短編小説(冬)
僕は深夜住宅街を歩いていた。季節は冬、夜空を見上げれば満点の星が僕を照らしている。僕はある女性と待ち合わせをしていた。その女性とはつい最近出会った。今日みたいに、星が綺麗な夜、僕は彼女に声をかけた。会ったこともないのにまるで昔から知っていたみたいに話しかけた。何を話していたかはほとんどおぼえていないけど、最後に「また星が綺麗な夜に会いましょう」と彼女から誘われたことはハッキリと覚えている。
彼女はすでにそこにいた。あの時みたいに。僕はしばらくその姿に見いっていましった。やっぱり僕は彼女を昔から知っていると確信した。だから僕はあの時みたいに話しかける。「また会えましたね」彼女はふりむいてうなずいた。その悲しそうな表情を前にも見たことがある。あぁ今日はお別れの日僕はそう思い出した。僕はそっと彼女の肩に手をおいてゆっくりと抱き締めた。お互いの鼓動を聞き体温を感じた。また会えるように、僕は声にならない声を出して彼女に言った。「たとえ次に会えるのが千年先でも僕はきっと君を探しだしてみせる」彼女は安心したようだ。彼女の体が軽くなっていく、いつの間にか彼女の姿が消えて僕は空を抱きしめていた。僕はずっとこの出来事を忘れない。