れない。目の前で家族を殺される。
そんな経験をオレはしたことがないからだ。
でも、これがこの世界の現実でもある。魔物に襲われて村ごと滅ぶ。
ありふれた悲劇過ぎて、物語の一ページにもならないようなレベルの話だ。レイヴェルと同じような経験をした人はいくらでもいる。
「その時に見たんだ。あの魔獣を従えてる魔人の姿を」
「魔人? それってつまり、その魔物は飼われたってこと」
「あぁ。たぶんテイマーだったんだと思う。なんで俺の村を襲ったのかなんて知らない。でも理由なんて関係ない。はっきりと覚えてる。あの魔人の顔は。だから俺は、あいつの情報を集めるために冒険者になったんだ。A級やS級まで行けばどんな情報だって手に入れることができる」
「つまりレイヴェルは家族の復讐のために冒険者になって、その魔人を探してるってこと?」
「……あぁ。あんまり良い動機じゃないってことは自分でもわかってるよ。イグニドさんにもさんざん反対されたしな。それでも俺が折れないってわかったから渋々修行させてくれるようになったけどな」
「……なるほどね」
「幻滅したか?」
「幻滅? どうして?」
「いやだってほら、さっきも言ったけど俺が冒険者になりたい理由ってあんまり褒められたものじゃないしな。復讐が動機なんて情けないってのは自分でも理解してるしな」
「私は情けないとは思わないよ」
レイヴェルに起きた悲劇はありふれた悲劇。
確かにそうだけど、でもそれはレイヴェルの理由が大したことじゃないって理由にはならない。
むしろ動機としては十分過ぎるくらいだ。
復讐? 結構だ。それがレイヴェルの理由になるならオレはそれを受け入れる。
「良い動機だとは言わないよ。でも悪い動機だとも思わない。それがレイヴェルの先に進む理由になるなら私はそれでいいと思うよ。でも、そこで終わっちゃダメ」
「? どういうことだ?」
「復讐だけを目的に生きると、その復讐が終わった後に残るものは何もないから」
復讐だけを糧にして生きて、その復讐を遂げた後に抜け殻のようになってしまった人をオレは知ってる。
このまま復讐だけを目的にしてたらレイヴェルもきっとそうなる。
「だからレイヴェルにはね、他にも大事なことを見つけて欲しい」
「大事なこと……か。急にそんなこと言われてもな」
「大丈夫だよ。レイヴェルには私がいるから! レイヴェルが道を踏み外さないように、正しい復讐の道を歩ませてあげる! そのうえで、レイヴェルにとって『大切』なものを、一緒に見つけよう」
「クロエ……」
「ありがとねレイヴェル。話してくれて」
「いや。さっきも言ったことだけど、いつかは話そうと思ってたことだからな」
「それでも、レイヴェルにとって大事なことを、ちゃんとレイヴェルの口から教えてくれたから。それが私はすごく嬉しい」
「……ふん、よくもまぁそんな恥ずかしいことを臆面もなく言えるな」
「あれ? もしかして照れてる? レイヴェル照れてるんだ~」
「うっせ! 照れてるわけじゃねーよ!」
「うっそだ~。誤魔化さなくてもいいのに~」
今日、レイヴェルは大事なことをオレに教えてくれた。
レイヴェルの根幹に関わる部分を。
だからいつか……そのお返しってわけじゃないけど、オレのことを全部教えれる日が来たらいいなって、そう思う。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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