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第9話

 綿貫さんがウチで働き始めて、早二週間が過ぎた。

「えー、綿貫さんもぼちぼち慣れてきた頃ということで、定例会議を行いたいと思います。みなさんが感じる、今の店の状況について、忌憚のない意見をお聞かせください」

 定例会議とは、職員全員(三人)が集まり、店の経営を今後どうしていくべきか、どうすればもっと良くなるのかをざっくばらんに話し合う場である。

 ちなみに今日思いついて、今日が第一回目の会議ね。こういうのなんか、大人っぽくて憧れるじゃん?

「というわけで、まず綿貫さん、二週間働いてみてどう思った? 正直に言ってくれ」

「わ、私ですか」

「まあ社会の空気に染まりきっていない、若い感性は重要だからねえ」

 それっぽいことを言っている婆様。俺も若いんだけど。

「で、どう、なんかない?」

 俺が促すと、綿貫さんは頰に手を当てて思案するそぶりを見せる。

「えっと……、この店、お客さん全然来ないですよね」

 本当に忌憚のない意見だった。

「確かに人、見ないねえ」

 他人事な感じで言い放つ婆様。この店の店長あなたですよ?

「ですよね! この会議も店内のスペースでやってますからね!? おかしいですって!」

 そう、この会議は店の食事スペースで行われている。だって事務所狭いんだもん。

「大丈夫、人来ないから」

「それ大丈夫じゃないです」

 綿貫さんの呆れたような目が心に刺さる。

「まー、購買の仕事がなかったら、収益が極限ゼロな感じではあるんだよなあ」

 その購買も最近売り上げが思わしくない。

「どうしたもんかねえ」

「パンはすごく美味しいんですから、知ってもらえさえすれば、すぐ人気店ですよ!」

 となると、宣伝か……!



「というわけで、どうしたらいいと思う」

「いや、俺に意見求められても……」

 翌日、俺は購買部に来た高橋をつかまえて、話を聞いていた。

「今まではどんな宣伝をしてたんだよ」

「あー、何してたっけなあ」

 思い返すと、そういうことをやった記憶があまりない。

「チラシ配りは?」

「やったことないな」

「Webサイト作ったりは?」

「ないわあ」

「SNSで情報発信とかは?」

「そもそもウチ、ネット環境がないんだよな」

「……えっと、お前の店って実在してんの?」

「してるわ!」

「いや、マジか……」

 そう言って頭を掻く高橋。え、ウチそんなやばいの?

「とりあえず近所にチラシ配るぐらいしたらどうよ?」

「チラシ言われても、デザインがな……」

 俺も婆様も経験がない。綿貫さんはわからないが……。

「そんなもん、パソコンでそれっぽいのちゃちゃっと作れんだろ」

「お前そういうの得意なの?」

「ああ、まあな」

 意外な事実。これは光が見えてきたぞ!

「ノートパソコン持ってる?」

「……持ってるけど」

「よし、決まりだな。明日16時にウチの店集合ということで」

「いや、何も決まってねえよ! そもそも行き方わかんねえし!」

 そういえば、高橋はウチの店に来たことがなかったな。

「じゃあ、放課後迎えに来てやっから。あ、パソコンも持ってきてな」

「なんだこいつ……」

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