表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/31

第26話

「えー、それでは、第三回緊急定例会議を始めます」

 店の事務所で職員三人プラス一人による会議が開かれていた。

「緊急定例会議って日本語おかしくないですか」

 綿貫さんの素朴な疑問。この店はいつも緊急事態だから。

「議題は八月七日のイベントの行動予定についてです」

「今回はオブザーバーとして笹山 雪音さんにも参加していただきます。よろしくお願いします」

 雪音も今日はたまたま時間があったようなので、参加してもらうことにしたのだ。

「……別にいいんだけど、昇降口で私を待ち構える前にメール飛ばすなりしなさいよね。めちゃくちゃ恥ずかしかったんだから」

「ごめんごめん、携帯使う発想がなかった。今度からそうするわ」

「私はスルーしましたけど、そういうことだったんですね……」

 見られてた!

「それはさておき始めますか」

「あのー」

 綿貫さんがおずおずと手を挙げた。

「はい、綿貫さん」

「遊びの話を営業時間中にしてていいんですか?」

「ふふふ、実は遊びの話でもないんだな」

「というと?」

「高橋から聞いたんだけど、最近、隣町にパン屋ができたらしい」

 隣町といっても、この店から徒歩十分程度の距離。

「あー、お菓子屋さん一緒になっているところですね」

「最近人気みたいね。クラスの友達もお気に入りとか言ってたわ」

「そう。そして、そのパン屋が今度のイベントに出店、さらには店のレシピほぼすべてを考案したという、天才パン職人もやってくるというウワサ!」

「つまり敵情視察ってやつですか!」

「いや、パンの作り方教えてもらおうかと」

「……たぶん、教えてくれないわよ」

 雪音は呆れたように言い放つ。まあダメ元で……。


「それで、当日はちょっと早いけど朝九時に駅集合、十一時前にはウォーターランドに到着ね。確認だけど、ThrThの出番が翌日の午前中だから、泊りになっちゃうけど、綿貫さん大丈夫?」

「はい、お母さんもいいよって言っていたので!」

「それならよかった」

 後で婆様から親御さんに連絡を入れるよう頼もう。

「それでホテルの部屋は……、あの、婆様? 知恵の輪いじくってないで話し合いに参加してもらえません?」

 ……ガン無視かよ。俺に任せたということだろう。そういうことにした。

「部屋は俺と婆様で一部屋、綿貫さんで一部屋ね」

「別に三人一緒でいいですよ?」

「あ、ほんと?」

 それだと安く上がるのでありがたい、とか思っていたら雪音が声を上げた。

「ちょ、ちょっと待って! ストップ! パリ!」

 最後のは何語なんだろうか。

「明里はそれオッケーなの?」

「えーっと、はい」

「同じ部屋よ、同じ部屋!」

「そ、そうですね」

 綿貫さんはわかりやすく困惑した様子だ。

「……じゃあ、明里は私のところ来なさい! 会場近いし! 一人なら全然問題ないくらいのスペースあるし!」

「いいんですか!」

「もー大歓迎よ!」

 そういうわけで、綿貫さんは雪音の滞在するホテルに泊まることになった。一人にならないように気を使ってくれたのか。

「雪音、ありがとうな」

「えっ? ああ、うん」

 なんでピンと来てない感じ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ