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魔剣少女になりました!  作者: ジータ
第三章 獣人族の宝玉編
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第162話 獣化

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 コルヴァの元に向かおうとしたファーラの前に出る。

 ヴァルガの方はレイヴェルに任せたけど、今のレイヴェルなら絶対に大丈夫だ。確信を持ってそう言える。

 だからオレはオレのやるべきことをする。

 

「っ、どうしても止めるってわけかい」

「当たり前でしょ。それとも、私がよろこんで見逃すとでも思った?」

「……いいや、そんなわけないのはわかってたよ。だからあんた達が来る前に終わらせるつもりだったのに」

「言っとくけど、こっちも手加減無しでいくから。多少の怪我は覚悟してよね」


 レイヴェルから貰った魔力を自身の力に変換する。

 ファーラは体術の達人だ。短剣の扱いにも長けてる。オレが身に着けた程度の拙い体術じゃ手も足も出ないだろう。

 だから、今だけはファーラから教えてもらった技術を捨てる。

 私の本当の力をわからせるために。


「行くよ」


 身を低く屈め、ファーラの方に向けて駆け出す。拳に纏うのは破壊の力。それを躊躇なくファーラに向けて振り下ろす。


「っ! なんて威力」


 振り下ろした一撃は躱され、代わりに地面に突き刺さる。

 破壊の力を纏った拳を地面程度が受け止めれるはずもなく、地震と共に大地が裂ける。

 余波で周囲の木々をなぎ倒すことになったけど、まぁしょうがないと思おう。

 ファーラはさすがに今のオレとまともに戦う気はないのか、オレの脇を抜けてコルヴァの元へ向かおうとする。

 まぁ正しい判断だ。さっきあんなこと言ってたしオレのことを舐めてるかと思ったけど、そういうわけじゃないらしい。いや、舐めてないのはあくまで魔剣の力か。

 昔、先輩達と一緒に旅をしてただけあって、魔剣の力をファーラはよく知ってる。ヴァルガにしてもそれは同じだろう。

 だからこそ魔剣と相対した時の対処も心得ている。

 一番は魔剣使いに目をつけられないことだけど、もし魔剣使いと戦うことになったら一番大事なのは、戦わないことだ。

 これは矛盾してるようで矛盾していない。魔剣使いとは戦わない。まともに相手をしない。そんな状況になったらすぐ逃げること。それが鉄則だ。

 それはファーラ達ほどの一流の戦士でも同じ。例外なのはライアとかイグニドさんみたいな、人を超えた力を持った人だけだ。

 言い方は悪いけど、ファーラ達はまだその領域には達していない。だから絶対にオレ達には勝てない。その事がわかってるからこその逃げ。

 でも——。


「甘い」

「なっ!?」


 ファーラは速い。間違いなく速い。でも、今のオレはそれ以上に速い。ただそれだけの話だ。

 オレはファーラの腕を掴んで放り投げる。そのまま転がることなく受け身ととってすぐに起き上がったのはさすがって感じだけど。

 ファーラにとっては絶望的な状況のはずだ。本気で走ってオレを振り切ることができなかったんだから。コルヴァとの距離が再び開いたこの状況で、オレを出し抜くのは不可能だ。


「はは……やっぱりあんたも魔剣なんだねぇ。その力。わかってたつもりだったけど」

「ううん、何もわかってないよ。ファーラもヴァルガも、私の……魔剣のことを。わかってたらこんな無意味な戦いをするはずないもの」

「それはちょっと違うね。無意味でもなんでも、やらなきゃいけない時があるんだよ」


 力の差は見せつけた。一瞬のやり取りだったけど、それでもオレとファーラの間にある絶望的な力の差はわかったはず。それなのに。


「どうして……」


 ファーラの目から戦意は一切失われていない。いや、戦意とかそういうのじゃない。あれは意志だ。絶対に、何がなんでもやり遂げるって決めた眼差し。ヴァルガも一緒だった。

 わからない。何が二人をそこまで突き動かす? 二人は何を求めてる?

 間違ってるとか間違ってないとか、そんなそもそもの前提からして違うんじゃないかって思うくらい。

 ……わからない。いくら考えても答えなんかでるわけがない。

 聞けば答えてくれるって感じでもない。なら無理やり聞き出すしかない。たとえ力尽くでも。


「……あっちも本気を出したみたいだし、アタシも本気で行かせてもらうよ」

「いったい何を……?」


 ファーラが懐から取り出したのは黄色に輝く球体。

 まるで満月を模ったような……っ! まさか!


「もう遅いよ——ウォオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」


 ファーラの体から放たれる魔力が膨れ上がる。これは一部の獣人族だけが使える……『獣化』!!

 獣人族の潜在能力を限界まで引き出す……でもあれは満月の夜しか使えなかったはずなのに。今はまだ夜じゃない。

 まさかあの魔道具が……。


「ふぅ。変身するってのはやっぱり疲れるねぇ」


 髪も牙も爪も伸び、その眼は真紅に染まる。でも、理性は失ってない。

 昔は上手く制御できてなかったけど、今はもう完全に制御できてるのか。


「この姿をクロエに見せるのも久しぶりだねぇ。クロエ、あんたが変わったみたいにアタシらも変わったんだ。もう昔のままのアタシじゃない」


 ファーラが身を低く構える。それはまるで獲物に飛び掛かろうとする獣のような姿勢。


「邪魔するならクロエ、アンタでも許さないよ」


 あくまでオレの話を聞く気はないと、止まるつもりはないとクロエは宣言する。

 オレの想いも何もかも無視して。その事実にどうしようもない苛立ちが募る。


「っ、この……わからずやっ!!」


 そしてオレとファーラは正面からぶつかった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!

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