ギーナ王国編序章2
前回の続きです。
Side ジーク
何時間寝てたのだろう。嫌な夢が、思い出したくない現実が夢に出てきて起きてしまった。親が死んだ時のことが克明にうつされた夢はいつまでたっても慣れない。だがこの夢を見るということは大抵嫌なことが起きる。嫌な予感がする。そして、その予感は必ずといっていいほど当たる。それよりもヴェイン達が帰ってきてない。あいつらは大丈夫なのだろうか?俺よりは確実に強いから死なないと思うが心配だ。念のためスライムを持って街を散策しよう。
宿を出てギルドに向かった。
ギルドマスターが不思議そうな顔で話しかけてきた。
「おう、ジークじゃねぇか。どうしたんだ?」
俺は少し焦ったように話した。
「ヴェイン達を見てないか?宿に帰ってきてなかったから探しにきたんだが」
「そんなに焦るなんてお前にしては珍しいな。あいつらは結構前に出ていったが、なんかあったのか?」
「いや、わからない。でも、嫌な予感がする。もう会えなくなるような気がしてならないほどに」
「そこまで心配する心はあったんだな。そんなに心配ならこっちも探そう。勇者を失ったらこっちも痛いからな」
「なんか探す理由が違うような気がするが頼む。俺はほかのところに行ってくる」
「おう、任せとけ」
そう言って俺はギルドを出て商店街に行った。
相変わらずここは賑わっている。そんな中を歩いていると、
「おいジークなんで1人でいるんだ?」
と、話しかけてきたのはスカルという、たまにパーティーで組む同業者だった。
「なんだスカルか今急いでんだが、ヴェイン達を見てないか?」
「ヴェイン達か?あいつらはガルバドの方に行ったぞ。なんかあっt」
「情報ありがとな行ってくるわ」
(ちょっ、話くらい教えろよ!)
と走り出した時に聞こえたがとりあえずあいつらの居場所が分かったからいいや。それよりもあいつらになんかあった時ってほぼ確実に面倒事なんだよな〜。しかも人気のないガルバトなんかにいくとか完全厄介事に絡まれてるじゃんかよ。はぁ面倒臭い休ませてくれないのだろうかこの世界は。
しばらく早歩きでいくとガルバドについた。ガルバドと呼ばれる地域はこの街で人気のないところであり、昔魔物の襲撃があって未だに魔物が出てくることがある場所だ。なんでそんなところに向かったんだよ。馬鹿じゃないか?
(ドゴォォォォォォォン)
龍の咆哮のような(聞いたことがない)轟音が響く。
多少驚きながら冷静に分析する。
(今絶対魔法撃っただろ。この威力だとヴェインあたりがやったんじゃねぇか。うわ〜面倒事に巻き込まれてるわ。それに突っ込む俺も同じだと思うんだが…まぁ確かめてみるか)
そんな感じのことを思いながら、音のした方向に行った。
そしたら、あいつらがいた。正確にはあいつらと人間?いや魔族っぽいのがいた。なんで魔族がいるんだ?まぁいいとりあえず話しかけてみよう。面倒事じゃないことを祈りながら声をかけてみた。
「なにしてんだ?」
声のした方向を見るとジークがいた。何気ない顔をしながらこっちに歩いてくる。だがそれはルシフェルの顔が分かった瞬間に変わった。
「なんでお前がここにいるんだ、ルシフェルゥゥ!」
ジークは今まで見せたことのない怒りに満ちた顔と声をして叫んだ相手の元へ短剣を手に飛び込んだ。無謀なことだった。ジークの小さい身体は簡単に瓦礫に吹き飛ばされた。
「ガハッ」
瓦礫に激しくぶつかりジークは吐血した。
「弱いですね。これが神の目の子供とは正直期待はずれですね。まぁ20%の力で負けた翔真とかいう人よりは少しはマシですね」
「殺す。親を…殺されてなんも…思わないと…思ってん…のか?絶対に…許さねぇ。なにが…なんでも…殺して…や…る」
そうしてジークは意識がなくなった。
「なにをいってるんですか?転生者は殺される運命なんですよ。それにあなたは死ぬんですから気にしなくていいことです」
そう言いルシフェルは手に闇を纏ってそれをジークに飛ばした。あの魔法は「黒滅」だ。触れるものを全て分解する。それを阻止しようとする影が1人いた。
「親の仇を取れないまま親友を殺させるわけないだろ」
ヴェインがそれを二つに割り、それと同時に剣がバラバラになった。
「今のを防がれますか。これならはどうd」
「や ら せ ね ぇ よ」
シュパっという音ともにヴェインの剣技が炸裂する。ルシフェルは余裕そうに避けるが顔は笑ってない。
「人が話している途中で攻撃するのは反則ですよ。それとも殺されたいんですか?私は基本的に勇者よりも転生者の方を優先して始末するのですが…殺られたいのですか?いい加減にしないと25%の力以上で殺しますからね」
そう言いルシフェルは何かの力を解放した。そして、魔法で作った禍々しい剣に青い炎をエンチャントして反撃にうつった。さっきよりも機動力と攻撃力が上がってヴェインは防戦一方になった。時間が経つにつれヴェインに細かい傷がついていく。それに耐えきれなくなったアリアが「聖壁」を張るが紙を切るがごとく簡単に破られる。そして、ヴェインも飛ばされた。ルシフェルはゆっくりと近づいていく、死の剣を片手に握って。
ルシフェルはヴェインの近くにつくと、剣を振り上げ振り下ろそうとした。ヴェインはさっきの衝撃と「雷龍の咆哮」による魔力消費で動けなくなって、死を覚悟した。
(フレイが泣いていた。自分の父親の前で。動かなくなった父親の前で泣いていた。フレイが尊敬していた、大好きだった人をたった1分で殺された。そんな現実を認めたくないように泣いていた。そして、フレイは全てを放り出して怠けるようになった。魔族に復讐しようとはしなかった。自分の力を理解していたから。まだ、母親が生きていたから。だが父親の死を忘れる前に母親を邪龍に殺された。心の支えを失ったフレイを俺は救いたかった。自分があいつの心の支えになるように、あいつに尊敬されるように、あいつを守ってやれるように強くなる努力をした。だが、無駄だったのだろうか。まだ目の前の敵を倒してないのに身体が動かない。このままでは終わらないのに…)
そんな死に際のセリフを頭で言いながらヴェインは目を閉じた。だがいつまでたっても自分は生きている。おかしいと思い、目を開けると首のない死体が立っていた。どういうことなのだろうか。
Side 優鬼
なんか知らないが戦いが始まった。ジークが気絶したのを見てヴェインが動いた。しばらくはなんとかなったがヴェインも突き飛ばされた。だから俺は神からもらったスキルを使った。この場で使えるのは時空魔法の「時空斬」だった。この魔法はある座標に斬撃を空間に時間を止めた状態で留めて物体がそこを通るとどんなものでも断絶してしまうものだ。予測通りルシフェルとかいうやつは簡単に首が飛んだようだ。これで戦闘は終わりなのだが、なんかピンとこない気がする。異世界の強敵ってもっと強い気がするのだがまぁいいか。これであいつらからもらった恩は返せただろう。
まだ続きます。
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