第152話 精神的疲弊
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
〈レイヴェル視点〉
「今のところ気配は無し……だね」
「みたいだねぇ。フェティも何も感じないかい?」
「はい。特に問題は無さそうです」
「俺の方も同じだ。今のところは気配を感じられない」
昨日までとはまるで違う緊張感が場に流れている。それも当然だ。精霊の森への道中。いつ敵の襲撃があってもおかしくない。
そういうわけで、四方に分かれてそれぞれ警戒してるわけだ。
とは言っても、正直俺はあんまり役にたってない。ファーラさんやヴァルガさんは言わずもがな、フェティやクロエも俺以上の索敵範囲があるからな。
だからって頼り切るわけじゃないけど……これも今後の課題だな。
「それにしてもこの森……ホントにいつ来ても暗いね」
「まぁしょうがないんじゃないかい? このあたりの木はすでに精霊の加護を受けてる。巫女様の許可なく伐採して開拓するってわけにはいかないんだからね」
「それもそれでおかしな話だけど。それに精霊の森がこのあたりの木にも加護を授けてるのは精霊の森に害意を持った人を近づけないようにするためでしょ。そんなことができるなら、精霊の森への転移陣くらい用意してよって思うけど。巫女達も気が利かないっていうか」
んー、ずっと気になってたけど。クロエは精霊の森にあんまり行きたくないのか?
魔剣由来の理由なのか……それとも単純に昔何かあったのか。
確か前に聞いた話では精霊の森では外の理なんていうのが働いてるらしい。それが何なのかは全くわからないけど、その辺りのことも原因なのかもしれない。
昔に滅びたって言う精霊族が、滅びる前に遺したって言われてる聖域。それが精霊の森……だったか、確か。
色々と気になることは多いけど、今は聞いてる場合じゃないな。
「他のチームの方はどうかな? まぁ緊急連絡が無いってことは大丈夫なんだろうけど」
「あのリオとコルヴァが貼ってくれた結界にも今のところ異常は無いしね」
今回精霊の森へ行くまでの対処として用意したのは大きく二つ。一つがリオさんとコルヴァの結界。そしてもう一つが襲撃された時にすぐにそれを伝えれる連絡用の魔道具だ。連絡用の魔道具は言わずもがな、今回は一番重要なのはリオさんとコルヴァの二人が『月天宝』に施した結界だ。
リオさんは昨日と同種の結界を、コルヴァも似たような結界を三つの『月天宝』の施した。
万が一奪われてしまった場合の時間稼ぎとして、そして俺達自身が持ち逃げできないように。もし結界に何かあればすぐにわかるようになっている。
二人が揃わないと解除できないわけだ。リオさんはともかく、コルヴァまで似たようなことができるとは思わなかったけど。
「そう言えば、今ってどのくらいの位置にいるかわかるんですか?」
ふと、あとどのくらいで精霊も森へ着くのか気になって尋ねる。
体感的にはそれなりに歩いた気がしてる。でも足場も悪いから、思ったより進んでないかもしれない。
「そうだねぇ。厳密にはなんとも言えないけど、もうそろそろ半分って所だろうね。警戒しながら進んでるせいで遅れてる部分もありそうだけど」
「半分……まだ半分ですか」
「レイヴェル、疲れてるの?」
クロエが心配そうな顔で覗き込んでくる。
って、俺は何弱音吐いてんだ。こんなんじゃダメだ。気合いを入れ直さないと。
「悪いクロエ。大丈夫だ。問題ない」
「ならいいんだけど……」
警戒しながら進むっていうのは、思ってた以上に精神的な疲労を溜めるみたいだ。体力の方は全然問題ないけど、息が詰まるような感覚はどうしても拭えない。
今こうして歩いてる瞬間も、どこからか魔剣使いが狙ってるかもしれない。そんな考えが頭から離れない。
それが必要以上に俺の体を緊張させてるんだろう。こんなんじゃダメだとわかってても、意識せずにはいられない。
すると——。
「大丈夫だよ、レイヴェル」
「え?」
「レイヴェルの傍には私がいるから」
そっと俺の手を握って、クロエがそう言う。
「……あぁ、そうだな」
はは、俺も現金っつーか。これくらいのことで気持ちが落ち着くなんて。
「この状況なのにあんたらと来たら……」
「いっそ清々しいくらいです」
「仲が良いのは良いことだが……まぁ状況は考えるべきだろうな」
「こ、こっちのこと気にしなくていいから! みんなちゃんと周り警戒しててよ!」
「ははっ」
そうして場の空気が少しだけ和んだその時のことだった。
ファーラさんの持っていた魔道具が異常を知らせる音を鳴らす。
「っ! 襲撃があった合図!」
「どっちの方ですか!」
「これは……両方だよ!」
「両方?!」
「まさか同時に攻めてきたなんて。でもそれじゃあどうして私達のところは……」
「考えるのは後だよ! アタシとヴァルガはコルヴァ達の方へいく、クロエ達はライア達の方に行きな!」
「うん、わかった!」
「行こう!」
そして、俺達は二手に分かれてそれぞれ襲撃があった地点へと急ぐのだった。
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