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野良少女  作者: 氷室
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第一章 ホームレスの少女

第一章 ホームレスの少女


「さっさと帰らないと明日の授業が辛くなっちゃうな」

 薄暗い夜の通りを浅井健太郎は駆けていた。夜十時までバイトをしていた彼は翌日の大学に影響を出さないように迅速に行動をとる必要があった。五月の夜、それなりに快適な気候ではあるが走っている健太郎は汗が吹き出ていた。滲む汗を気にせず、一目散に自宅まで駆け抜ける。

 角を曲がり、直線をひた走り、ただ一目散に自宅を目指す。まだ大学に入ったばかりの一年生。それが五月という初めも初めの時期に寝坊をしてサボるなどしたくない健太郎は止まることなく走る。

「う〜ん……。なかなかいい物が見つかりませんね〜」

 しかし、突如耳に入ってきた声に健太郎は思わず足を止めた。辺りを確認すると場所は自宅近くの公園だった。

「このままじゃ今日も断食です。辛いです」

 がさごそと何かを漁る音と共に女の子の声が聞こえてくる。気になった健太郎は少し怖かったが、音と声の発信源である公園へと足を進めた。

 明日は朝一から授業があり、一秒でも時間を無駄にしたくなかった健太郎ではあるが、湧き上がる好奇心には勝てず、ずんずん公園の中を進む。

「何かいい物は……。あっ! ありました!」

 着実に声に近付いている。健太郎は息を飲みながら歩を進める。

 そして開けた広場に出た時、とうとう声の主が視界に入ってきた。健太郎は警戒しながらその人物に近付いていく。

「食べ残しのお弁当です! 大収穫ですよ!」

 何か嬉しいことでもあったらしく目の前の女の子は突然はしゃぎ出す。少し驚かされた健太郎であったが、もうここまで来たら引く気などない。女の子に手を伸ばし、肩に手を置く。

「こんな所で何してるの? もう遅いし危ないよ」

「ひっ!?」

 当たり前のことだが、女の子は驚き、健太郎から距離をとる。見るからに警戒しているその態度に健太郎はしくじったと後悔した。

(暗がりで突然後ろから声をかける男。完全に俺変質者じゃねえか)

 自分のとった行動が世間的にまずい行動だったと悟った健太郎は動揺をし始める。このままでは叫び声を上げられかねない。まずは相手を安心させなくてはと思うものの、焦っているためか何も名案など浮かびもしない。

 ただただ冷や汗を流している健太郎を相変わらず女の子は不審そうな目で見つめている。警戒を解かないまま女の子は健太郎に質問を浴びせかける。

「あ、あのう……。どちら様でしょうか?」

 相手の方から話の糸口を作ってくれたことに素早く反応した健太郎は必死に弁明に努め始める。

「お、俺は怪しい者じゃないよ。俺は浅井健太郎って言うんだ、よろしく」

「あっ、これはご丁寧にどうもです。私は石川千紗といいます。こちらこそよろしくお願いします」

 どこかほのぼのした雰囲気になってきたことに健太郎は安堵し始めていた。このまま叫び声を上げられるような展開にはしないよう注意して健太郎は話をつなぐ。

「それにしてもこんな所で何をしてるの? もう暗いし、女の子が一人で危ないよ」

「今日のご飯を探していたんですよ。もう三日も何も食べていないんです。……はっ!?」

 突然何かに気付いたかのように千紗は警戒を強める。千紗の言っていることに疑問を感じた健太郎だったがその行動に驚いたのか口を挟むことが出来ない。

「こ、このお弁当は渡せませんよ。私が先に見つけたんですから。三日ぶりのご飯なんですから!」

 あまりに想定外の言葉に健太郎は嘆息した。誰が好き好んでゴミ箱に捨ててあったコンビニ弁当の食べ残しを奪ったりするものか。そんな物を奪いそうに思えるほど自分は卑しく見えるのかと悲しくなってくる。

「いや、そんなゴミ箱に捨ててあった弁当なんかいらないし」

「怪しいです」

「だいたい君もそんな物食べたらお腹壊すよ。それに三日も何も食べてないって一体どういうことなんだ?」

 健太郎が先ほど腑に落ちなかった点を質問すると千紗は警戒をしながらも口を開いた。そこから飛び出した言葉は健太郎を沈黙させるに足るほどの予想外のものだった。

「私、食べ物どころか家もないんです」

ということで野良少女始めました。まだまだ未熟者なので至らない点数々あるでしょうが、これからもお読み頂けると光栄です。

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