第147話 自分で自分に嫉妬する構図
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「…………」
さっきのフェティの話。もしあれが本当だとするなら……だとしたら今回の依頼は……。
「おいクロエ」
「え、な、なに？」
「話ちゃんと聞いてたか？」
「えーと……ごめん。ちゃんと聞けてなかったかも」
「はぁ、だろうな。完全に上の空だったし。やっぱりさっきフェティと話してことが気になってるのか？」
「レイヴェル……」
そりゃ気付くか。あからさまに隠し事してるし。
でもこのことを話していいのか？ フェティの言葉を疑うわけじゃないけど、まだ確証があるわけでもない。証拠がないのにこんな話してもレイヴェルのことを混乱させるだけなんじゃ……。
レイヴェルだけじゃない。みんなに話すにしても同じことだ。明確な証拠と呼べるものはない。そんな状況じゃ話しても何の意味もない。
あぁもうダメだ！ 考えが全然纏まらない！
「なぁクロエ。俺はお前の相棒だ」
「え？」
「別にお前の抱えてるものを全部話せとは言わない。さっきの話にしたって、内容はわからないけどきっとお前にとって大きなことだったんだろう。それを話せないのが悪いことだとは思わない。でも忘れないでくれ。どんなことがあっても俺はお前の力になる。そのことに変わりはない。お前の方も一緒だと思ってるんだが、違うか？」
「あ……ううん、違わない」
そうだ。確かに違わない。もし同じ状況にあって、レイヴェルがオレに事情を話してくれなかったとしても。オレはレイヴェルの力になる。
たとえ世界の全てがレイヴェルの敵に回ったとしても、オレだけはレイヴェルの味方であり続ける。そこだけは絶対に変わらない。これからも、この先も。
「ごめんねレイヴェル。今はまだちょっと自分の中で整理ができてなくて。またちゃんと話すから」
「あぁ、わかった」
「それで結局レイヴェルは何の話をしてたんだっけ？」
「ってそうか。聞いてなかったんだな。俺達が『月天宝』の見張りをする時間、担当するのは俺達とライアさん、それからコルヴァの四人だ」
「そういえば……そうだっけ」
なんでよりにもよってって感じのメンバーだ。コルヴァ達の所は正直誰でもいい……というか誰でも嫌なんだけど。せめてライアの所くらいはリオさんかラオさんにして欲しかった。
一チーム三時間交代。オレ達は一番最初でだいたい日付が変わる時間までって感じか。まぁまだ耐えれる……耐えれるか？ というかこういう見張りみたいなことってあんまりしたことないから何をすればいいのかが全然わからない。
単純に見張ってるだけって暇すぎて眠くなりそうなんだけど。この考えはあれか？ 緊張感が足りなさすぎるか？
ダメだダメだ。この状況だと向こうもいつ仕掛けてきてもおかしくない。しっかりと注意はしないと。
「それで、二人一組で外の見回りに行くことになってただろ。その時にライアさんかコルヴァのどっちと一緒に行くかってことなんだけど、クロエはライアさんと一緒でいいか？」
「え！？ レイヴェルと一緒じゃダメなの！」
「一応分かれるべきだろ。というか、じゃないと三組で見張る意味がないだろ。一応俺達も疑われてる身なんだから。でもお前とコルヴァを二人にするのも嫌だからな。そっちは俺が組もうかと」
「あー……」
確かに、ライアも嫌だけどコルヴァも嫌だ。どっちかって言われたら……ライアしかないか。
「わかった。それじゃあ私はライアさんと一緒に居ればいいんだね」
「そうなるな。コルヴァの準備ができてるかどうかを確認したらそのまま行くか」
「そうだね。あ、でも外の見回りに行くなら気を付けてね。何があるかわからないから」
「わかってるって。だからこの通りちゃんと剣も持ってるだろ」
「むー、そうじゃなくて！」
「え？」
「そんなレプリカじゃなくて、すぐに私を呼んでってこと！ いい？ それはあくまでただの緊急用なんだから。そんなのに頼らないで。レイヴェル側からならいつでもどこでも呼べるから」
「お、おう。わかった……」
「まったくもう……」
って、自分の作ったオレのレプリカに怒ってどうするんだ。
でもなぁ……。
チラッと横目でレイヴェルが腰に提げた剣を見る。
すごくピカピカしてる。たぶん手入れしたんだと思う。もしかしたらさっき部屋に戻った時に。レイヴェル剣の手入れするのが好きというか、癖になってるところあるし。あれを渡してから毎日手入れしてるのは知ってる。
でも……でもっ！
手入れしたいならオレのこと呼んでくれたらいつでもさせてあげるのに！
なんかこの言い方だと若干アレな気もするけど、でもレプリカだけ磨いてオレを磨かないのは不公平だ。それ以外の意味はない。ないったらない！
……やっぱりレプリカを渡したのは間違いだったかな？ でもあのレプリカには万が一に“アレ”を備え付けてるわけだし。
「くぅうううううう」
「なんでそんな目で剣を睨んでるんだよ」
「気にしないで。ちょっと葛藤してるだけだから」
「なんの葛藤だよそれは！」
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クロエ達がコルヴァの部屋へと向かっているちょうどその頃。村の外に彼ら——アリオス達の姿はあった。
「予定通り村に入ったか」
『やっとだねぇ。ここまで計画通りに進むさすがに拍子抜けしちまうね』
「け、計画通りなのはいいことだと思うけど」
「その通りだ」
スッと音もなく隣に降り立ったのはノイン。相変わらずその顔はフードを被ったままではっきりとは見えない。
『あらいたのね。気配を断って隣に立つのやめてくれる？ 腐らせたくなっちゃうから』
「僕はそんなことしたくないんだけど……できれば戦いたくもない……」
「状況は把握している。あちらからの情報も滞りなく受け取っている。明日は予定通りだそうだ」
「ようやくか」
『腕が鳴るってもんだねぇ』
『ふふ、どんな毒を使ってあげようかしら』
「あぁ、嫌だなぁ」
「一応見つからないように警戒しておけ。『月天宝』そしてもう一つ(・・・・)も合わせて、魔王様のために手に入れて見せるぞ」
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