第148話 結界術
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その後、コルヴァの元に向かったオレとレイヴェルは見張りの準備ができているかどうかの確認をしてからそのまま見張りの場所へと向かった。
コルヴァは相変わらずというか……なんでか知らないけどオレにやたらと色目使ってくるし。曖昧な態度でいるのがよくないのか? もっとはっきり無理って伝えた方があの手合いはいいんだろうか。
レイヴェルとの関係を明らかにできない以上、下手なことは言えないし……いっそ恋人のふりくらいしてもらった方が良かったか?
いや、でもそれはさすがになぁ……嘘でもちょっと恥ずかしいし。嘘だってバレたらそれこそ面倒なことになりそうだし。
「はぁ、なんていうかなぁ」
「コルヴァのことか?」
「まぁね。あれだけはなんとかならないかなぁ。明日一日で終わりだから、それまで耐えればいいんだけど……さすがに気が滅入るというか」
狐族の族長の息子。そう言うだけあって魔力の質は見てわかるほどに高い。でもたぶん何か隠してるし……仲間の二人も含めて、あんまり信用することはできなさそうだけど。
今のところはレイヴェルの障害になるようなことはなさそうだからいいけど、もし一線を超えるようなら考えないとな。
「ずいぶんと早い到着だな」
「ライアさん、もうそんな時間でしたか? って、ファーラさん達も一緒ですか」
「いや、まだだ。だがリオが『月天宝』にかける結界の準備を始めようと思ってな」
「アタシらも見届けだけしようってね。疑うわけじゃないけどさ。一応コルヴァ達からも預かってきてるからね」
「いつの間に……」
それぞれが預けられてた『月天宝』を一か所に集めて、明日の朝まで結界で保護する。その役割を担うのはリオさんだ。なんでもそういう術が得意らしい。なんていうかちょっと意外だ。
オレ達が夕食を食べた食堂の机の上に三つの『月天宝』が並べられる。このうちの一つが本物ってわけだ。こうして見てもどれが本物かはわからない。相当精巧に作られた偽物って感じだ。
『月天宝』……この国に伝わるもう一つの至宝『太陽宝』と対をなす宝玉。今さらだけど、なんで『月天宝』だけなんだ?
確かに一つでも相当強力な宝玉だって話は聞いたことあるけど……魔剣使いを投入してまで狙う価値があるのかな。
はっきりと言ってしまえば、この『月天宝』よりも魔剣の方が強い。これがどれほどの力を秘めていたとしても、それはあくまで魔剣と比べなければの話。もちろん魔剣にはない利点はあるだろうけど、それでも魔剣使いを有しているほどの組織がそこまでして狙う理由はなんなのか……まるでわからない。
狙うからには何か理由があるんだろうけど……まぁいいか。それを考えるのはオレの役目じゃない。動機や理由がわかったって、やることは変わらないんだから。
「それじゃ、さくっと結界作っちゃうよー」
パンッとリオさんが手を叩き、詠唱を始めた。
「“堅牢の壁、折れたる剣、繋ぎ止めるは棘の鎖、あぁその鎖のなんと無情なことか、願えども狂えども叫びは届かず、滴る血は地へ還るだけ”——『堅無ノ檻』」
机を巨大な壁のようなものが覆う。
冷たさを感じさせる、青い壁だ。っていうか、結界っていうわりにはずいぶん物騒な詠唱っていうか……確かに頑丈そうではあるけど。
「あ、触っちゃダメだよ」
「え? きゃぁっ!」
そっと手を伸ばして結界に触れようとすると、リオさんに止められる。その直後だった、壁から鋭利な棘が飛び出してきてオレの手を貫こうとした。
とっさに手を引いたからなんとか大丈夫だったけど……こ、こわぁ……思わず力を使って壊しそうになった。
「自動迎撃機能付きの結界。触れようとした人をグサッと貫いちゃうから、触らないように気を付けてね」
「す、すごい結界ですね」
「中からも外からも壊せない結界。リオが解除しない限り死んでも効果は続くから」
「なんかまたさらっととんでもないことを……でもこれなら安心できそうですね」
「なんというかやっぱりさすがだねぇ」
「気休めだけどね。それじゃリオ達は仮眠してくるから。また交代の時間になったら教えてね」
そう言うと、リオさんとファーラはそれぞれの部屋へと戻っていく。残されたのはオレとレイヴェルとライアの三人だけ。
と、思っていたら二人と入れ替わるようにしてコルヴァがやって来た。
「なんだ。君達もう来てたのか。まだ時間まではあるのにせっかちなことだね」
「そういうコルヴァさんも早く来られたみたいですけど」
「それはもちろん、レディを待たせるのは僕の性に合わないからね」
「あ、あはは……」
キランと歯を輝かせてウインクされても全然ときめかないし、苦笑いしかでない。ライアにいたっては無反応だ。
「と、ともかくこれで全員揃いましたね。予定よりは少し早いですけど、始めますか?」
「問題ない」
「もちろん、僕も全然問題はないよ。君のためならね」
「私のためじゃなくて宝玉のために頑張ってほしいんですけどね……」
チラッと横目でレイヴェルのことを見ると、同じようにレイヴェルも同じようにため息を吐いていた。
なんにせよやり切るしかないんだ。頑張るしかないかぁ。
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