再び旅へと
「到着だニャー」
ユキはやけにテンション高いな。
「なんだ、また兄ちゃん達かよ。てか一人増えてねえか?」
以前借りた時と同じおっちゃんが、店の馬たちに餌を与えていた。
僕達を覚えてくれていたことはちょっと嬉しかった。
「また借りに来たってことは、今回はこの街から出るって事か?」
「そうですね。もうこの街にいたモンスターは倒したので、次の街に行きたいと思って」
すると、一匹の馬が大きく鳴いた。
「マスター、あの馬は」
どうやら、サリナも気が付いたようだ。
「いつも僕達を運んでくれた子だね」
「鳴くなんて珍しいな。今まで店先で鳴くやつなんていなかったのに。もしかしたら、兄ちゃん達がここから離れるのを分かってんじゃないか?」
その鳴いた馬の前まで行く。
「やっぱりお前か」
「なに?知ってるの?」
リンナが聞いてくる。
「そっか、リンナは知らないんだね」
リンナは、うっ!と言うような顔をした。
「知らないわよ!知らなくて悪かったわね!」
「これだから、海の人間はダメなんですよマスター」
何故かサリナが敵意むき出しだった。
「まあまあ、リンナは知らなくても仕方ないよ」
「フンッ!あんたにフォローされても嬉しくないんだし!」
リンナがサリナにいじめられていたから、フォローしたのに怒られた。
「こいつは僕達をここまで連れてきてくれたんだ」
「へぇ〜、そうなんだ」
馬が頭を下げてきたので、そっと撫でてやる。
「ずいぶんと気に入られてるようだな。良かったその馬、兄ちゃん達にやるよ」
やるよ?えっ?くれるの?
「おっちゃん、この馬くれるの?」
おっちゃんは満面の笑みで、そうだと言ってくれた。
「街を救ってくれたお礼だよ」
「ありがとうございます」
思わぬ所で馬を手に入れた。
「そうなると、名前をつけてあげないといけないな。おっちゃん、この馬に名前はあるの?」
「名前か?特に無いな」
じゃあ、自分達で名前をつけてあげないと。
「ユキが名前付けてあげたいニャー」
飛び跳ねるようにユキが両手を上げる。
「じゃあ、ユキさんに名前を付けていただきましょう」
サリナもユキに名前を付けてもらうことに賛成のようだ。
「お前の名前は...」
ユキの名付けた馬に乗りながら、次の街に向かう。
えっ?馬の名前は何かって?
【アーデルハイト・エルトル・ラファエル・エドワード三世】
ユキ、ずばっと言った割に長いよ。
「てかさ、馬の名前長すぎない?」
あえて誰も触れていなかったのに、リンナが触れてしまった。
「そんなこと無いニャー 。カッコイイ名前だニャ 」
「でも、さすがに呼ぶのに長いよ?」
「何か呼び名を決めてはいかがでしょうかユキさん?」
サリナがナイスな提案をする。
「そうね、【エドは〇み】なんてどうよ?」
リンナが出した名前は、どっかで聞いたような名前だな。
「それだと、すぐに消えちゃいそうだニャー」
ユキ、なんて失礼なことを言うんだ。
「この子はフルネームで...」
「だから、それだと長いから...」
ユキとリンナがヒートアップしてきた。
「あー!二人とも静かに!こいつの呼び方は「エド」で決定だ分かったな」
「分かったニャ...」
「分かったわよ...」
僕が叫んだ事に驚いたのか、二人は静かになって僕の決定に了解した。
サリナを見ると、サリナは違う意味で泣きそうになっていた。
「マスターが、マスターらしい仕事をしてる...」
「あの、サリナさん、それ言われるとさすがに僕でも泣くよ?」
僕ってそんなにリーダーに向いてないように見えてたのかな?
「マスター、泣きたくなったらサリナの胸を揉ん...サリナの胸で泣いていいんですよ」
「後々が怖いから遠慮させてもらうよ」
「えー、そんな遠慮しなくても」
遠慮ってか、サリナの笑顔が怖いだけだよ。
こんなやり取りをしていても、エドはしっかりと進んでいる。
みんなこれぐらいしっかりとしてくれていたらな。
「エドもそう思うだろ?」
少し止まって、エドはこちらを向いて「確かに」みたいに頭を下げた。
こいつ言葉通じてるんじゃないか?
「マスター、暇だニャー」
出発してから数時間が経過した。
ユキは暇しすぎて、荷台から積もっていた砂を投げて遊んでいる。
「一旦休憩にする?」
「そうですねマスター。エドも休みが必要ですし」
「なに?あんた達もう疲れたの?」
リンナが情けないわねと言わんばかりの顔でこちらを見てくる。
「体力を管理するのも必要な事ですよ?もしかしてリンナ様はそんな事もわからないので?」
「それぐらい分かってるわよ!こんなペースで本当に数日で着くのかは分からないけどね」
頼むから喧嘩はやめてくれ。
「こらこらサリナ、突っかからない」
「マスター申し訳ありません。このアホが...」
「私の事アホって言ったわね!」
「リンナも、みんなが疲れてるなら休まないと」
「それに関しては悪かったわ」
「リンナは笑ってたら可愛いんだから、もっと笑顔でいて欲しいな」
「えっ、私が可愛い/////可愛いって/////」
心の声が出てしまっていた。
「あの、いや、その何と言いますか」
「今マスターは、リンナ様を可愛いと?私よりも可愛いと?」
やってしまった。完全にやってしまった。
「私を可愛いとか、このド変態!!」
「マスターは、なじられて喜ぶドMでしたか。だから私よりもリンナ様の方が可愛いと仰るのですね?」
やばい、収集つかなくなってきた。
休憩のために馬車が止まった。二人から全力で逃げようとしましたがダメでした。
皆様、お待たせ致しました。
最近いきなり寒くなってきましたね。
こんなに寒いと布団から出たくなくなる。
皆様は風邪とか大丈夫ですか?
それでは、唐突に今回の内容を
と言っても今回はのんびりとした回だったので、特に補足はないと言いますか、でもリンナとサリナの関係に進展?はありましたね。
こんな感じですが、二人はけっこう仲良しですよ(私の中では)
やっぱり仲が良いほど喧嘩すると言うじゃないですか。そんな仲です。
それでは、いつものやつです。
いつも読んで下さっている皆様、この回だけでも読んで下さった皆様本当にありがとうございます。
お楽しみいただけてますかね? 個人的には楽しく書けているので、その楽しさが伝われば嬉しいです。
では、今回も楽しんでいってください。




