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第四話 手繋ぎ






「なんで私と目が合った後、目線そらしたんだオイ」


「い、いやぁ……アハハ」


 ジト目で山田さんに詰められる。


 佐藤さんと別れた後、俺は帰宅しようと大学の南門へ向かったのだが……そこにはなんと山田さんがいた。

 なんで教えてないのに通ってる大学知ってるの? とか、なんで俺が南門から出るってわかったの? という疑問はもはやどうでもいいな。

 理由、山田さんだから。としか説明できない。


 という事で、俺はある程度近づいたら、門のそばに立っている人が山田さんだと気づけたんだが……普段の奇行やストーカーじみた行為に忘れそうになるが、山田さんは間違いなく美少女なのだ。黙っていれば、そこに立っているだけですごく人目をひく。


 ともすれば当然、ここでも山田さんは目立っていた。

 芸能人と比べても見劣りしない女の子が、一人で突っ立って誰かを待っているという状況は、周囲と山田さんの周りを断絶してるように見えた。


 というか実際、周りの人間(特に男たち)は、山田さんの周りを避けて通っているし、同時に誰を待っているのか、誰か声をかけないのか、そんな事でけん制し合っている風に感じられた。


 で、そんな状況の外から、雰囲気を確認した俺は、目が合ってもとっさにそらしてしまったという訳だ。


 だってさぁ。しょうがないじゃん。山田さんが俺に目線を向けてきたってことは、その山田さんを見てる男たちも俺を見てくるわけで。そしたらさ、もうひしひしと感じるわけですよ。なんであんな冴えないモブみたいな男がこんな美少女と……っておなじみのやつが。そういう妬みの視線は、俺みたいな目立たない奴は慣れてないんだ。耐性がない。


「ははぁ~ん。あんた照れ臭いんだ。まぁしょうがないか。あんたみたいな地味な陰キャが私のような美少女と付き合えるなんて普通あり得ないもんね。釣り合ってないんじゃないかって引け目感じてるんだ?」


「く……そうだよ。山田さんは美人だから、一緒にいたら、緊張しちゃうんだ」


「えっ」


 俺をからかうような表情が、一瞬で驚きに変わった。

 ん? 俺なんか変なこと言ったか?


「どうしたの?」


「い、いや。まさか素直に認めるとは……。モブ顔のくせに生意気……」


 顔は関係ないだろ。今は。


 というかそんな驚かれるような事か? 山田さんが美人なのは100人に聞いても誰も否定しないと思うし。しかも自分でも美少女って言ってんじゃん。


 あ~でも、振り返ってみれば、俺は山田さんのやること為すこと全部突っ込んでた気がする。それも、彼女の行動があまりにぶっ飛んでたからなんだけど……。山田さん視点だと、俺は何を言われても否定から入る男に見えていたのかもな。


「それで、なんで大学まで来てくれたの?何か用があったんでしょ」


「え? 別に用なんてないわよ。彼氏と一緒に帰りたいって彼女が思うのに理由なんている?」


 つまり山田さんは、何の用もないのにわざわざ俺と一緒に帰りたいがためにここで待っていてくれたのか?


 なんということだ……。山田さんがまっとうに可愛く見える。

 いや、今までも可愛いんだけど。ちょっとイロモノが過ぎた。

 俺が望んでいた恋人同士の関係。こういうのでいいんだよ。こういうので。


「ほら、手出して」


 そして、彼女と手繋ぎと! 俺は言われた通りに手を出した。

 完璧じゃないか。どうしたんだ今日の山田さんは。いつもは情緒不安定なのに、本日は機嫌が良すぎ“ガチャン”るぞ。


 ・・・・・・ガチャン?


「えっと、山田さん。これなに?」


「手錠」


「……なんで?」


「え? だってあんた……」


 山田さんが一気に顔を近づけてくる。

 あっ、あの目だわ。山田さんがメンヘラったときにするやつだわ。


「今日、他の女と喋ったでしょ」


 なるほど、どうやら俺の体のどこかには、盗聴器が仕掛けられているらしい。

 前言撤回。こいつやっぱやべぇわ。

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