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俺たちの花  作者: ルート
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青ちゃんはそれからしばらく入院することになった。あれからもう二週間が経ったけど、まだ意識が戻らないらしい。青ちゃんのお母さんによると、救出が早かったおかげで、命に別条はないという。なる兄は一日だけ入院して、怪我が無いかとかいろいろ検査されたって聞いた。

「ねえ、柳くんまだ退院しないの?」

学校は今だにその話で持ちっきりだ。放課後になり、立花さんがあたしに聞いた。

「うん、まだだって…」

「そうなの…元気だしてよね。いつかきっと退院できると思うわよ」

「ありがと、立花さん」

「もうユキでいいわよ。その代わり私も紫苑って呼ぶけど」

「ああ、うん、いいよ。ありがとね、ユキちゃん」

「美優と朋香もいいよね?」

立花さん改めユキちゃんは、二人並んで外を眺めている福山さんと渡辺さんに訊いた。

「んー?いいよー」

「うん、私もいいよ。よろしくね、紫苑」

朋香ちゃんは外を眺めながら答え、美優ちゃんはあたしを見てにっこり笑って答えた。性格の違いがハッキリ出てるなあと思っていると、突然朋香ちゃんが声を上げた。

「あっ、ねえ校門のとこにいる人超かっこよくない!?神崎大の人かなぁ?いいなあ〜超イケメンじゃん!誰か待ってるのかな」

ユキちゃんも美優ちゃんも揃って外を見た。釣られて見ると、どきっとした。ユキちゃんと美優ちゃんは歓声を上げた。

「ウソ、超かっこいいじゃない!朋香って割と趣味悪いからもっと普通の人想像してた」

「あ、それ私も思った。でもあの人普通にかっこいいよね。私すごくタイプだなー」

「え、まじ?じゃあ美優ちょっと声掛けて来なよ。んで、告白してくれば?」

「え〜どうしよ〜。言ってこよっかなぁ」

美優ちゃんは割と乗り気だ。それはまずい。あたしは窓を開けて呼び掛けた。

「お兄ちゃーん!」

三人が驚いた顔であたしを見た。校門の外にいる彼はあたしの声に気付き、手を振った。

「え、嘘っ、紫苑のお兄さん?」

「紫苑にあんなかっこいい兄がいるなんて知らなかったなぁ!」

「紹介してくれれば良かったのに!」

三人はわいわい盛り上がっているが、あたしはそれどころではない。なる兄が携帯を使わず、直接あたしに会いに来るなんて、何かあったとしか考えられない。あたしは即座に鞄を掴んで、三人に言った。

「ごめん、先帰るね!」

返事も聞かずに教室を飛び出した。

階段を一つ飛ばしで駆け降りて、なる兄のもとへ向かった。

「なる兄!なにかあった?」

なる兄は見ていた携帯を閉じながらあたしの問いに答えた。

「この前おばさんから連絡があった。青葉の意識が戻ったらしい。今から病院へ行こうかと思うんだけど紫苑も一緒に行くか?」

聞かれるまでもない。あたしは嬉しさを滲ませた声で

「行くっ!」

と答えた。


淡い紫色の自転車を押しながら歩いている紫苑は、とても嬉しそうだった。

「本当に良かった、青ちゃんの意識戻って」

「そうだな」

青葉の入院している病院は、学校を境にして俺や紫苑が住んでいる方角と正反対のところにある総合病院だ。学校から歩いて約二時間程かかる。

「なる兄自転車買ったの?」

「いや、まだ」

「どうして?ないと不便でしょうに」

「んー、そろそろ二輪免許取ろうかと思っててな。バイトして金貯まったら教習所行こうかなって」

「え、バイトしてたんだ?何のバイトしてるの?」

「桐也さんに紹介してもらって、隣町の喫茶店で」

「お兄ちゃん?」

「喫茶店のマスターが桐也さんの知り合いで、普段はバイト雇ってないらしいんだけど特別に」

「お兄ちゃんに会ったの?」

紫苑の声が急に低くなった。ジッと俺を睨んでいる。

「…え、あぁ、まあ、ゴールデンウィークに…」

「こっちに帰ってきてたってこと?」

「あぁ、そうだな。二日間だけこっちに来てた」

「そう…。うちには一回も顔出さないで、どういうつもりなの。そもそもここら辺泊まるとこなんて無いのにどうしたんだろ。野宿?」

紫苑は顎に手を添えて考え込んだ。桐也さんは帰省しても実家には帰らなかったのか。桐也さんが野宿をしたと思われる前に言ってしまおう。本当は内緒にして欲しいと頼まれていたが、桐也さんの面子を保つには仕方ない。

「桐也さんは俺のとこに来たよ」

「え?それって…なる兄のアパートに泊まったってこと?本当に!?」

思ったよりも紫苑が食いついてきて、少し驚いた。

「まあ、一日だけな」

「はぁ?何で実家には帰らないでなる兄のとこに行ってんのよ!?大体、なる兄とお兄ちゃんってそんなに仲良かったっけ?」

「んー、まあ…突然来たから俺も驚いたけど」

「ふーん、なら良いわ…」

どこらへんが良いのだろうか。

「なる兄、着いたよ」

紫苑に言われて顔を上げると、総合病院はもう直ぐそこにあった。

「自転車止めてくるね、先に行ってて」

「ああ、うん」

紫苑を見送り、俺は病院の自動ドアをくぐった。

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