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第20話

「人こないなあ」

 開場から数時間、俺は会場全体を見渡してそう呟く。

「普段のお店の様子からすると、泣きそうなくらい人いますけど……」

 隣に立つ綿貫さんは、俺の発言に納得がいっていない様子だ。

「いや、年始の百貨店並みに混み合うものかと思ってたからさ」

「自信が過剰です」

 綿貫さんは呆れた口調で言った。

 しかし、このままでは終われまい……。

「よし、校門前で客寄せしよう」

「客寄せって、何するんですか?」

「これこれ」

 俺はメモ帳を取り出し、開いて見せる。

「……なんですか、これ」

「一人ショートコントのネタ帳」

「うわ……」

「綿貫さんはチラシ配ってくれればいいからさ」

 間をおいて、綿貫さんが口を開いた。

「あー、じゃあ、私は先輩からちょっと離れたところでチラシ配ってますね、200mくらい離れたところで」

 離れすぎじゃない?

「大丈夫だって、やったことないけど自信あるから! ウケるから!」

「そんなことがあるといいですね」

 綿貫さんは冷めきったふうだが、とにかく自信はある。

 俺は高橋に一言告げ、意気揚々と校門へ向かった。



で。

「いやー、地獄だった」

 欠片もウケなかった。

「遠目で見てもわかるくらい滑り散らかしてましたよ」

 綿貫さんの厳しい感想が心に刺さる。

 肩を落として食堂に戻ると、高橋が話しかけてきた。

「どうよ、感触の方は」

「……ちょっと今日のオーディエンスとは相性悪かったわ」

「はあ?」

 察してほしい。

「まあいいや。実はこっちも客集めるために芽野上とちょっと仕込み入れててよ、うまくいきそうだぜ」

「仕込み?」

「知り合いに片っ端からメッセージ送っただけだけどねー」

 ふらっと現れた部長さんが、俺の疑問に答えた。知らぬ間にそんなことを……、ありがたい話である。

「ま、置いてるモノはいいから、売れると思うよ」

「……ほら、さっそく来たみたいだぜ」

 そう言って、高橋が顔を向けた先には、食堂を訪れる大勢のお客さんがいた。

「おお……」

 俺は思わず感嘆の声を漏らす。これが人脈の力ってやつか!

「そういや、結局お前は何をやってたんだよ」

 高橋の問いには、曖昧な笑いだけを返しておこう。



 まあ、そんなかんじで、催しはそこそこの成功を収めることが出来たのだった。

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