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第19話

 いよいよ試食会の当日。人影まばらな朝の校舎で俺は一人、会場のセッティングを行なっていた。

「ジャムとパンは後でだし……、とりあえずこんなもんか」

 一人ごちていると、誰かが扉を開ける音が聞こえた。

「食堂でやるのね」

「お、雪音か。おはよう」

 雪音は「おはよ」と、あくび混じりの挨拶を俺に返し、椅子に腰掛けた。

「なんか……、疲れてる?」

 なんとなく気だるげな様子の雪音。よく見ると、目の下にはうっすらクマができている。

「ここのところ、仕事忙しくて」

 そう言って、あくびをまた一つ。

「この後授業だろ、大丈夫?」

「たぶん……」

 これは……、寝るな。

「そろそろ教室行くわ。あっ、明日、忘れないでよ」

 雪音はそう言い残して去っていった。



 なんやかんやで、ついに開会30分前。俺は綿貫さんや高橋など、スタッフ全員による直前ミーティングの場を設けた。

「えー、本日は生徒の皆様と購買部による合同試食・販売会にご協力いただき、誠にありがとうございます。改めまして、購買部の三鷹 八録と申します」

 深々と一礼する。

「相変わらず腹たつ口調だな」

 高橋がぼそっとこぼす。き、気にしないし。

「今回は家庭科部の皆様にもご協力いただけるということで、まことにありがとうございます」

 そう、幾ら何でも三人じゃ人手が足りんだろうということで、綿貫さんが家庭科部に応援を頼んでくれたのだ。

「部長さん、挨拶お願いします」

 俺が促すと、家庭科部の部長が一歩前に出る。

「部長の芽野上(めのうえ)でーす。明里に呼ばれてきました。よろしくお願いしまーす」

 ふわっとした感じの心配になる挨拶だが、彼女がデキる人というのは確認済みだ。今日も問題ないだろう。

「それでは次に……、綿貫さん! 一言どうぞ」

「えっ! が、頑張ります」

 綿貫さんが若干裏返った声で応える。

「はい! それでは最後に高橋くん、代表としてなんか勢いをつける掛け声、お願いします」

 高橋はひとつため息をついてから、皆の前に出た。

「そこの人に主催者代表の役割を押し付けられた高橋です。えー、今日はスタッフ一丸となって、催しを成功させましょう!」

 高橋の声に呼応して、皆の拍手が食堂に響く。

「本来、購買部は契約で貸し付けられた部分の内側でしか物品の販売はできないのですが、水森の生徒である高橋くんが代表になってくれたおかげで、食堂を使う許可がすんなり下りました! ありがとうございます!」

「このタイミングで生々しい話するのやめてくんない?」

 そこらへん、いろいろめんどいのよ。

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