No.8 ハゲしい悲劇
若干エグい表現があります
あーーー、そのなんだ、さっきは調子ぶっこいて、す、す、す、すいまて……すいませんでした!
……うわぁ!
「ちゃんと謝りなさい!」
教室から逃げたそうとする俺を眞那が、なんかカウボーイが使う縄で首に引っかけ、思いっきり引っ張って止めた。
もちろん俺は咳き込みながら後頭部から倒れた。
チキショー、なんて強さだよ。
「泰世ぁ、もう一回されたいぃ??」
丁重にお断り申し上げます、はい。
「あらぁ、そぉ。」
不敵な笑みを浮かべて絞めている縄を強める眞那。
なんで強める!?
「2人きりだねぇ……。」
キャラ設定が違――う!
ツンデレキャラじゃなーい!
眞那はツンツンキャラのはずがぁ!
「これなら誰が来ても問題ないねぇ……。」
と言って、頬を紅く染める眞那。
これじゃあ調子が狂っちまう!
「たとえ、ここで私が殺しても……ね。ウフフ。」
何ぃーー!
待てぇ、早まるなあ!
「貴方に死んで貰えればこちらは楽に本多家を潰せるのですよ。」
実沙綺までぇ!?
実沙綺は両手にナイフを素早く繰り出して、掌で回しながら近づいて来る。
それを冷たく見つめる眞那がゆっくり機関小銃をスカートの中から取り出す。
この2人こぇぇ!
ってか死ぬなこりゃあ。
ここで、死んだら、悲しいぞ俺。
「刺殺か銃殺、どちらがお好みですか?」
そうだな……刺殺かな?
「いやだよ。銃殺けってぇい!」
そうかぁ、銃殺かぁ……って意見の意味が無いだろうが!
それなら初めから聞くなよな!
「へぇ〜、そんなこと言って良いんだぁ。」
威圧感がたっぷりとある瞳とオーラで笑う眞那。
再びこぇぇ!
ダメだ。
もう諦めるしか無いな。
親父、爺、お袋、イギリス留学中のまだ登場してない姉貴、そして皆、こんなところで死んでしまいそうだ。
本当に悪いな。
「じゃぁバイバイ。」
バン!
キーン!
不思議だな、痛くない。
即死なんだな。
「気が早いよ。本多。」
はい? どなたですか?
死神さんですか?
「ばぁか、伊志田だよ。」
「ちっ!」
いやぁ、目の前で何が起きてるか分からないんですかぁ……。
「目を開けろ。」
え? 目を開ける?
死んだはずじゃ……?
状況を把握出来ないまま目を開けてみる。
そこには立派な日本刀を両手に持った美青年の伊志田光成が立っていた。
「銃刀法違反で現行犯逮捕する。」
「貴方も銃刀法違反じゃない?」
「俺は日本政府裏警察少年課長って知らないか。」
すごい人材がこんなところにいた!
しかもチョークールだし、かなりのイケメンだし、甘い声だし、いいところしか無い。
こういう人間もいるもんだな。
新鮮な驚きだ。
さて、どうしたものか。
このまま伊志田光成に任せればいいのか?
それとも、
「とりあえず机で簡易な防壁を作って下さい。」
わかった。
じゃあ後は任せた。
「か、完敗です……。」
ドスッ、と伊志田光成が倒れる。
床には伊志田光成が流したであろう、真っ赤な血が広がっていく。
……倒されるの早!
本当に課長さん!?
「じゃぁあ、貴方も死にましょうねぇ。」
機関小銃を軽々と片手で構える。
カチャ。
死へのカウントダウンが始まった。
「命乞いしないの?
お、しても―――。
「まぁ、しても意味無いけどね。」
やっぱりそのオチにいくのか……。
まぁ、定番だからな。
仕方がないか。
「5」
あぁ。
「4」
うぅ。
「3210」
ダダダダダダダ!
無数の鉛の塊が俺の躰を突き抜ける。
今まで流れていた生暖かい鮮血が少量宙を舞う。
痛みで意識が薄れる中、背中から落ちていく感覚を覚える。
ガバッ!
吐血、そして着地。
「これで本多家は終わりました……わ!」
ザクッと実沙綺が持っているナイフが腹に突き刺さり、痛覚が躰中を走る。
そしてかき混ぜる。
内臓がぐちゃぐちゃと音をたてる。
痛いがまだ死んでない。
さっさと死ねばこの痛みから脱出出来るのに。
「諦め早いわよ。泰世。」
しばらく聞かなかったけど、確かに聞き覚えのあるこの声。
懐かしいな。
誰だっけ……。
「酷いわね。一緒にお風呂も入った仲なのに。まぁ仕方無いか、イギリス行ってたし。」
イギリス、声、一緒にお風呂……ぁ!
分かった。
姉貴だ。
史上最凶の姉貴だ。
だけどどうしてここに居るんだ?
死ぬ前の夢か? なら納得出来るが……。
などと俺が呟いていると、実沙綺が腹に突き刺したナイフをかき混ぜる。
激痛が走る。
「あはは! 夢ならいいねっ! 残念だけど、史上最凶の姉貴は来てるよ!!」
目を閉じているのでどこに居るかは分からないが、声の感じから、右側に居てそうだ。
「貴女も死にたいの?」
これは眞那の声だ。
「うふっ、貴女こそ死にたいのかな?」
少しおちょくっているようなトーン。
この声の時、確実に人災が起こる。
例えば、死ぬとか。
「あ゛ぁ゛!」
眞那が人間とは思えない様な悲鳴をだす。
鼻、耳、口から血が噴き出す。
と、同時に実沙綺が大量に吐血する。
2人の悲鳴が響き渡る。
そう、姉貴には超能力的な物が生まれつきあり、姉貴がイギリスに行くまで、それに苦しめられてきた。
「大丈夫……? 愛しの弟ちゃん。」
少し声が震えている。
珍しいな、姉貴が泣くなんてさ。
俺の腹に姉貴がそっと顔を添える。
内臓と血が姉貴の綺麗な顔を赤く染める。
すまない……、もう俺死ぬみたいだ。
「いやだよ、私は。死なれたら困るんだから! ねぇ! ねぇ………ら!」
徐々に薄れて行く姉貴の聞いたこと無い様な声。
そして、ヒヤリと冷たい涙が俺の腹に落ちる。
「泰世ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
寒いですね、はい。毎回言ってますよ。まぁ夏になると暑いですねに変わりますが(笑