捏造の王国 その12 ビックリ仰天アベノ語録作成中
まともにお茶を飲むことをあきらめ、ペットボトル飲料で誤魔化すガース長官であったが、それすらもゆっくり飲むことは許されなかった。アベノ総理が自分の発言を語録にして配布すると言い出したのだ!野党やリベラル、いや世界的にバカにされること間違いなしのこの企画をどうするか、ガース長官らは嘆きつつ知恵を絞り…。
三月に入り、次第に暖かくなってきた首都トーキョー。
官邸の自室でガース長官はお茶を飲んでいた。
「はあ、この頃、茶の時間を楽しもうとすると必ず邪魔がはいったからな、今日こそは大丈夫なようだ」
と言いつつ手にしているのは“お茶の時間 ほうじ茶”とラベルの貼られた保温用ペットボトル。
「さすがに自販機で購入したペットボトルなら、時間もかからず直ぐに飲める。しかも後始末も手軽、今度からこれでいくか」
とはいえ、官邸の職員休憩室の自販機で購入したものである。これを買うには自室から出て休憩室に行かねばならない。
「うーん、すぐ飲みたいときや昼時で混んでいるときは困るな。やはり加温機を購入するか、それともいっそここに自販機を」
と悩むガース長官。するとまた悪夢のスマートフォンの振動音。
「ああああ、し、仕方ない、私はニホン政府高官という立場、い、忙しいのは当たり前なんだ」
誰に対する言い訳なのか、ガース長官は独り言をわめきながらスマートフォンを取り上げる。
「ああシモシモダ君か、また総理案件か、ン、何、わかった、すぐそちらに向かう!」
電話を切ると、ペットボトルの蓋をきっちり閉めて部屋を急いで出る。
「くう、ペーパーだけ読んでくれればいいのに、総理も大臣もおお」
「ぼ、僕は小学生、な、なんかじゃないぞ、う、ガチガチ。法の支配がわからないっていいじゃないかよ、もう、野党の奴等はうるさいんだよ、ガリッ」
今日の国会で野党議員に無知を指摘されたせいでアベノ総理は終日ご機嫌斜め。おまけに以前、野党党首のエダノンに“小学生の息子より悪い”と言われたことまで思い出し、さらにブツブツ文句をいっている。好物のアイスバー、“ガチガチ君”を口にほおばりながらしゃべるものだから滑舌がさらに悪く聞き取りづらいこと甚だしい。
「はあ、そうですね(まだ気にしてたのか。ネットじゃ小学生に失礼、つまり幼稚園かそれ以下といわれてるんだが)」
副長官シモシモダは内心あきれつつ、総理の様子を見守っていた。
「そ、そんな、し、失礼なことを。言わせないために僕の名言集を作って配布するんだ!」
「そうですか(名言って迷言の間違いでは)」
「た、例えば“森羅万象は私が担当ってのは”どうだい?シモシモダ君」
「どうでしょうか、それだと総理がすべての事象、天災にも責任があるともとれますが(ネットじゃおごりすぎ、神妄想だ、ついに精神科医を呼ぶかと言われてるんだが)」
「そ、それなら、“ジエータイの父を持つ子供がいじめられたから、ケンポーにジエータイメイキ”っていうのは」
「それはその、事実として確認がとれませんし、第一それで虐めがなくなるわけではないのでは(どういう理由であれ人を虐めるべきではないというのが普通の大人って有名ツィッターでも言ってたしなあ。そもそも、ジエータイの父とかいう話、50年以上前にいわれた都市伝説だし)」
「じゃさ、“イージスアシュアシェア導入したから、自衛官の転勤はないんだ”てのはよかっただろ。庶民がさ、せっかくローンで買ったとかいう一軒家から通勤できるんだし、うれしいでしょ」
「あのう、イージスアシュアシェアがあったとしても転勤はなくなりませんし、その自宅が基地の近くというのは攻撃対象になりかねません(あー、戦争も自宅の近くって狂気の沙汰だってネットで叩かれてるんだよな、家族も危ない目にあわせたいわけないだろう。だいたい配備予定地は首都圏からも地方都市からも離れた場所だぞ。田舎に一軒家、ポツンとなんとやらって番組じゃあるまいし、そんなところに自宅買いたい奴そんなにいるのか、俺は嫌だが)」
「ギリシャだかの危機のことでナガナガツマだっけ、あいつに見事に言い返したのはどうだ、“私が国家です!国家の危機なんてないのです”って、ニホンのトップの総理らしいだろ」
「そのう、絶対王政君主かと揶揄されておりますが(ってわからないだろうな。ニホンの歴史もよくわからず、シン・ニホン国史みたいないい加減な話を鵜呑みにして喜んでるぐらいだから、フランス史なんて。バカにされているなんて理解できないのだろう、ある意味幸せだが)」
と、自分の発言に酔いしれるアベノ総理に心のなかで突っ込みをいれるシモシモダ副長官であったが、そこに
「そ、総理、お言葉をまとめて配布されるというのは本当で!」
と、慌てたガース長官がやってきた。
「そうだよ、なんかシモシモダ君にはイマイチなんだけど。僕の発言でいいと思うのってないかい?ガース君。今度の選挙、いや外交会談とかでも使うんだ、きっと大うけするに違いないよ、ドランプもプータンも僕をソンケイしてくれるよ」
まだ少しご機嫌斜めだが都合のよすぎる妄想を並べ立てるアベノ総理。ガース長官は総理の過大なる自己評価に頭を抱える。頭皮および身体に大きなストレスを感じつつガース長官は、シモシモダ副長官にひそひそ声で尋ねた。
“そ、総理は何を考えてるんだ、シモシモダ君”
“エダノンさんやらシイノさんにやりこめられているのが、よっぽど悔しいんでしょう。ご自分の発言のいいところを集めて国民に知らしめたいとおっしゃるんですが”
“う、狂信的支持者のネトキョクウども思いつかないっていうのに、あいつら総理を擁護するのはいいが『総理に負けたら幼児以下だろ』なんて、総理が幼児だと暗に肯定しているではないか”
“それもわかってないんでしょう。奴ら、”パヨパヨダン“など野党側を揶揄していますが、程度が低すぎて一般庶民にさえ呆れられつつありますから。ついにミズダ議員も訴えられましたし。おそらく裁判でボロ負けです、援護なさいますか”
“あんなやつやナマムラ・アホヤだかはほっとけ。総理のご機嫌取りのバカ女どもが、ツィッターやネット番組で阿保丸出しの発言をして開き直りおって。枯れ木も山の賑わいととにかく総理にすり寄る女どもをいれたのが間違いだったのだ。頭の中身は、中身は、”
“わがジコウ党にもレンポー議員やツジゲン議員、モリノ議員みたいな冴えてる女性がいればいいんですが。ガタヤマさんもダメダメなんで足引っ張りというか、目くらましや咬ませ犬にしか使えませんし”
“党内のバカどもは切り捨てればいいのだが、総理はできん。たとえ挿げ替えたとしても、今度はこちらにいろいろと、その、批判というか、非難というか、”
そうなのだ。今挿げ替えたとしたら、あとにはアベノ総理とそのお取り巻きがやったことの後始末がひかえている。公文書偽造に、ロシア他に実質的領土献上、全世界への金のばらまき、統計不正に捏造景気。ここまでニホンを滅茶苦茶にして、いったいどう折り合いをつけるのか。
いっそこのまま“国民総茹でガエル状態”で緩やかに堕ちつつ、秘かにニホン脱出を図るか、それとも他国と破れかぶれの戦争を起こして国ごと散るか、との無関心をとおりこし、終末ムードにはいるものがちらほら出てくる始末。
野党側は政権奪取といきまくのは、悪いことはすべてアベノ総理のせいだと断罪できるからである。実際その通りだが、ジコウ党はその理屈は使えない。トップをすげかえ、なんとか立て直しをはかってもニホンは元にもどらない。その責任はジコウ党とその支持者や太鼓持ち、ガース長官たちもおうのだ。後ろ指さされ、いじめられ、非難されても文句はいえない。言おうものなら“だいたいアベノを総裁にしたのが悪い、ドアホ、バカ、いっぺん死んでみる?”と言いかえされるにきまっている。
そのうちアベノ総理では持たなくなるとわかっていても、その後の大反動が恐ろしいので、総理支持者および、甘い汁を吸った官僚やら御用記者、学者、縁故親戚、そのほかコネありの面々は何がなんでも総理を擁護しているのである。もちろんガース長官も。
“口をひらけば非難の嵐ですからね、アベノ総理は。発言をまとめたら、野党やらリベラルどものいい反撃材料を提供するようなものです、特にあの”
“わーシモシモダ君、その名前を言うな!あの記者が突っ込んでくると言いたいのだろう、私がなんとかする!”
絶対に触れられたくない例の名前をシモシモダ副長官が口にする前にガース長官は総理に声をかけた。
「アベノ総理、発言のまとめなど、わたくし共がいたします。総理は明日にそなえ、ご会食されてください。そうだフジサンサンケイ新聞の記者やアサアサの社長たちをよび、総理のご発言について意見を伺うというのは」
「それ、いいね!僕の発言の最高のやつを記事にしてもらえばいいんだね」
と嬉しそうに答えるアベノ総理。
「で、では私は戻って、議事録から総理のご発言を確認します、シモシモダ君」
「さあ、アベノ総理、こちらに会食の場所をお選びください(好きなものを食わせて、言いたい放題言って、太鼓持ちにおだてられておけば、すぐ発言集のことなど忘れるだろう、どうせ記憶力ないし)」
と促すシモシモダ副長官。機嫌をなおした総理を見て、ほっとした様子でガース長官は自室に戻った。
「はあ、まったく。さてお茶を」
すっかり冷めたペットボトルのほうじ茶。
「うーむ、温めなおすのも面倒だな。新しいのを買いにいくか」
と、職員休憩室に向かったガース長官。自販機の前に立つが
「な、ほうじ茶は売り切れ!他に暖かい飲み物は、全部売り切れか、なんてことだ」
すでに職員の帰宅時間、業者も今からでは補充にはこないかもしれない。第一、業者の連絡先をガース長官は知らなかった。
「や、やはり自分でお湯を沸かすか、官邸の近くの自販機まで行くか。しかし、そこも売り切れだったら、いや議員会館まで」
ホットなお茶を手に入れるために悩むガース長官であった。
あとで見返すと火が出るほど恥ずかしい発言したと自覚することで、人は学習し失敗を回避するものですが、そもそも自分の発言の意味することを自分でわかっていないとすべて無駄、なのかもしれません。
一言がその一言が破滅を…とならないよう気をつけたいものです。