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魔剣少女になりました!  作者: ジータ
第四章 妖精と地精の国
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第275話 奇妙な違和感

誤字脱字があれば教えてくれると嬉しいです。

 レイヴェル達の前に現れたのは、この国に来た時にも出会った近衛隊の隊長であるカームだった。


(このタイミングで出てきたか。まるで見計らってたみたいなタイミングだが……微妙に嫌な感じだな)


 初日にも感じたことではあったが、レイヴェルはこのカームという男がどうにも気に食わなかった。それはレイヴェルを見る目だけが原因ではない。

 コメットに対してすら礼儀正しくしてはいるものの何か含むところがあるような、そんな気がしてならなかったのだ。

 こうして今前に立たれていても、その眼から感じ取れるのは嘲りのような感情だけだ。


「わたくし達は叔父様に……ウィルダー王に用があるだけです。何か問題がありますか?」

「……今ですか?」

「えぇ、レイヴェルさんをこの国まで連れてきた以上、叔父様に紹介するのが筋というものですわ。というよりも、わたくしはそれが目的でこの国に戻ってきたのですから。それとも何かわたくし達が叔父様に会ってはいけない理由があるのですか?」


 毅然とした態度で言い放つコメット。もしここで少しでも気弱な態度を見せればカームに言いくるめられるかもしれないと思ったからこそ、あえて強気で立ち向かったのだ。

 しかしそれはコメットにとって精一杯の虚勢でもあった。レイヴェルがカームのことを気に食わないと思っているのと同じように、コメットもまたカームに対して良い感情を抱いては居なかった。

 本能が拒絶するとでも言うべきだろうか。カームのコメットを見る目が恐ろしくて仕方無かったのだ。子供の頃からずっとだ。まるでコメットのことを自分の物として見ているかのようなその目が。


「……いえ、そうですね。王も今ならば少しは時間が取れるでしょう。私の方から話を通しておきましょうか?」

「いえ、けっこうです。このまま直接向かうので」

「そうですか。ですが一つだけ忠告を。あなたにです。レイヴェル・アークナー」

「俺に?」

「えぇ。その腰に提げた剣。本来ならこの王城に足を踏み入れる時点でこちらで預かっておくべきものだ」

「でもこの剣は」

「わかっている。意思を持つ剣。私達では触れることができない剣だ。だからこそ携帯していても見逃している。だがもしこの王城内で、ウィルダー王の前で少しでも剣に触れたら否、剣に手を伸ばす素振りを見せただけでもその首、打ち落とされるものとしれ」

「カーム! その言葉は彼に対してあまりにも失礼でしょう!」

「申し訳ありませんコメット様。しかし我らは近衛隊。王の身を守るために存在しています。万が一を許すわけにはいかないのです」


 うやうやしい態度で頭を下げるカームだが、その態度が見せかけであるのはもはや明白だった。もしそうでなければ仮にもコメットの想い人としてここに来ているはずのレイヴェルに対してここまで言えるはずがないのだから。


「では私はこれで失礼します。何かあればすぐにお呼びください。すぐに駆けつけますので」

「……えぇ、わかりましたわ」


 頭を下げ、離れていくカーム。

 その姿が十分に離れた所でようやく肩の力が抜けたのかコメットはため息を吐きながら頭を振る。


「申し訳ありませんレイヴェルさん。気分を害されたでしょう?」

「いや、大丈夫だ。あぁいう扱いには慣れてるしな」


 元より他者から嫌われやすいレイヴェルにとって、今更カームの態度はそこまで気に障るようなものでは無かった。


「でもあいつ、思ったよりもあっさり引き下がったな。てっきりもっと食い下がってくるかと思ってたんだが。それこそ無理矢理着いてくるくらいはしてもおかしくないだろ」

「確かに……あなたの意見に賛同するのは癪ですけれど、言われてみればそうですわね。このタイミング、叔父様とは会わせたくないはずですけれど」


 戦争当日というこのタイミング。もはや開戦は避けられない流れであるとはいえ、不確定要素はできる限り減らしたいはず。だというのに不確定要素の塊であるコメット達のことを易々と見逃したのは不自然でもあった。


「……気にはなりますけど、今は後回しですわ。とにかく次の邪魔が入らないうちに叔父様の元へ向かいましょう」

「あぁ、そうだな今はそっちが優先だ」


 カームの行動に引っかかるものを感じながら、それでもレイヴェル達はその疑問をいったんは押し込めてウィルダー王の下へと向かう。

 道中、近衛の兵達が睨み付けるような目でレイヴェルのことを見ていたがコメットの手前もあってか。カームのように立ち塞がることはされなかった。

 そして――。


「ここが叔父様のいる……王のいる玉座の間ですわ」

「玉座の間……」


 その部屋の前には近衛の兵が控えていた。

 

「ご用件を」

「この時間に王への謁見の予定は無かったはずですが」

「えぇ、ですからこの時間を選んだのですわ。彼を紹介するにはちょうど良いタイミングかと思いまして」

「「…………」」


 ねめつけるような目でレイヴェルのことを見る二人。その目には余所者に対する嫌悪がありありと見て取れた。


「何か問題がありますの?」


 コメットが語気を強めると、兵達は一瞬目を見合わせてから元の位置へと戻った。


「失礼いたしましたコメット様」

「どうぞお通りください」


 兵達が門を開き、中へと通される。

 その行動に奇妙な違和感のようなものを抱きながらも、レイヴェルはコメット達と共に玉座の間へと足を踏み入れた。

 玉座の間というだけあって、その部屋の中は華美な装飾が施され、様々な宝石のようなものが飾られていた。

 そしてその部屋の中央。一際大きな椅子にその人物は座っていた。

 コメットが膝をつき、頭を垂れたのを見てレイヴェル達は慌てて同じポーズを取った。


「事前の通達も無く来てしまった無礼、お詫び申し上げますわ」

「良い。頭を上げよ」


 その言葉で頭を上げたコメットは改めて先に座る人物――ウィルダー王と視線を交わした。


「……お久しぶりですわね、叔父様」



今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします。

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