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ヴァノーネの演奏会

「大丈夫かい? ほら、お茶でも飲みなよ」


 おばちゃんたちから差し出されたお茶は、ささくれだった私の心を程よくほぐしてくれた。


「おおかた、頭空っぽ組がやらかしたんだろうよ」

「まったくあの子らにも困ったもんだね。ほら、お菓子もお食べ」

「わ、おいしそう! ありがとうございます」


 おばちゃんが言う頭空っぽ組とはチャラ男二人組のことだ。その指摘通り、かの二人組があまりにも騒ぐせいで、本番前で苛立つキリルが無言になるわモニカが怒り出すわ。おかげで間に入った私が疲弊してしまったのだった。


「今日は王も来るけど、また澄ましてるんだろうねぇ」

「子どもの頃は鼻垂らして走り回ってたのにね」

「そうなんですか?」


 おばちゃんたちのおしゃべりに混ぜてもらった私はお菓子を前にホクホクしながら相槌を打つ。


「今じゃ偉そうにしてるけど、ガキのくせして城を抜け出しちゃあそこらの娘をナンパしたりしてさ」

「兵士たちが手荒なことは出来ないってんで、あたしらが囮になって捕まえたもんだよ」


 王様よりも年上であるらしいおばちゃんたちにかかれば偉大な王も形無しだ。聞くところによれば、子どもの頃の王様は勉強が大嫌いでよく城を抜け出していたのだという。


「下から見た睫毛の角度が好みですなんて言い寄ってきたもんさ」


 そんな鼻垂れ小僧の頃から女好きとは、王もやっぱりヴァノーネの男性なのだなと笑ってしまう。


「意地の悪いことを言われたら、チケット売り場のカルメッラに言い付けてやるって言っておやり」

「マルタもオリエッタもいるよ」

「ええと……カルメッラさんにマルタさんにオリエッタさんですね」


 一度に言われて覚えられない私は復唱しながらネタ帳に書き込んで行く。


「アマネさん、そろそろ楽屋へ」


 そんな私に背後から声を掛けてきたのはアロイスだ。


「あらやだ。いい男じゃない」

「ノイマールグントにゃいい男が多いんだねぇ」

「あの商人さんも色男だしねぇ」


 おばちゃんたちに褒められたアロイスはちょっと困った顔をしたけれど、ありがとうございます、なんて律儀にお礼を言う。


「あの二人組はヴィムが引き受けてくれましたから、戻っても大丈夫ですよ」

「すみません……」


 ちょっとのことで動揺してしまう自分が情けなくて、上目遣いでアロイスに謝ると、アロイスは「構いませんよ」と苦笑した。


 おばちゃんたちにお茶とお菓子のお礼を言って楽屋に向かう途中、アロイスは当たり前のように手を差し伸べて来る。


「えっと……」

「アマネさんには必要ないかもしれませんが、私も緊張しているのです」


 そんな風に言われると断りにくい。それにこんな光景も毎度のことだし、もう割り切って演奏前はアロイスの手を握るというのをルーチンワークに入れてしまおうかなとか、どうでもいいことを考えてしまうのは、ちょっと緊張している証拠だったりする。


 少しばかり気恥ずかしかったけれど、反対の手はキリルとつなげばいいやなんて思った私がアロイスの手を取ると、背後からすっと手が伸びて来て反対の手を取られてしまった。


「ユリウス……びっくりした…………」


 ドロフェイに初めて会った時のことを想い出した私はユリウスを恨めし気に見上げる。ユリウスは無言のまま肩を竦めて歩き出してしまった。


「もう、キリルと繋ごうと思ってたのに」

「アロイスの手がひとつ空いているではないか」


 ユリウスの弁明にアロイスが眉をひそめる。


「私がキリルと手を繋ぐのですか?」


 抗議するアロイスに私は苦笑する。まあ男同士で手を繋ぐのは嫌だよね。私はついキリルを子ども扱いしてしまうけれど、キリルはすでに15歳で体格も良いから青年と言っても差し支えないほどだ。


「じゃあ、ユリウスは楽屋までね。ホールで聴くんでしょう?」

「いや、今日は袖で聴く」


 ギルベルト様と一緒に聴くと思っていたのだが。演奏会の時にユリウスが袖にいるのは珍しいことで、私はちらりとユリウスを見上げた。


 たぶん、ユリウスは私を心配してくれているのだと思う。今朝の私は夢見が悪く、ユリウスによれば魘されていたそうだ。


 見た夢の内容ははっきりと覚えている。


 世界史の教科書に出てくるずっと昔のどこかの国の王様だかの肖像画が、暗闇にポツンと浮かんでいる夢だった。最初は普通の絵だったはずだが、私が近付くにつれ、その絵の王様は恐怖と憤怒が入り混じったような恐ろしい表情になった。絵の手前でそれを見た私は足が竦んで動けなくなり、そのままぼんやりと立っていた。


 そんな私の手を誰かが引いた。横を見れば黒い上着に白いシャツと手袋、そして黒い蝶ネクタイをした男性がいた。男性は仮面をつけていて顔はよくわからなかったけれど、なんだか懐かしいような気がして手を引かれるままに歩き出そうとしたのだが、別の手が私を逆方向に引っ張った。反対側にいたのは優し気な二人の女性だ。しきりに何かを訴えていたが言葉は聞き取れなかった。


 二人の女性は優しげではあったけれど私を引っ張る力はとても強かった。反対側の男性も負けじと腕を引っ張った。両側から腕がもげそうに強い力で引っ張られた私は悲鳴をあげ、そこで目が覚めたのだった。


 飛び起きた私は喉がカラカラに乾いていて、心臓が壊れるんじゃないかと思う程ばくばくと鳴っていた。心配そうにのぞき込むユリウスの顔とぎゅうっと握られた手の暖かさが、あれが夢だったのだと私に教えてくれたのだった。


 ユリウスの心配をよそに、実を言うと私はそれほど気にしていない。怖い夢を見ることはあまりなかったけれど、考えてみればあの肖像画はたぶんヴァノーネの王様から連想されたものだろう。私の腕を引いた男の人は今にして思えば兄だ。夢の中ではわからなかったけれど。道理で懐かしいわけだ。


「ユリウス」

「どうした?」

「フルーテガルトに戻ったら、またクロイツェルを演奏しようよ」


 男性二人に手を繋がれてなんとなく気恥ずかしかった私は思い付きで言ってみる。


「おや? 私は仲間外れですか?」

「お前はいつもアマネと演奏しているではないか」

「個人的に一緒に演奏したことはありませんよ」


 二人の言い合い(というほどではないけれど)に発展してしまって私は冷や汗をかく。


「ほ、ほら、今日演奏する曲みたいに、3人で演奏したらいいんだよ」


 今日の演奏会では、キリルのピアノ伴奏で私とアロイスがヴァイオリンを一緒に演奏する演目があるのだ。


「俺だけ練習しなければならないではないか」


 ぶつくさとユリウスが文句を言う。


「アロイスがピアノ伴奏をするならしてもいいぞ」

「それはまあ、構いませんが……」


 やっぱり自分一人だけ練習するのが嫌なのか、パートの交代を提案するユリウスにアロイスは苦笑する。


「でしたら、帰ったら猛練習ですね」

「仕方ないな」


 とっても嫌そうな表情で言うユリウスだが、その表情が照れている時の物だと私は知っているし、アロイスも私を見て肩を竦めてみせる。


「なんか話してたらフルーテガルトが懐かしくなっちゃった」


 お米ももらったことだし、演奏会が終わったらまゆりさんと律さんに会いに飛んで帰りたいくらいだ。


「だが、まずは演奏会だ」

「そのために来たのですからね」


 両側からもっともなことを言われて、私は素直に「はーい」と良い子の返事をした。











 演奏会が始まる直前、ヴィル様とお父上である王が専用の貴賓席に登場した。


 バルコニー席に納まった貴族たちが立ち上がり、王族に向かって礼を取る。私たち3人も礼をするために舞台に出る。するとホールの観客の数人が私を見て驚いた表情をした。


「おい。広場で歌ってたボウズじゃねえか?」


 私を指差してそう言う男性は、たぶん初めて劇場に来た時に広場にいたのだろう。騒ぎになりそうな気配に焦る私だったが、王族の前ということもあるせいか大騒ぎには発展せず、場内はさわさわとした囁き声が聞こえてくる程度だ。


 ほっと安堵の息をつき、正面の貴賓席に向かって私は胸に手を当て一礼する。だが、袖に下がった私はキリルの青ざめた顔を見て焦った。


「キリル、大丈夫ですか?」


 何と言って励ませばよいのか思い付かず、緊張で強張るキリルの手を握る。しかし、そんな私たちを見ていたモニカが怒ったように言った。


「キリル! 失敗したら許しませんよ!」


 そんなプレッシャーをかけるようなことを言うなんて、一体どういうつもりなのかと私が困惑していると、アロイスがキリルの肩に手を置く。


「キリル、何をしにここまで来たのですか」

「……演奏をするためです」

「では、君が行くべき場所は一つだけだとわかりますね?」

「…………はい」


 大真面目な顔でキリルが頷き、私の手を離す。大きく深呼吸をして舞台の上に歩いていく背中は、緊張の色がまだ残っているように見えた。


「キリルはあえて重圧を与えた方がよい演奏をしますよ」


 アロイスがこっそり私に耳打ちする。そうだったっけ? と思い起こしてみたけれど、私にはいまいちよくわからない。


 キリルがピアノの前に座ると、私は心配な気持ちを誤魔化すために袖から観客席を覗いてみた。


「うわ……ジャンマリオさん……」


 ホールの立見席の最前列を陣取ってスケッチブックを手にしたジャンマリオが床に座り込んでいる。他の観客たちは立っているため、めちゃくちゃ目立っている。今のところは特に筆を動かすわけでもなく、じっとキリルとピアノを見ているジャンマリオだが、私はなんだか嫌な予感がした。


「あっ、向こう側の袖にチャラ男たちがいます!」


 客席までには届かないだろうギリギリの声量で怒るモニカが指差す方を見れば、例の二人組がハイタッチをするところだった。次から次へと頓珍漢なことをする輩が登場することに私は頭を抱えたくなる。


「問題ない。ラウロは向こう側の袖に行け。ホールには俺が行く」

「うん。お願い」


 ユリウスがラウロと共に袖から出て行く。


 ふうと息を吐き出して再びステージに視線を向けると、キリルの左手が持ち上がるところだった。











「アマネ先生、ドレスラー卿の後援を受けようと思います」


 演奏が終わって舞台袖に戻ってきたキリルは、すっきりとした顔でそう言った。


「アマネさん、大丈夫ですか?」


 隣に立つアロイスが小声で私を呼ぶ。キリルの言葉を思い出していた私はハッとして顔を上げる。演目は滞りなく進み、残すところ1曲となった。


「すみません。行きましょうか」


 最後の演目は3人で演奏するのだ。私は頷いて足を踏み出す。舞台に姿を見せた途端、大きな拍手が私たちを出迎えた。


 私とアロイスがピアノの前に立ち、キリルがピアノの前に着く。3人で視線を交わし、呼吸を合わせる。出だしの和音がピアノで奏でられると、ヴァイオリンのゆったりとしたユニゾンが後に続く。情感たっぷりな演奏の後、明るく華やかな旋律が始まる。


 私たちが3人で演奏しているのは、サラサーテのスラブ舞曲集にまとめられている『2つのヴァイオリンのためのナヴァーラ』だ。


 タイトルにあるナヴァーラというのはサラサーテの故郷であるスペインにある地名だ。スペインの舞曲といえばフラメンコが真っ先に思い浮かぶのではないかと思う。この曲はまさしくそんなイメージで、思わずスカートの裾を持って踊り出したくなるような陽気で親しみやすい曲なのだ。


 少しだけホールに視線をやれば、観客の表情もうきうきして今にも踊り出しそうな雰囲気になっている。嬉しくなってアロイスを見れば口角がちょっと上がっていて、キリルも最初とは打って変って楽しそうな表情をしていた。


 互いの目を覗き込んで内緒話をするみたいにピツィカートを合わせる。遠慮しないでガツンと来いとキリルに視線を送れば口角が上がるのが見えた。


 クライマックスの手前の左手ピツィカートは、アロイスに変顔を笑われながら練習したのを思い出してむむっと眉間に力が入ったけれど、表情を取り繕って(といいつつ、やっぱりちょっと変顔になった)どうにか持ちこたえる。


 最後の一音を奏でた瞬間、ホール全体からわっと喝采が上がった。思わず正面の貴賓席を見れば、ヴィル様が両手を挙げていて、王様が目を丸くしているた。


 アロイスとキリルにハグをして3人並んでお辞儀をする。


 私たちが袖に下がってもホールの熱はなかなか覚めやらず、誰かが「歌え!」と騒ぎ出した。もしかするとあの時広場にいた人かもしれない。


 それでも私たちは慌てない。モニカの提案でアンコールに『そばにいることは』を歌うと決めていたからだ。キリルの伴奏にアロイスのヴァイオリンが間奏に入るようにアレンジして練習済みなのだ。


「行きましょうか」


 私たちは再び3人で舞台に踏み出した。











「よき演奏会であった」


 演奏会の後、劇場内の一室に案内された私はヴァノーネの王様と再び相見えた。最初に会った時と同じように王様はにこりともせずに頷く。


「そのような怖い顔をされずとも、アマネ殿は多少ふざけても内緒にしてくれますよ」


 ヴィル様が肩を振るわせて笑う。


「む。そうか?」


 王様がピクリと眉を動かす。


「そうですとも。なにしろ私がお忍びでウロウロしていることをエルヴィン陛下に内緒にしてくださいましたから」


 エルヴィン陛下の即位式の数日前、王宮で再会したヴィル様は唇に指をあてる仕草をして私を黙らせたのだが、あの時はびっくりしてしまって言い付けるなんて思い付かなかっただけだ。ヴィル様は都合よく解釈してくれたらしいが。


「うむ。では、改めてアマネ殿。よい演奏会でしたな。最後の曲は年甲斐もなく踊りたくなってしまった」


 先ほどよりもずっと表情をやわらげた王様が明るい声で言う。


「恐縮です。楽しんでいただけたようで安心いたしました」


 威圧感が薄れたことで肩の力が抜けた私は、それでも王様の前なのだしと大真面目に答えた。


「ヤンクールで難儀をしていると聞く娘にも、ぜひ聴かせてやりたいものです」


 王様は遠くを見るような目でぽつりと言う。


 それはおそらく本音なのだろう。ヤンクールの王妃はヴァノーネのご出身でヴィル様の妹君だ。本当はエルヴィン陛下に嫁がせたかったとヴィル様は言っていた。だが、当時はヴィーラント陛下がご存命で、ヤンクールの王に請われてしまえばノイマールグントの王弟に嫁がせるのは難しかったとヴィル様はこぼしていた。


 少ししんみりしてしまった空気を王は落とした視線を上げることで振り払う。


「ところで、アマネ殿はヴァノーネに来る際にテンブルグに立ち寄られたとか」

「はい。身内がテンブルグで学んでおりまして、様子を見に行ったのです」

「バルトロメウス殿にも会われたと聞いておりますが、どのように感じられましたかな?」


 王様は笑顔を讃えたままだが、じっと観察するように私を見ている。


「しっかりとしたお考えをお持ちの方だと思いました」


 バルトロメウス様には最初は揶揄われてしまったけれど、刑罰の話をした時にちゃんと考えていらっしゃるのだなと感じたのだ。


「うむ。バルトロメウス殿はまだお若いので心配しておったが、上手く領内をまとめておるようですな」

「私も見習わなければなりませんね」


 王様が頷くとヴィル様が大げさに肩を竦めてみせた。


「アマネ殿は帰りもテンブルグに?」

「はい。そのつもりです」


 ヴィル様の問いに私が答えると王様は眉をひそめる。


「ヴィルジーリオ、着いて行こうと考えておるのではあるまいな」

「あ、バレましたか」


 明るい声で笑うヴィル様だが、私としては着いてこられても困る。出来ればアリエルと約束した白い竜を探したいのだ。


「ところでアマネ殿。良い演奏もさることながら、はるばるヴァノーネまで来ていただいたことですし、何か褒美を出してはと周りに言われましてな」


 王様が顎髭を撫でるような仕草でひらひらのレースに触れながら言う。


「とんでもございません。お心だけで十分でございます」


 そもそも私にはこの世界に音楽を伝えるという目標があるのだ。呼んでくれるのならどこへでもかけつける所存だ。まあ、ヤンクールは難しいだろうけれど。


「父上、アマネ殿が演奏してくださった記念にこの劇場の天井画をアマネ殿に決めていただいたらいかがですか?」


 悪戯っ子のように笑うヴィル様の提案に私は目を丸くする。天井画の画家を決めるのはリパモンティ子爵のお役目だったはずだ。それを私が横取りするなんてちょっと困ってしまう。


「恐れながら私たちは明後日にはヴァノーネを発つ予定ですので、時間はあまりないのです」


 どうにかそう答えてみたが、ヴィル様はなかなか引いてくれない。


「ですがお知り合いの画家がいらっしゃるようですから、その方に任せたらよいのでは?」

「どうして……画家の知り合いがいると思われたのですか?」

「舞台の前で絵を描いていらっしゃる方がいましたから。ユリウス殿も隣にいらっしゃいましたし、お知り合いなのではと思ったのです」


 どうやらヴィル様と王様がいた貴賓席のボックスからは、ジャンマリオがよく見えていたらしい。


「あの……何を描いていたのか私は見ていないので……」


 女しか描かないジャンマリオのことだから、たぶん私の絵を描いていたのだろうけれど。


「それに舞台の前で絵を描いていたのは、実はリパモンティ子爵のご子息なのです」


 うまい言い訳が思いつかない私は、結局正直に話してしまうことにした。


「ほう。リパモンティ子爵は天井画の責任者であったな。アレも昔は絵を描いておったのだ。なかなかの才能であったが、今は描いておらぬようだな」


 王様はリパモンティ子爵が描いた絵を見たことがあるのだという。


「そうでしたか。でしたら丁度良いのでは?」

「あの、リパモンティ子爵がお決めになると聞いておりますし、私が決めるのは憚られます。ですので、推薦させていただくというのはどうでしょうか?」


 二人の話を聞いて私はおそるおそる提案してみる。よくよく考えてみれば、ジャンマリオにとっては父君に認めてもらうチャンスかもしれないと考えたのだ。


「うむ。ではそのように手配するとしよう」


 王様が頷いたことで話がまとまる。


「アマネ殿、ヴァノーネはどうでしたかな?」

「ノイマールグントと随分違っていて驚くことも多かったですが、楽しかったです」


 お米も見つけたし、出来ればまた来たいと思っている。実はネクタリンを探したのだが、時期ではないらしく見つけられなかったのだ。


「それはよかった。いずれまた演奏を聞きたいものですな」

「ええ、ぜひまたヴァノーネにいらしてください」


 王様とヴィル様に言われて私は頷く。


 あっという間のヴァノーネ滞在は、これで幕を閉じるかに思われたのだが、そう簡単には終わらないのだった。


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