第92話 獣人とメイドのコンビネーション
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「え、それじゃあ本格的に動き出すのは明日からなんですか?」
オレとレイヴェルが部屋で休んでいると、城のメイドがライアからの連絡事項を伝えにやってきた。
「はい。なんでも護衛される方が他にもいらっしゃるようなのですが、その方々の到着が明日になるそうで。なので今日はもう自由にして構わないと。それから、獣王様も宝物庫と一部区画を除いたら城内を自由に出歩いても構わないとのことです」
「そうなんですか。わかりました。ありがとうございます。わざわざ伝えに来てくださって」
「いえ、これも仕事ですから。何か御用があればそちらの呼び鈴を鳴らしていただければすぐに参りますので」
「はい」
「それでは失礼いたします」
洗練された美しい所作でお辞儀して部屋から出て行く兎族のメイド。
うーん、さすがの練度というか。城に勤めてるだけはあるよなぁ。
それにかなり可愛い。っていうかこの城にいるメイドさん達全員可愛かったよなぁ。
猫族に犬族にさっきの兎族のメイドさんも。
ズルいよなぁ、獣人とメイドのコンボ。昔も思ったけど改めて見るとなおのこと思うっていうか。破壊力が半端じゃない。
この体になって女性に反応するようなこともほとんど無くなったけど、それでもこのコンボは強烈だよなぁ。
あの耳とか尻尾とか、モフモフしたい。顔を埋めてみたい。何か御用があったらとか言ってたし、一回頼んでみるか?
「——ロエ、おいクロエ!」
「っ! あ、ごめんレイヴェル。どうかした?」
「どうかしたじゃねぇよ。さっきからずっと声かけてるのに。そっちこそどうかしたのか?」
「あぁ……その、どうしたらあのメイドさんの尻尾を触れるかなぁって」
「はぁ? なに考えてるんだよお前は」
「いやだってメイドさんだよ!? しかも獣人だよ?! 触ってみたいと思うのが人の性でしょ!」
「そんな性ねーよ!」
「うっそぉ……ホントに? さっきのメイドさん見てこう……なんていうか、グッとくるもの無かったの?」
「いやまぁ……そりゃ無かったとは言わねぇけどよ。でもだからってどうこうしようとは——いてててて! おいなんで急に耳引っ張んだよ!」
「ねぇレイヴェル。そこは嘘でもそんなことないって言い張るべきなんだよ。かなしいなぁ、まさかレイヴェルがケモ耳好きだったなんて。道理で周りに綺麗な人が多いのに反応しないわけだ」
「俺を勝手にケモ耳好きにすんじゃねーよ! っていうか、そんな答え方わかるか!」
「ふふ、まだまだだねレイヴェル。そういうのちゃんとわからないと彼女できないよ」
「別に今は彼女がどうとか考えてねぇよ。それどころじゃねぇんだから」
「ふーん、そっか。ま、そうだよね。まだまだレイヴェルは強くならないといけないわけだし。女の子に現を抜かしてる場合じゃないか」
「なんでちょっと嬉しそうなんだよ」
「別に嬉しそうになんてしてないけど? でもそれじゃあ代わりに私がケモ耳と尻尾を堪能させてもらおうかな」
「いや迷惑だから絶対やめろよ」
「カムイに頼めばなんとか……」
「そんな所で王権使わせるなよ! 失礼すぎるだろ!」
「あはは、冗談だって。それよりもレイヴェルはこの後どうするの? とりあえず今日はもうオフになったみたいだけど」
「あ、そうか。そういうことになるんだよな……うーん、訓練場でも貸してもらって練習でもするか? 部屋でジッとしてるのも落ち着かないし」
「それもいいけど……せっかく時間あるなら、一緒に街の方に行かない?」
「街に?」
「うん。だってこんな機会滅多にないし。明日から依頼で移動開始するなら、ゆっくり見て回る時間もないかもしれないしさ。だから、ちょうどいいんじゃないかって思って」
「まぁそれもそうか……外に出てもいいわけか。じゃあ行くか?」
「よし、決まり! そうと決まったらさっそく行こう」
「あぁ……って、何も言わずに行くわけにはいかないか。呼び鈴鳴らしたら良かったんだっけか?」
「うん。鳴らしたらすぐに来ると思うよ」
「いや、いくらなんでもそんなわけないだろ」
「じゃあ試してみる?」
机の上にあった呼び鈴を手に取って鳴らしたその数秒後だった。
さっき部屋やって来た兎族のメイドが部屋へとやって来る。
「はや?!」
「だから言ったでしょ」
「何か御用でしょうか?」
「あ、うん。ちょっと街の方に出てくるから。それだけ伝えておこうと思って。ごめん、それだけ」
「でしたら案内人の用意を」
「ううん、大丈夫。私、昔一度来たことあるから。案内人はいらないよ。もしカム……じゃなくて、獣王様とか一緒に来てる人たちが私達のこと探してたら街の方に行ってるってことだけ伝えておいて」
「かしこまりました。お戻りはいつ頃の予定で?」
「うーん、それもわからないかな。久しぶりだから色々と見て回りたいし」
「そうですか。でしたら一つだけご注意を。最近は開発も進み、治安も良くなっておりますが。それでもまだ警備の行き届いていない場所が僅かに残っています。そちらの方へは近づかないように」
「うん、わかった。ありがとう」
「それでは失礼いたします。気を付けていってらっしゃいませ」
「はーい」
うーん、もうちょっと笑顔見せてくれたらな。
あの兎耳と相まってすごく可愛いと思うんだが。ま、いいか。
「それじゃあレイヴェル……って、どうしたの?」
「いや、マジで早く来たから驚いただけだ。本当に早かったな」
「まぁ、獣人族は身体能力の高さが頭抜けてるからね。耳も良いし。実はこのベル一つずつ音が違うんだけど、その音を聞き分けてるみたい」
「マジか……」
「うん。マジ。それができるのが獣人族だから。まぁ、そうは言ってもできるのはちゃんと訓練された獣人だけなんだけど。まぁこの城に勤めてるくらいのメイドさんだからできて当然なんだろうね」
「とんでもねぇな」
「さて、それじゃあちゃんと伝えることは伝えたし。街に遊びに行こっか!」
「遊びって……まぁ似たようなもんか。っていうか案内人がいなくても大丈夫だったのか? 随分変わってるんだろ?」
「まぁそうだけど……うん、なんとかなるよ、たぶん!」
「たぶんってお前なぁ。なんか今さらながら心配になってきた」
「あはは、大丈夫大丈夫。なるようになるって。それにもし何かあっても、私とレイヴェルなら乗り越えられるよ、きっと!」
「いい言葉だが……できれば何も起こらないようにして欲しいな」
「うだうだ言わない。ほら、行こう! 時間は有限、一秒一秒大事にしていこう!」
「お、おい。押すなって……うわぁっ」
「さぁ、街に向けてレッツゴー!」
久しぶりに向かう街に心を弾ませつつ、オレはレイヴェルと街に繰り出すのだった。
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