黄色いゼラニウム
死にたい
降り注ぐ雨でのどの渇きを癒しながら考えるのはそれだけでした。
通り過ぎる人たちはわたしのほうを一瞥するだけで、足早に行ってしまいます。
中にはわたしと同じぐらいの年齢の子たちもいます。
なんでわたしだけこんなに苦しいんだろ。
なんでわたしは一人なんだろ。
前に誰かが言っていた。人生は平等だと。
うそだ。こんなのふつうじゃない。
あの話が本当なら、この首のペンダントを外せば死ねるのかな。
ねえ神様、もしいるならせめて楽にしなせてください。
そう思いペンダントに手をかけたそのときでした。
わたしに降り注ぐ雨は止まり、天使の微笑みが向けられたのは。
「ちょっと待ってて。」
わたしが返事をするよりもはやく、その人は持っていた傘をわたしの右手に握らせ公園を出てどこかに行ってしまいました。
えっと、どうしよう。待つべきなのかな…。そんな風に考えること8分ほどでしょうか。あの人が両手いっぱいに袋を抱えてびしょ濡れで戻ってきました。
わたしの前まで来ると、公園内を見回し、わたしの左手を優しく握り大きな滑り台の下まで案内してくれました。
「ごめん、何が好きかわからなくて。」
そう言い、いくつかのおにぎりやパン、飲み物を取り出してくれました。
「えっと、あの…」
その行為の意味は頭ではわかっていましたが、どうも素直になれません。
ぽん
暖かい手がわたしの頭に置かれ、さっきと同じやさしい微笑みが向けられました。
それが引き金になったのか、わたしの目から大量の涙が溢れ出し、受け取った食べ物と飲み物を夢中でいただきました。
「ん、もう満足した?」
もらった食べ物をいくつか食べ終わったとき、そう聞かれました。
「はい…。えっと、ありがとうございます。」
「そ、ならよかった。」
そう言い、またわたしの頭を撫でてくれました。
3日間お風呂にも入っておらず、さっきまで雨にうたれ続けたわたしの頭を。
食べ物を食べたからか、わたしはだいぶ落ち着きました。
だから目の前のこの人をきちんと見て驚きました。
年齢は高校生ほどでしょうか、中性的な顔立ちに優しく大きな目。美人さんです。すごく美人さんです。大事なことなので二回思いました。
おっと、見とれてる場合ではありません、聞きたいことを聞かねば。
「あの、食べ物ありがとうございました。ほんとにありがとうございました。でも、なんで…何でここまでしてくれるんですか?」
ほんの少しの食べ物や飲み物ならここまで聞きません。この人が買ってきた量が異常だからです。落ち着いた今なら計算できますが、軽く3000円は越えてるはずです。
「…君さ、昨日もここにいたよね。だから何か理由があるんじゃないかなって。それに、ふつう小学生が困ってたらほっとけないでしょ。」