第318話 合流
誤字脱字があれば教えてくれると嬉しいです。
時間は少し遡る。
クランとワンダーランドとの戦いを終えたクロエとレイヴェルは急いでアイアルとコメットの元へと向かっていた。
「レイヴェル、体の調子はどう?」
「大丈夫だって言いたいところだが、正直本調子とは言えないな。カイナに魔力をかなり持っていかれた。クラクラするのはそのせいなんだろうな」
「魔力欠乏の症状。無茶はしないでね」
「そうは言うけどな。この状況じゃどうしたって無茶することになりそうなんだが」
「そうかもしれないけど、でもその前に私を頼って。お願いだから」
「わかってる。しっかり頼りにさせてもらう」
縋るようなクロエの表情にレイヴェルは安心させるように笑みを浮かべてそう言った。
「というか、そういうクロエの方こそ大丈夫なのか? カイナの奴、無茶苦茶やってただろ」
「うん。確かにそうだけど……特に問題はないかな。それどころかむしろ……」
「むしろ?」
「……ううん、なんでもない」
カイナから体の主導権を取り戻して以降、クロエの感じている違和感。それは体の疲労とは裏腹に感じている不思議な充足感だった。カイナの影響なのか、これまでにはできなかったことすらできるようになったような、そんな気すらしていた。
しかし今のクロエにそれを試す勇気はない。というよりも、今は《破壊》の力を使いたくは無かった。
(オレが今まで使ってきた《破壊》の力がカイナの力だったなら、オレは……オレはいったいなんなんだ?)
クロエの持つ記憶は魔剣として森の中に突き刺さっていたのが一番最初だ。それから人化して、仲間と出会い、そして別れた。
では魔剣になる前のことは? どうして魔剣になったのか? そもそもなぜこの世界にいるのか。根本となる所をクロエは何も知らなかった。かつては調べようとしたこともあった。だがこの世界での生活が長引くにつれていつしか考えなくなってしまった。
(オレはどうして魔剣になったのか。まさか今更こんな形で……ううん、考えるのは後にしよう。どうせ考えたってわかるわけじゃないんだから。それより今はアイアルとコメットのことだ)
遠くから爆発音が聞こえる。それは明らかに戦闘音で、誰かが戦い続けている証拠だった。
「急ごうレイヴェル!」
「あぁ!」
森の中へと突入するクロエとレイヴェル。足場の悪い森の中を走るクロエとレイヴェルは人の気配を感じた。
「クロエ」
「うん、わかってる」
その気配は少しずつ近付いてくる。エルフの兵士かと警戒する二人だが、その気配が近付いてくるにつれてその気配が知ったものであることに気付いた。
「ねぇレイヴェル、この気配って」
「あぁ、間違い無い!」
顔を見合わせた二人は気配のする方へと近付いていく。
向こう側もクロエ達に気がついたのか、ゆっくりと近付いて来る。そして――。
「動かないでください!」
「ストップ! ストップ! 私達だよ」
「……お姉さま?」
茂みから飛び出してきたのはコメットだった。その手には銃が携えられている。
咄嗟に両手を挙げて自分達が敵ではないということを主張するクロエ。
コメットの後ろからはアイアルとキュウが姿を現す。
「キュキュッ!」
「キュウ。良かった無事だったんだね。ふたりも無事で良かった」
「それはこっちの台詞ですわ! お姉さま達が無事で本当に良かった。あの魔剣使いとの決着がつきましたの?」
「決着は着いたというか……不完全燃焼のままというか。まぁでも大丈夫。とりあえず魔剣使いはいなくなったから。そっちはどうしたの? 大砲は?」
「……それが」
コメットはこれまでにあったことを説明する。アルマと戦ったこと、そしてカームの裏切りを。
「そんなことがあったのか」
「ごめんなさい二人とも。私達がもっと早く駆けつけることができてたら」
「いいえ。こうして来てくれただけでも嬉しいですわ」
「おい! 呑気に話してる暇なんて無いだろ。こっちはもう十分に物資は集めたんだ。早く親父のところに戻るぞ!」
アイアルはこうして話している時間すら惜しいのか、アルマの場所へ戻ろうと急かしてくる。その気持ちはクロエにも痛いほどわかる。
「そうだね。これだけ音がするってことはまだアルマも戦ってるんだろうし。カームはぶっ飛ばすとして。アルマに言いたいことも聞きたいこともいくらでもあるんだから」
「そうだな。急ごう」
「キュッ!」
こうして、コメット、アイアルと合流することができたクロエ達はアルマの元へと急ぐのだった。
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