第153話 ライアvsアリオス
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少し前。
ライアとラオ、リオの三人は精霊の森を目指して歩いていた。と言ってもその速度は並大抵ではない。悪路であるというのにそれをものともせず、普通の人の何倍もの速さで歩いていた。
「ふぁぁあ、暇だねぇラオ」
「確かに暇。でも気は抜けない」
「別に気を抜いてるわけじゃないって。今回の敵は魔剣使いだって話だけど、どんな魔剣なのかなぁ。楽しみじゃない?」
「ラオ達はまだ魔剣使いに勝てるほど強くない」
「確かにそれはそうなんだけどさぁ。試してみたくはあるよねぇ」
「……否定はしない」
その口振りからは魔剣使いと戦うことへの気負いなどまるで感じられない。それだけの実力と、実績を兼ね備えているのが『光翼の剣』というパーティーなのだ。
「リーダーも楽しみだったりする?」
「……あまり無駄口を叩くな。うるさいぞ」
「おーこわ……」
一瞬向けられた殺気にリオはブルっと体を震わせる。もちろん本気の殺気ではない。それでも多少のことでは動じないリオですら心臓が跳ねるほどだ。
しかしどれほど見回せど同じ景色が続くばかり。飽き性のリオがこの飽きてしまうのは仕方のないことだった。
「他のとこはどうかなー? 何の連絡もないってことは大丈夫なんだろうけど」
「ここまで気配を感じないのは異常。何かしてる可能性が高いと思う」
ライア達の気配察知の能力はかなり高い。それこそ獣人であるファーラやヴァルガにも負けないほどだ。しかし、この森に入ってから今に至るまでライア達はそれらしい気配を一切感じていなかった。
「魔剣ほどの力を隠しきれるとは思えない。現にクロエの力は感じてる」
「すっごいよねぇ。もうやってやるぞーって感じ。自覚無いんだろうけど」
クロエ達のいるであろう方向から感じる濃密な気配。それはクロエの放つ魔剣としての力の片鱗だ。本人がやる気になっているせいなのか、異常なほどの気を放っていた。
「クロエちゃんの力もどっかで見てみたいよねぇ。あ、でもそう言えばリーダー、出発する前にクロエちゃんと何か話してなかった?」
「あぁ、そのことか」
それは、村を出発する直前のこと。
おのおのが最終準備に取り掛かっているなかで、ライアのもとへクロエが「話がある」と言ってやって来たのだ。
「…………」
「結局リオ達はどんな話か聞かなかったけど。何話してたの?」
「別に大した話じゃない。私達のやることは変わらない」
「??? まぁいいけどさぁ。リーダーが話してくれないのなんていつものことだし」
「そうだね。話さなくて問題ないならラオも気にしないことにする」
ライアが話すのはいつも必要最低限のことばかり。だいたいの問題は自身で片付けることができてしまうからだ。
リオもラオも冒険者としては最上位に属しているが、それでもライアには及ばない。いまだに二対一でも傷一つ負わせることができていないのだから。
それでも最初の頃に比べれば確実にリオもラオも強くなっている。ライアという壁の大きさを感じることができる程度には。
「そろそろ中間地点くらいだけど……っ!」
その時だった。ライア達の全身に悪寒が走ったのは。
ライアが刀を抜くのと同時に巨大な火球が木々を焼きながら迫る。迫る火球をライアは剣を横に一閃するだけでかき消した。
「これが挨拶か?」
『あっははははは! すごいねぇアンタ! まさかアタシの炎を剣で消しちまうなんて!』
「はしゃぐなヴォル。この程度挨拶にもならない。むしろ避けられたら興醒めしていたところだ」
暗がりから姿を現したのは一人の男だった。その手には真紅の大きな剣が握られている。もう一人聞こえてきた女性の声がその剣からのものであるのは明白だった。
「魔剣使いか」
「いかにも。俺の名はアリオス。こいつの名は【ヴォルケーノ】。見ての通り炎を操る魔剣だ。もちろんさっき程度の炎じゃない。地獄の業火すら生温い、この世界の理を超えた炎だ」
「炎……か。どうでもいいな」
「なに?」
「お前の魔剣がどんな能力を持っていようが私はお前を倒す。ただそれだけだ」
その言葉にアリオスは僅かに驚いたような目をする。それはアリオスの魔剣である【ヴォルケーノ】も同様だった。
『アハハハハッ! こいつは傑作だ。魔剣を持たないただの人間が本気でアタシらに勝つつもりなの?』
「面白い……やはり戦いというものはそうでなくてはな。最近は俺が魔剣使いだからというだけで逃げる腰抜けが多くて困っていたんだ。お前が期待外れじゃないことを祈るぞ」
臨戦態勢に入ったライアとアリオス。静かに、しかし確実に二人の放つ闘気が膨らんでいく。
「うわぁ、リーダーマジじゃん」
「相手は魔剣使い。油断はできないってことだと思う」
「そうなんだろうけどさぁ。どうする? これじゃリオ達の出る幕なさそうだけど」
「とりあえず連絡。後はリーダーの邪魔にならないように支援を……と、思ったけど」
ラオが周囲に目を配る。リオも同様に周囲を見回し、呆れたようにため息を吐いた。
「そりゃやっぱり魔剣使いだけじゃないよねぇ」
「仕方ない」
音もなくラオ達の周囲に降り立ったのはローブをまとった、怪しげな人物達。その人数は実に十人以上。いったいどこに隠れていたのかと思うほどだ。
「これ全部相手にする?」
「仕方ない。そうするしかない」
そして、ライア達の戦いが始まった。
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