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少々残酷要素入ってます
ご注意ください
アパートに着いたのは、電話が切られてからきっかり一時間後だった。荒くなった息を整える。
扉の前に立ち、ドアノブを回す。鍵は掛かっていなかった。ドアを開けて、そろりと足を踏み入れる。
「…那流、いないの?」
ドアを閉めて振り返ると鉄の匂いがした。
真っ赤だった。
赤黒い水溜りの真ん中に、那流が横たわっていた。足が汚れるのも気にせず、僕は那流に歩み寄った。
「…那流っ‼︎」
那流の胸に、鋭利なナイフが突き刺さっていた。僕は無我夢中でそれを引き抜いた。僕はそれがいけないことだとは知らなかった。
傷口から血液がとめどなく溢れ出る。那流の温かい血が頬にかかった。僕は医療の知識など全くない。どうしたらいいかわからなかった。
「…那流っ、駄目…」
真っ白な那流の頬に触れる。冷たい頬は僕の手によって赤く染まってしまった。那流はとても涼しい顔をしていた。ただ眠っているだけのように見えた。しばらくすれば目を覚ますんじゃないかと思った。
「嫌だ…!」
急激にとてつもない眠気に襲われた。
(なんで…こんな、ときに…)
血溜まりの中にうつ伏せに倒れこんだ。薄れゆく意識の中、花瓶に挿してあった一輪の淡い紫の花が紅く染まっているのを見た。
那流が死んだ。




