死んだ僕
この物語はフィクションです。
僕は自分の体が憎かった、思い通りに動けない。
年齢のせいでは無い、僕と同い年のアスリートが居る。スポーツ界で将来を期待されてる。
僕も子供の頃は良かった、駆けっこが得意で一番足が速く よく転びはしたが元気だった。
でも段々足が思うように動かなくなってきた。母に連れられ病院に行った。
大病だった。体中の筋肉が衰えていくのだ、少しずつ、少しずつ
小学3年生の頃お医者様に、この病気は二十歳まで生きる事ができないと宣告された。
母はこんな体に産んでごめんなさいと泣き続けていた。
僕は毎日を全力で生きようと決めていた。いつでも前向きに母の笑顔を少しでも保つために、
でもそれは難しいことだった。
小学校 高学年の頃 自力で立つことが辛くて 車椅子生活になった。
中学生の時 全身の筋肉が衰え、介助者なしには生活できない体になった。
高校には通えなかった。
この頃の僕は酷かった。 日に日にできることが減ってく
その事実が病の速度よりも早く、僕の心を蝕んだ。
その頃、抜け毛が酷いから坊主にした。
僕は母によそよそしい態度をとった。特に叱られはしなかった。
疲弊した心を癒やしたのはファンタジーな物語の世界だった。
剣と魔法の世界 没頭した。 もし、たら、れば、妄想は止められなかった。
「全ての病を治す霊薬」この言葉が出てきた時だけ現実に引き戻されてしまった。
病が進行して本が持てない そのことを自覚し絶望したくないから、本を読むことをやめた。
英断だった。 母と会話する時間が増えた。
「僕が死んだら、母さんは自分の時間を 人生を大切に過ごしてほしい」そう本音が言えた。
19歳の誕生日を迎える頃 僕は薬なしでは呼吸ができなかった。
医者の提案した人工呼吸器をつけるのは絶対に嫌だったからこの提案を固辞した。
二十歳を迎えず僕は闘病生活に幕を降ろした。
僕が産まれてきた意味が分らないのが、ただ一つ心残りだった。
☆
いつからかは分らないが寝ていた。体がドロドロに溶けてしまったのか自分の体の輪郭が分らない。
筋肉も骨も内臓も何もない、意識だけがどこかを漂ってた。でも恐怖もない、自然なことに思えた。
ありがたいことに息苦しい呼吸をする必要はないようだ。
まどろみの中へ意識が引っ張られる寸前
感覚の嵐が僕を襲った。
急速に自己の線引きが行われ、あらゆる刺激が脳を揺さぶった。 激痛に手で頭を押え転げ回った。
突如 痛みがなくなり 辺りが明るくなった。
「こんにちは、お加減はいかがでしょうか?」人の声が聞こえた。声の方に振り向くと、
美しい女性が僕を見ていた。どこか楽しそうな その表情は慈愛に満ちていて、
きっと誰からも悪意を向けられたことなんてないんだろう。そう思うほど彼女は美しかった。
彼女が美しすぎるため返事が遅れたし言葉も出てこなかった。
だからぎこちなく、 うなずいた
「あら、随分のんびり 馴染みある挨拶はお嫌いですか?」
必死に首を横に振った。僕は彼女の正体に気づいた。
産まれてから呪詛をはいた。死ぬ間際には縋ろうとした相手
機嫌を損ねたくない 相手は神だ 優しそうだからといって大きな態度は恐ろしくてできない。
「あなたに一つお願いが」 僕が断れる訳がない
どのような話であっても、話が始まった段階で二つ返事のみ行うと決めた。
長くのんびりとやっていきたいです。