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魔剣少女になりました!  作者: ジータ
第四章 妖精と地精の国
321/350

第307話 カイナvsワンダーランド 前編

誤字脱字があれば教えてくれると嬉しいです。

『ふふん、さーてと。今頃二人はどんな夢を見てるかな』

「…………」


 楽しげな様子のワンダーランド。だが一緒にいるクランは何も言わずにジッとクロエとレイヴェルのことを見つめていた。

終わりなき夢幻(エンドレスループ)』。クランとワンダーランドが使う技の一つ。その名の通り、対象者を終わらない夢の中へと誘う技。

 他者を操る能力と幻を見せる能力を持つワンダーランドだからこそできる技だ。

 この技に囚われた者は死ぬまでずっと、死んでも永遠に夢の中に囚われることになる。それも悪夢に。技をかけられた本人がもっとも恐れる夢へと誘うのだ。そうして命だけではなくその魂までも陵辱し、殺す。それがワンダーランドにとって最高の『喜劇』。

 この技に囚われた時点で、レイヴェルとクランの勝機は万に一つも無い。

 そのはずだった。


「ワンダーランド」

『? これは……』


 それはかすかな変化。膝を着いたままがっくりと項垂れていたレイヴェルの指が動いたのだ。しかしそれは本来ならばあり得ないことだった。ワンダーランドの技にレイヴェルとクロエは完全に嵌まっていた。そもそもが初見殺しの一撃必殺。抗う術などあるはずもない。

 だが気のせいではなく、確かにレイヴェルの指は動いたのだ。


『まさか……夢の中で抵抗してる? あり得ない。二人は確実に引き離した。この夢の中で魔剣の力を使えるはずがないのに』


 ワンダーランドもバカではない。夢の中の世界へと二人を落とす時、同じ場所にはいられないようにした。

ワンダーランドも同じ魔剣だ。その力の理屈は知ってる。ワンダーランドもそうであるように、パスが繋がっていなければ魔力は供給されず力は使えない。どんなに強力な魔剣であろうとその大原則は覆せない。

それは本能的恐怖とも呼ぶべきもの。それはワンダーランドが魔剣としてこの世に生を受けてから初めての感情だった。


『クラン、斬って!!』


 焦ったワンダーランドはクランにレイヴェルのことを斬り殺すように指示を出す。普段は杖型である自身の姿を剣に変化させてまで。自らの剣身(からだ)を汚さないことを信条とするワンダーランドにとってはあり得ない判断だった。

 クランはそれほどまずい状況なのだと判断し、とっさに剣を振り上げる。だがその判断は一瞬遅かった。


『あはぁっ♪』


 ガキンッ、と硬質な音を立ててワンダーランドの一撃をクロエが――カイナが受け止めた。


『あなた達がわたしを目覚めさせてくれたんだ』


 拮抗は一瞬だった。カイナは《破壊》の力を使って反撃に転じる。

 凄まじい衝撃に吹き飛ばされたクランは飛ばされながらも体勢を立て直す。


「なに今の力」

『っぅ、本気であたしのこと怖そうとしてきた!』

『あらら、壊れなかったか。まだちょっと力の扱いが不安定ね。久しぶりだからしょうがないけど』


 それは直感とも呼べるものだった。目の前にいる存在がクロエではないということをクランとワンダーランドは直感的に感じ取ったのだ。


『これはちょっと予想外の展開なんだけど。あなただれ?』

『わたし? わたしはカイナ。この体の本当の持ち主。ちょうど良い機会だから、リハビリに付き合ってよ』

『冗談!』


 ワンダーランドの本能が警鐘を鳴らす。目の前の存在は今ここで全力で叩き潰すべき存在だと。カイナという存在は、全ての魔剣の天敵たり得る存在だと。

 どういうわけかは知らないが、本調子でない今だけが倒すチャンスだと。いつもの楽観的な考えも鳴りを潜め、ここで全力を出さなければならないとそう判断したのだ。


素晴らしき人形劇(ワンダーマリオネット)!!』


 他者を支配し、束縛する技。一瞬でも動きを止めることができれば剣で貫くことができる。クランはそう判断したのだ。そしてその狙い通り、クランの技はカイナのことを拘束した。しかし――。


『ありゃりゃ。すごいねこれ。全然動けないや。でもさぁ、魔剣同士の戦いで……ううん、今のこのわたしにその程度の力が通用すると思う?』


 刹那の破壊。拘束などまるで無かったかのように動き出したカイナはレイヴェルの体を操って動き出す。


『あー、意識失ってる体動かすのって面倒だな。でもまぁいいや。変に抵抗されるよりはマシだし、魔力はもらえる。マスター、しばらく眠ってて。その間に全部終わらせるから』

「ねぇワンダーランド。なにあれ。あんなの聞いてない」

『あたしだって知らない! ちょっとさぁ、さすがにジョークじゃすまなくなってるんだけど。でもさぁ、これでもあたしも魔剣だから。はいそうですかってあっさり引き下がるわけにもいかないの!』


 ワンダーランドにも魔剣としての意地と矜持がある。引くという選択肢は無かった。


『久しぶりにやろっかクラン』

「あれ疲れるんだけど。あの方のためだからやる」


 クランが練り上げた魔力をワンダーランドが受け取り、その形を変化させる。

 強靱な鎧の姿へと。その姿を見てカイナは笑う。


『へぇ、面白いね。見せてよその力』

『うっさい。その余裕、すぐに無くしてやる!』

「鎧化――『導化虚神』!」


 クランとワンダーランドの真の力が解放された。


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします。

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