喧嘩?いいえ制裁です
僕とサリナは声のする方に向かって行った。
怒号を飛ばしている人物の声が段々と大きくなってくる。
現場に到着すると、大きい体のオッサンに、猫耳少女が捕まえられていた。
道行く人は、自分は関係ないように、巻き込まれないように、全員が見て見ぬふりをして、足早に去って行く。
僕も野次馬精神で来てしまったので、立ち去りたかった。
「だから、私は商品盗って無いニャー!」
「お前だろ!俺はこの目で、商品をカバンに入れるのを見たぞ!」
何故だか、苛立ちが込み上げてきた。
こんなの、関わらない方がいい、面倒事に巻き込まれるだけだ。
心が僕に、呼びかけてくる。
でも、このまま知らないふりをしていたら?このままここから逃げ出したら?
また心が、僕に語りかけてきた。
面倒事に巻き込まれに行くのか?助けてヒーロー気取りか?助けた後、記憶も無いお前に何が出来るんだ?
僕の心は、いつも楽な方に逃げようとする。もっともらしい理由を付け、逃げられるようにしようとする。
そんな僕の心に、僕は叫んだ。
楽な方に逃げて何の意味があるんだよ!そんな人生に意味なんてあるのかよ!
なぜだ?なぜ僕はここまであの子を助けてあげたいのか?
記憶はまったく無い。でも、どうしても助けたい。
それはこの世界がそうさせているのか?そんな事知ったこっちゃない。
神の気まぐれで記憶を奪われ、旅をしろと強いられた。
ならば、今度は俺が気まぐれを起こす。
「マスター?」
サリナが呼びかけた時には、僕はオッサンの方に向かい走り出していた。
そして、そのままオッサンに、無慈悲な鉄槌。
オッサンはぶっ飛んで、店の棚に頭から突っ込んだ。
「子供を脅すのもたいがいにしとけよ、くそジジイが」
すると、サリナが駆け寄ってきた。
「マスター?何やってるんです?」
「いやー、ムカツクからやっちゃったぜ(てへぺろ)」
「てへぺろじゃありませんよ、どうするんですか?この状況」
「まあ、いきなり連れてこられて、旅させられて、これぐらいは許して欲しいもんだ」
先程まで、捕まえられて、怯えてた猫耳少女がこちらにやってきた。
「ありがとうございますニャー」
ペコリと頭を下げ、満面の笑みでお礼を言った。
「気にするな、疑いをかけられて困ってたんだろ」
「そうだニャ、ユキは何も盗ってないニャ。それなのに盗んだって言われて、怖かったニャー」
「お前、ユキって名前なのか。良い名前だな」
サリナが肩をつついて。
「マスター、あのおじさんがこちらに向かって走ってきてます」
おっと、これはまずいな。そんな時は最終奥義。
「ユキ、サリナ、逃げるぞー!」
こうして、この世界に来てから初の全力疾走で、オッサンから逃げた。
オッサンから逃げて、草原の方まで来てしまった。
「ふぅ〜、久しぶりのダッシュはけっこうキツイな」
「ユキはもう、走れないのニャ」
「お二人共、大丈夫ですか?」
サリナは背中の翼で飛んでいるため、全然疲れて無さそうだ。
「だめ、僕はもう無理だ。二人共今までありがとう」
ガクッ。
「ガクッ、じゃありませんよマスター。こんな事で死なれては困ります」
死なないけど、さすがにもう走れない。そして、何よりもお腹が減った。
「ユキも、もうダメニャ。このまま動きたくないニャー」
同じように、地面を駆けたユキも疲れているようだ。
二人とは対称的に、地面を翔けたサリナは、まだまだ余裕の表情だ。
「ユキさん、あなたはどこに住んでおられるのですか?」
クタクタな俺の代わりに、サリナが尋ねた。
「フニャ?ユキは住処は無いニャ。いつも、寝れそうなところで寝て、ご飯を食べて寝てるニャ」
それは、野良猫ってことか?
「でも、ユキはお店の商品は食べないニャ。それはやっちゃいけない事って知ってるニャー」
そうか、一応そこは分かってるのか。
「なあ、サリナ」
「何でしょうか、マスター?」
「腹減った」
そう、起き上がれないぐらいにお腹がすいている。そして、このままだと、確実に飢える。
「分かりましたマスター。マスターの初期装備として、多少の食料があったはずですので、アイテムボックスから取り出しましょうか」
「お願い、サリナ」
「ではマスター、私の胸に触れてください」
「ふぁい?アイテムボックスって、あの蒼の玉だったの?」
以前、この世界の通貨である【コスモ】を取り出すために、出したあの蒼の玉がアイテムボックスだったなんて。
「マスター、私は準備出来ております。ですので、ご遠慮なくお触りください」
マジかよ、これからアイテムを預ける時や、取り出す時は胸に触れなきゃダメなのか?
頭が痛くなってきた。
これで、触ったらまた喘がれるんだろうな。
空腹の限界がきている僕は、仕方なくサリナの胸に触れた。できるだけ当たらないように、優しく触れていく。
「あぁ、マスター、そんなに触れられると私、もう、らめぇ〜」
チクショー!そうなると思ったよ、くそったれー。
内心叫びながら、サリナの胸から玉が出てきた。
玉の下に手をかざすと、玉の中から、色々と食料が出てきた。
これ、どういう仕組みなんだろ?
「これは、下で手をかざすと、欲しいアイテムが出てきます。逆に、上からアイテムを落とすと、アイテムが球の中に入ります。アイテムを確認したい時は、横から手をかざしていただくと、中のアイテムが確認できますよマスター」
だから、心を読むなって。この世界は何でもありかよ。
あまりの空腹に、ツッコミも出来なかった。
とにかく、出てきた食料で、俺とユキは元気を取り戻すことが出来た。
皆さま、こんにちはまっさんです。
現在通学の電車内です。
ラッシュはいつも苦手ですね。
何よりも、なぜこんなにも人が多いのか!
人が多いところが苦手なので、けっこう辛いです。
それでも、行かなきゃいけない(使命感)
そんなわけで、そして僕は旅をすることになる第3話お楽しみいただけましたでしょうか?
私は、異世界に行ってみたい。
でも異世界に行くと、怖くて何も出来ない気しかしないです。
皆さまも、異世界行く時は、準備を怠らないようにと。
それでは、今回もお楽しみください。