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魔剣少女になりました!  作者: ジータ
第三章 獣人族の宝玉編
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第183話 他の誰にも渡さない

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

「っ……」


 目の前に現れた漆黒の人影に思わず息を呑む。

 一目見た瞬間にわかった。こいつは決してオレと……魔剣と決して相容れることのない存在だと言うことが。

 なるほど。これが根源。先輩の言ってた【魔狩り】の……。

 思わず震えそうになる体を意思の力で抑え込む。


「そこをどいて」


 その影の後ろにレイヴェルがいた。

 オレに襲いかかってきたのと同じ漆黒の腕に全身を絡めとられて、身動きが取れない状態で。

 レイヴェルの表情は虚ろで、抵抗してる気配もない。しかも少しずつ下に引きずり込まれていってる。マズい状況なのは言うまでもない。


「…………」


 オレの言葉にそいつは何も答えなかった。ただその場を動かなかったのが何よりの答えだろう。まぁすんなりレイヴェルの所に行けるなんて思ってなかったけど。


「素直に退く気はないってことだね」


 影は返答代わりと言わんばかりにオレに向けて手を伸ばす。それに呼応するように、足元の腕がオレに向かって伸びてくる。


「それが答えってわけね。でも、私だって引くわけにはいかないの。悪いけど無理やりにでも押し通らせてもらうから!」


 伸びてくる腕は数こそ多いけど、そこまで動きは速くない。避けるのはそう難しいことじゃない。動きも直線的で単純だ。これならなんとか掻い潜ってレイヴェルのところまで——っ!?


「行カセ無イ」

「邪魔を……しないで!!」


 レイヴェルの元へ行こうとしたオレの前に黒の影が割り込んできた。なるほど、オレにレイヴェルの所までたどり着かれるのは避けたいってわけだ。

 それはつまり裏を返せばオレがレイヴェルの所までたどり着ければ正気に戻せる可能性があるってことだ。

 ここが正念場。なんとしても突破してみせる!


「魔剣……コノ世界ニ害シカ与エナイ存在。決シテ許シハシナイ」


 耳障りな声に思わず顔を顰める。とことん合わないってそう感じる。

 レイヴェルの中にある【魔狩り】の力の根源。オレ達魔剣を滅ぼすために生み出された存在。なんとなくの経緯は先輩から聞いたことがあるけど。

 まさかこんなものがレイヴェルの中に眠ってたなんて。全然気づかなかった。


「コイツノ体ハ我ラノ物ダ!!」

「っ、違う!!」


 思わずカッとなって言い返す。無意識に力が漏れたのか、オレの周囲にあった腕の動きが僅かに鈍る。

 真正面から黒い影と対峙する。


「レイヴェルの体はレイヴェルのもの。あなたのモノなんかじゃない。そんなの絶対に認めない! レイヴェルは私の契約者なの! あなたなんかに渡したりしないっっ!!」


 あぁそうだ。

 こんな奴にレイヴェルを渡したりしない。

 レイヴェルの体はレイヴェルのもの。そして……レイヴェルの魂は、契約した『私』のものだ。

 他の誰にだって渡すもんか。


「そこを……退いてっ!!」

「っ!?」


 左手の契約紋が疼く。この左手の契約紋はレイヴェルの魂と直接繋がってる。さっきまでは感じれなかったパスも微弱ながら繋がってるのを感じる。

 そこからレイヴェルの魔力が流れてきてるのも。レイヴェルに近づけば近づくほどにパスの繋がりは強くなってる。


「コノ力ハ……マサカ貴様、ラグナロクシリーズノ……」

「レイヴェルを縛るものがあるなら私がそれを破壊する。それがたとえレイヴェルの身に流れる血の呪いであったとしても」

「ク……ヨリニモヨッテ……」


 目の前の影は明らかに狼狽していた。理由はわからない。

 でもそれならそれでいい。目の前のこいつを排除できる力があるなら。

 

「私は魔剣。レイヴェルと契約した、《破壊》の魔剣。この力で私はレイヴェルを取り戻して見せる!」


 オレが一歩踏み出すと影は萎縮したように一歩下がった。


「レイヴェルから離れてっ!!」

「コンナ所デ……コイツヲ渡シテナルモノカ!! 我ラノ物ダ、コノ体ハ!!」

「っ!」


 レイヴェルの体を包んでいた黒い腕がその動きを早くし、影の中へと引きずりこもうとする。

 ってマズい! このままじゃレイヴェルが完全に取り込まれる!

 行く手を邪魔する腕を振り払いながらレイヴェルの元へ駆ける。


「フッ、無駄ダ。モウ遅イ」


 レイヴェルの体がどんどん沈んでいく。

 レイヴェル……レイヴェルレイヴェルレイヴェル!!

 ドクンと心臓が脈打つ。左手の契約紋がこれ以上ないほどに熱を持ち、光り輝いた。

 そしてオレの契約紋に呼応するように、レイヴェルの右手に刻まれた契約紋が光を放つ。

 後少し、もう少しで届く。いや違う、届かせてみせる!!


「レイヴェル! 私の手を掴んでっ!」


 一瞬、レイヴェルの右手が動いた気がした。

 必死に手を伸ばす。届け、届けと想いを込めて。

 

「レイヴェルッッ!!」

 

 そして、オレの手がレイヴェルに届いた。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!

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