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野良少女  作者: 氷室
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第三章 温かい家

第三章 温かい家


 健太郎は千紗を伴って自宅まで歩いていたが、考えることが山ほどあった。当人であるはずの千紗は後ろで鼻歌なぞを口ずさみながら歩いている。どこまでマイペースなのだろうかと健太郎は呆れたが、こうして連れてきた以上中途半端にはできなかった。

 まずは自宅へ連れて帰った後、とりあえず風呂に入れる。その後、適当にご飯を用意する。そして千紗の部屋も決めてやらねばならない。他にも着替えの問題など様々やることがあった。健太郎はもう明日の学校はこの時点で諦めたようである。

 そんなことを細々考えていると健太郎の家へと到着した。もともと自宅近くの公園での遭遇だったので、そんなに距離はない。

 健太郎がポケットを探り、鍵を探していると千紗は家を見上げて感嘆の声を上げていた。

「ほわ〜。大きなお家ですねえ。こんな家は私の田舎にはありませんでしたよ」

 大きな家といっても二階建ての家なのだがと健太郎は苦笑する。周りを見ても二階建ての家などざらにある。どれだけ田舎なんだと健太郎は思ったが、口には出さない。先ほど年齢を聞いてしまった時点で失礼だったがこれ以上の失礼を重ねてくなかったのだろう。

「ほら鍵開いたぞ。上がれよ」

「あ、はい。お邪魔します」

 千紗は少々遠慮しながら家に上がる。汚れている自分の体を気にしてなのだろうか玄関でどうしたものかと躊躇している。健太郎は明かりを点けながら千紗に遠慮なく上がるよう促す。

「気にせず上がればいいよ。上がったあとは風呂に直行な」

「お風呂まで頂けるんですか?」

「もうここはお前の家でもあるんだから気にするなよ」

「ううぅぅう。重ね重ねのご厚情、どうやって報いれば……」

「とりあえず早く風呂に入ってくれると嬉しいかな、今は」

「かしこまりました! それでは入ってまいります!」

 千紗は敬礼しながら風呂へと向かう。ただのんびりした子というわけでもなく茶目っ気もそれなりにある女の子のようだ。

「さて、そんじゃ千紗のためにカップ麺でも準備しといてあげますか」

 新たな家族のために健太郎はキッチンに向かい、食事の準備をし始める。自分自身も少々小腹が空いたため二人分の用意である。その二人分の食事を見て健太郎は思わず笑みがこぼれる。両親不在の一人暮らしの生活に彩りが加わったことが嬉しいのであろう。

「なんかこういうのっていいな」

 二人分のカップ麺の蓋を開け、お湯を沸かし始める。すると風呂場の扉が開く音が聞こえてきた。

「健太郎さ〜ん。私、シャワーって使ったことないんですけどどうすればいいんですかあ?」

 千紗は風呂から健太郎に助けを求めてきた。シャワーを浴びるのに思ったより時間がかかりそうだと感じた健太郎は火を止め、風呂場に向かう。

「今、入っても大丈夫か?」

 開けた途端に悲鳴では困る健太郎は中にいる千紗に確認をとる。

「えっ? 大丈夫ですよ?」

 いまいち釈然としない返事だったが記にせず健太郎は中に入った。だがそんな健太郎の隣にはバスタオルがしっかり掛かっていた。

「シャワーはそこの……。おわあっ!?」

 風呂場に入り、シャワーの使い方を説明しようとした健太郎は目の前の光景に思わずのけ反り、驚きの声を上げた。

「お、お前大丈夫って言っただろうが」

 健太郎の目の前には素っ裸の千紗が立っていた。一応片手で両胸を隠し、もう一方の手で股間を隠しているのだが、どうやら千紗はかなりスタイルがよろしいようで完璧には隠し切れていない。

「えっ? ですから大丈夫ですよ?」

 千紗は何かおかしいところがあるのだろうかと自分の体をあちこち見回している。どうやら本気で言っているらしいと悟った健太郎は娘に説教する父親のように千紗に訓示を述べ始める。

「いいか、千紗。男に不用意に裸を見せちゃ駄目だ」

「だから隠してますよ」

「バスタオルが外にあるだろ。それに風呂場の中にもタオルあるし」

「ああ、それで隠せばよかったんですね。気付きませんでした」

「いや、普通そうするでしょ」

 何だかどっと疲れた健太郎は手早くシャワーの使い方を教えると風呂場から出た。

まだ十代の少年にはあの体は些か刺激が強すぎる。

「あっ、そういえばあいつの着替えを出してやらなきゃ」

 千紗が着ていたあんな汚い服では風呂に入った意味がなくなる。そう思い至った健太郎は自分の部屋に服を取りに行く。適当に見繕い、ワイシャツとジーンズを持ってきた。下着は母親の物を拝借してきた。

「くそっ。母親の下着を持ち出す息子になるなんて……」

 何だか世間的に見てイタイやつになった感がしていた健太郎だったが、緊急事態という風に言い聞かせる。

 急いで風呂場に戻るが、既に脱衣場にシャワーを終えた千紗がいるようだった。

母親のタンスから下着を持ち出す勇気を振り絞っている間に時間が結構経っていたのだろう。今回も嫌な予感がしたので健太郎は念には念を入れて確認をとる。

「今は大丈夫か?着替えを持ってきたんだが」

「あっ、ありがとうございます。大丈夫ですよ」

 大丈夫と言われても不安が残る健太郎は更に念を押す。

「バスタオルは使ってるな?」

「使ってますよ」

 ここまですれば大丈夫と健太郎は扉を開けたが、それでもどこかに不安があったのか少しだけ開けて中に服だけ入れようとした。しかしその隙間からはまたしても裸の千紗が僅かに見えていた。

「だから全然大丈夫じゃねえだろうが!」

 健太郎は急いで扉を閉める。しかし見えてしまった事実は変わらない。健太郎の頬はあっという間に赤く染まる。

「バスタオル使ってますよ?」

 千紗はさも聞かれたとおり答えたと言わんばかりに言う。

「拭いてるだけだろうが。体に巻けって言ってんの!」

 恥ずかしくなった健太郎はそれだけ言い残し、風呂場から離脱していく。このまま議論していると裸で出てきかねない。そんな嫌な予感を感じた健太郎は当初の予定を遂行しようとキッチンへ向かう。

「巻けばいいんですか?」

 扉を開ける音と共に千紗の質問の声が聞こえる。健太郎は勝ったとガッツポーズをしながらキッチンへ入っていった。


 数分後、キッチンには健太郎と千紗の二人の姿があった。二人は神妙にしながら椅子に座っている。目の前のテーブルには二つのカップ麺が並んでいる。既にお湯が入り、蓋の透き間から温かそうな湯気が漏れていた。

「これを待っている時間って長く感じるんですよね。ああ、まだかなあ」

 三日間何も食べていない千紗は目を輝かせながら出来上がりを待つ。透き間から漂ってくる美味しそうな匂いについつい鼻を反応させてしまう様子が微笑ましい。

 一方の健太郎は久しぶりにテーブルを一人以上で使うということに言いようがない感慨を感じていた。確かに誰か友達とご飯を食べることはあるが、大学ともなると友達の住んでいる場所もそれなりに広がりを持ち、なかなか近くに住んでいない。そういうわけでご飯を食べる際には外で食べることになるので自宅の食卓を誰かと囲むというのは久しぶりのことだった。

「まあずっと眺めてても仕方ないし。ほらお茶でも飲め」

「あっ! ありがとうございます。喉もすごい渇いてたんですよ」

 千紗はお茶を受け取るとすごい勢いで飲み干していく。これだけ美味しそうに飲んでもらうとただ沸かしただけだが、何だか嬉しくなってくる。健太郎は少し微笑みながらその様子を見ていた。そして今更ながら千紗をはっきり眺めたことに気付く。

 最初会った時は暗がりでよく見えなかった。それ以降もバタバタしていてなかなか正面向いて千紗を見ることがなかった健太郎はじっと千紗を見つめる。

 長い黒髪は艶やかで美しい。ややタレ目気味の目が可愛く、まさしく美人といえる女の子である。背もなかなか高いようでスタイルの良さは先ほど確認した。よく考えるとこんな美人と二人きりなんだと意識してしまった健太郎はまた頬を赤く染めてしまう。

「ど、どうしたんですか? そんなに私をじっと見て」

 健太郎の視線に気付いた千紗も頬を赤く染める。気付かれたことにバツが悪くなった健太郎はますます顔を赤くしている。

「そ、そろそろ出来上がったかなあ」

 必死で健太郎はごまかそうとするものの、かなり苦しい。だが同じく気恥ずかしい千紗はそれに便乗して空気を変えようと努める。

「そ、そうですね。もうそろそろですかね」

 二人で揃って時計を見る。するともうすぐ三分を迎えるところだった。そうなると極限までお腹が減っている千紗は気恥ずかしい雰囲気などすぐに忘れ、カップ麺へと視線を移す。

 残り数十秒の微妙な時間がもどかしいらしく蓋を開けてしまいそうになるが、どうせならおいしく食べたいと我慢する。だが、待ちきれないといった感じに千紗は落ち着きがなくなっていた。そんな光景を見ていると健太郎も気恥ずかしさなど忘れて笑っていた。

 そうこうしている内にとうとう待ちに待った三分が経った。千紗は勢いよく蓋を開け、割り箸を割る。だが律儀な性格らしくいきなりがっついたりはせずに手を合わせる。

「いただきます」

 そう言ったきり千紗は動きを止める。どうしたのかと健太郎は千紗の様子を窺う。

「健太郎さんも言ってくれないと食べられないんですけど……」

「あっ、すまん。いただきます」

 律儀な千紗がこのままでは一向にご飯にありつけなくなってしまうので、健太郎も急いで手を合わせる。それを見ると千紗は安心して食事に入る。やはり極度の空腹だったためそのペースは速く、健太郎をも凌ぐほどだった。

「す、すごい速さだな……。まあ無理もないが」

「ふぁ? ふぁんでふか?」

「ああ、いい。気にするな。存分に食べてくれ」

 口に麺を入れたまま疑問の顔を向けてくる千紗に健太郎は気にせず食べるよう促す。幸せそうに食べる千紗の邪魔をするのが憚られたのだろう。

 一心不乱に箸を動かし続ける千紗はどんどん麺を口に放り込んでいく。そしてあっという間にカップ麺一つを平らげてしまった。丁寧に箸を置き、手を合わせる。

「ごちそうさまでした」

 ごちそうさまでしたと言いはしたものの、千紗の表情は物足りないといった感じである。それでも恥ずかしいのかそれとも遠慮しているのか、もじもじしながら落ち着かない。

 それに気付いた健太郎は未だ自分の手元にあるカップ麺を眺める。およそ半分ぐらいは残っているようだ。健太郎は自分の腹と相談し、もういいかと結論を出した。

「なあ、千紗」

「あっ、はい、何ですか?」

「俺もう腹一杯になっちゃったんだけどお前はまだ余裕あるか?」

「はい! 余裕あります!」

 千紗は思わず立ち上がりながら肯定する。その目は輝き、口の端からは涎がわずかに垂れていた。先ほどまでもじもじしていた人物とは思えないほどの変貌ぶりである。

「それじゃもしよかったら俺の分食ってくれないか。勿体無いしな」

「はい! 責任もって食べさせていただきます!」

 千紗は立ち上がったまま敬礼をする。顔には満面の笑みが浮かんでおり、心底嬉しそうな様子がありありと伝わってくる。

 健太郎がカップ麺を千紗に渡そうとすると千紗は宝物でも扱うかのように両手で丁重に受け取る。

「ありがとうございます。それではいただきます」

 再び両手を合わせ、千紗はカップ麺に箸をつける。まだ温かさが存分に残っている麺を千紗は美味しそうに食べ始めるのだった。


 食事を終えた二人はカップ麺の残骸を綺麗に洗い流し、ゴミ箱に捨てて処理を終えた。そうしているともう時刻は深夜十二時になろうとしていた。

 健太郎はシャワーで簡単に体を洗い流し、寝る準備を始めようとしたが、ここで問題が起こった。

「お前の寝るところをどうしような」

 健太郎は千紗の寝る場所をどうしようと考え始める。常識的に考えて健太郎の部屋というのは除外だった。年頃の男女が同じ部屋で寝るというは健太郎には気恥ずかしすぎる。

 だからといって両親の部屋を貸すのも問題がある。本人のあずかり知らぬところで勝手に他人に部屋を使われるというのはいい気持ちがしないだろう。

 そう考えていくと残るのはリビング、書斎、物置と化している空き部屋しかなかった。書斎は父親のテリトリーに属するのでこれも却下である。

「あの、私はどこでもいいですよ。なんならお風呂でもどこでも」

 おずおずと千紗が提案する。やはり居候という身分であるため相当遠慮しているようである。

「いや、風呂って寝れないし。うーん、そうだなあ……」

 健太郎は頭を捻る。どう考えても選択肢が自分の部屋に絞られてくる。リビングも選択肢にあるが、ソファーやらなんやらどかさないと布団を敷く空間がない。非常に面倒だった。

「俺の部屋ぐらいしかないんだよなあ。それはちょっとまずいよな」

「あの、健太郎さんさえよろしければそれで……」

「えっ?」

 千紗の提案に健太郎は固まる。まさか年頃の女の子の方から男の部屋で寝たいと言い出すとは思いもよらなかった様子である。

「私、故郷では家族皆で同じ部屋で寝てたので……。こっちに来てからはずっと一人で寂しかったんです」

「……そうか」

「ですから健太郎さんさえよろしければ一緒に……」

「わかった。一緒の部屋で寝るか」

 腹を括った健太郎は千紗の提案を受け入れる。一ヶ月もの間ずっとホームレスとして一人で生きてきたであろう千紗のことを考えるとそれでも別の部屋で寝るとは言えなかった。

 健太郎は物置と化した空き部屋から布団を取ってこようと移動し始める。二階にあるのは空き部屋と健太郎の部屋であるため持ち運びは容易である。だが、それ以外に気に掛かることがあった。

「あんまり掃除してないからなあ。布団は大丈夫かな」

 しばらく掃除していない空き部屋はあまり綺麗な状態とは言えない。押入れに入っているとはいえ、そんな部屋に放置されている布団が大丈夫かは断定できなかった。

「私なら大丈夫ですよ。今まで路上で生活していたんですから」

 健太郎の後ろを歩いている千紗が暢気にそう言うが、健太郎個人としては女の子を清潔ではない布団に寝かせることなど出来ない。階段を上がって、空き部屋の前までやってくると健太郎は徐に扉を開ける。

 部屋の中は少々埃っぽかったが、荒れ果てているわけではなかった。見たところ変な虫がいることもない。健太郎は使わなくなった椅子や机などの間をすり抜けながら押入れまでたどり着く。

 健太郎が押入れを開くと、中には布団がしまわれていた。見たところ特に汚れていたり、埃っぽかったりはしないがダニが住み着いていないとは言い切れない。やはりこんなものに寝かせるわけにはいかないと健太郎は布団を出すことを断念する。

 健太郎は押入れを閉じ、部屋を出ようと向き直る。その行動に疑問の表情をしている千紗に健太郎は説明を始める。

「まあダニとか住み着いてるかもしれないし、布団を今日今すぐ使うのは無理っぽいな」

「そうですか。それじゃあ、どうしましょう?」

 千紗は首を捻って考え始める。健太郎としてはこんな埃っぽい部屋にあまりいたくないので千紗に出るよう促す。

「まあ今日はお前が俺の部屋のベッドを使っていいよ。俺はリビングのソファで寝るから」

「いえっ! 私がソファで寝ますから。健太郎さんはベッドで寝てください」

 健太郎に背中を押されながら、千紗は大袈裟に遠慮の意を表す。

 だが健太郎も男として女の子をソファなどで寝かせるわけにはいかないと引く姿勢など微塵も見せない。こうなると二人による遠慮合戦は際限なく発展する様相を見せ始めた。

「いいや! 女の子をソファなんかで寝させるわけにはいかないよ」

「それを言ったら家主を差し置いて居候がベッドで寝ることなんて出来ません」

「今まで路上で寝泊りしてたんだろ? ベッド使えって」

「路上で寝泊りしてたからこそソファでも十分です」

 全く収集する様子を見せない遠慮合戦、譲り合い合戦。ただこのままでは埒が明かないと双方とも悟り始め、着地点を見出そうとし始める。

「いつまでもこうしてても仕方がないな……」

「そうですね。私も眠くなってきちゃいましたし」

「でもどうするよ。いっそのこと、じゃんけんで決めるか?」

 健太郎が公平にじゃんけんで決めようと提案した時、千紗は健太郎を驚かせる大胆な提案をした。

「そうだっ! 一緒にベッドで寝ればいいんですよ」

「はあ!?」

 健太郎は目を丸くして驚く。同じ部屋で寝るどころの話ではない。一緒のベッドで寝ようと言い出すのだから健太郎の驚きようは尋常ではなかった。

 頭の中がエラーを起こしている健太郎の意思を置き去りにして千紗は健太郎を伴い部屋へ向かおうとする。

「それじゃあ行きましょう。よく故郷では弟と一緒に寝てましたから何だか懐かしい気分です」

 楽しそうに健太郎の部屋へ向かう千紗に健太郎は引きづられるままである。

「この部屋ですね。それじゃあ、お邪魔します」

 千紗は相変わらず健太郎を引きづり、部屋の中をずんずん進む。そしてベッドの前まで来ると健太郎をベッドに横にし、自らもその隣に横になる。

 健太郎は未だ衝撃から立ち直れず、呆けたままである。まだ彼女も出来たことのない十代の初心な少年に女の子と一緒のベッドで寝るというのは刺激が強すぎたのであろう。

 千紗は丁寧に掛け布団を掛け、柔らかいベッドの寝心地を存分に堪能している。部屋に入った時点で電気は点けていないため、消しに行く必要はない。もうあとは寝るだけである。

「こんなに柔らかいお布団で眠れるなんて夢にも思いませんでした。幸せです〜」

「……」

 幸せそうにベッドに包まれている千紗の隣で健太郎は固まっている。もうその表情は真っ赤でまるで高熱で動けない重病患者のような体である。

「ふぁ……。何だか突然眠くなってきました……」

 柔らかい感触に寝心地の良さを感じた千紗は強い睡魔に襲われ始めていた。その睡魔は圧倒的な強さであっという間に千紗の意識を深い眠りの中に誘い込む。

「もう……駄目です……。おやすみなさい、健太郎さん……」

 睡魔に完全に連れて行かれた千紗は眠りの世界に落ちた。

 一方で機能停止している健太郎もまた無意識の内に極度の緊張から逃げようとしてか眠りの世界に落ちようとしていた。半ば落ちかけている意識の中で健太郎は最後の力を振り絞り、千紗に背を向けるように体勢を変えた。その行動の直後、健太郎は深い眠りの中に落ちていった。

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