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3rd Contact 【こんな日も…いいかな?】

◆ 2080年12月 10日 晴れ ◆

■ 中央合同庁舎 29階 3係 執務室 12:25 ■

今日の朱梨は朝からではなく、昼からの勤務であった。

別に朝用事があったとかではなく、刑事局の勤務は2交代だからである。

ただ、この2交代は偶に3交代になる事がある。

現在3係は、1級管理官が3人という余裕のある人員が割かれている。

ただ、管理官は必ず捜査官を伴って出場する事が義務付けられているため、

必ず1人はこの3係の執務室に常駐している必要があるのだ。

少し前までは特別捜査官の外出が全面的に禁じられていた事もあったが、

現在では同伴であれば外出も許可されやすくなった。

「お疲れ様です」

朱梨は当直管理官であった宜音にそう声をかけた。

夜勤明けであるが、宜音は少しも疲れた様な顔を見せない。

「あぁ、ご苦労さん。今日の引き継ぎ書類はいつもの所だ。よろしく…」

そう言うと宜音は鞄を持って、足早に管理官官舎へと歩いて行った。

部屋の中には、まだ当直の捜査官は誰も居なかった。

朱梨は今日の当直を確認しようと思い電子手帳を開いたのと同時に、

1人の若い女性……というより、少女が入ってきた。

朱梨はここ数日の記憶と照らし合わせるが、身に覚えが全くない。

聞こうと思って口を開こうと思った矢先…少女が口を開いた。

「氷野 朱梨……さんですか?」

私の名前…を知っているみたいだけど、一体誰だろう。

すると朱梨の考えを悟ったのか、慌てる様に言葉をつなげた。

「あっ…すみません。私、特別捜査官の崎守…崎守 千里と言います」

朱梨はそういえば、1人だけまだあっていない捜査官を思い出した。

「あなたが…。初めまして、よろしくお願いしますね?」

最後が疑問形になったのは、千里に手を急に握られて驚いたからだ。

「失礼ですけど…おいくつですか?」

朱梨が見た感じでは、15歳程度の女の子にしか見えないのだが…。

「今年で21になります…」

「えっ!? 本当ですか? 私と同い年ですね!」

予想を遥かに上回り、自分と同い年と来た。

「よく言われます……こんな容姿ですけど、ちゃんと働けますからね!」

怒っているんだか、落ち込んでいるんだか、よくわからない返事が返ってきた。

「ごめんなさい、気を悪くしたなら謝ります…」

そう言うとそこまででもない様子で、片手でそれを制してきた。

話しがひと段落したタイミングで、糸葛が入ってきた。

「今日の当直は氷野か」

「はい! よろしくお願いしますね」

糸葛は片手でコミュニケーションを取りながら、自分の席に着く。

席に着くとパソコンを立ち上げて、溜まっている書類を片付け始めた。

私もこうしてはいられない…私も片付けないといけないんだった…。

朱梨もパソコンを立ち上げて、書類を片付けようとした時であった。

「エリア網膜検知警報。千代田区Kモール千代田内で該当スキャナが検知。

 詳細が不明の為、当直管理官は捜査官を伴い至急急行して下さい。以上、オワリ」

管理官執行システムに情報が転送されると、2人を率いてエレベーターに乗った。

「それにしても、朱梨さん初めてですね?」

「そう言えば…今月の勤務でまだ1回も当たってなかったね」

よく考えれば、ここに配属されて10日経つが千里との勤務はなかった。

「少し体調を崩していたので…着きましたね」

エレベーターを降りるといつもの車両に乗り込み、現場へと向かった。


■ Kモール千代田 従業員駐車場 12:40 ■

Kモール千代田は、千代田区内唯一のショッピングモールである。

官庁街が幅を利かせる千代田区では、娯楽施設自体が少ない。

そのため、自然と千代田区民はKモールに集まるのだろう。

中央合同庁舎から少し距離はあるものの、そこまでの距離ではない。

車をKモールの従業員用の駐車場に駐車して、

従業員通用口から入って警備室へ向かった。


■ Kモール千代田 中央警備室 12:45 ■

「網膜スキャナの検知記録の提示をお願いします」

朱梨は電子タイプになった身分証明書を提示して、検知記録を確認する。

「検知記録が1階のこのスキャナに集中していますね…」

どう対処したらいいのか考えていると千里が口を開いた。

「私が探しましょうか? 見つけられると思いますけど」

千里が胸を張って、朱梨に言った。

「本当なの……?」

朱梨が半信半疑、と言うような感じで言うと以外にも糸葛が入ってきた。

「氷野、崎守が言っている事は本当だ。多分、見つけられる」

「まぁ、潜在者を伊達に20年近くやってませんから!」

それは誇っていいのか微妙な所だが、千里に促されるまま1階に向かう事にした。


■ Kモール千代田 1階 12:25 ■

平日ではあるが、Kモールの中は意外と混雑していた。

見る限りでは大学生や主婦が大半を占めているようだが…。

1階に着くと崎守は、早速探し始めた。

「 (何か、さっきまでと違うな…) 」

真剣そのものの崎守を横目に糸葛も真剣に探している様子だ。

すると、糸葛が先に何かを見つけたようだ。

「崎守、左奥のあいつは違うか?」

言われて千里も顔をそちらに向けて、ピクンと反応する。

「糸ちゃん流石だね! うん、間違いなくあいつだね」

「取りあえず、同行してみるか…」


糸葛がすっと近づき、男に声をかける。

男は20代前半の顔立ちで、どこか後ろめたさが隠れている気もする。

「ちょっといいかな?」

糸葛がそう切り出すのと同時に察したのか、男が朱梨の方に突進してきた。

「そこをどけぇぇぇ!!」

朱梨は一瞬どうしたらいいのかと焦りを感じたが次の瞬間……。

「えぃや!!」

1つの掛け声と同時に、突進してきた男の手を素早く掴んで床に叩き落としていた。

所謂……一本背負いというのであろうか。

男が地面に仰向けに倒れているのを見て、千里が素早くその手を取った。

そして、次の瞬間には外れてしまう1歩手前まで関節を捻りあげた。

男は無残にも大きな声を上げ、最終的に糸葛に手錠をかけられた。

「あぁ、糸ちゃんもう連れて行くの? まだまだこれからなのに…」

ものすごく残念そうに声を上げたのは、以外にも千里だ。

「管理官の前でそう言う事を言うな。それに……」

と言って男の腕をよく見ると、すでに関節が1本外れてしまっている。

「本当に勘弁してくれよ!」

糸葛はそう言ったのとほぼ同時に男の関節を元の位置へと戻した。

悲鳴にならない声を上げて、男は失神してしまったようだ。


男を護送車に連れて行く道すがら、朱梨は千里に尋ねた。

「千里さんさっきのって……」

薄々感じてはいたのだが、おそらくは。

「多分想像で合ってますよ。さっき使ったのは合気道の関節技です」

でも、と前置きをおいて千里が言葉を紡ぐ。

「朱梨ちゃんのさっきの技の方が凄かったよ! 何て言うの?」

千里は初めて見たのか、興味津々で朱梨に聞いてくる。

「えっと、さっきのは『一本背負い』って言って、柔術の1つだよ」

警察庁の研修課程では、護身術の一環として柔術の習得が義務付けられている。

柔術とは、少し前まで『柔道』と呼ばれていた競技の1つであったのだが、

競技人口の大幅な減少を背景に合気道の技を混ぜた柔術として発展した。

「あの朱梨ちゃん…。1つお願いがあるんだけど」

少しそわそわしている様子を見ると、自分と同い年ってことを忘れそうになる。

「うん、私にできることだったら何でも言って」

朱梨がそう言うと目をとてもキラキラさせて、言ってきた。

「今度暇な時に…その…柔術を教えてくれない…かな?」

さっきの話で興味を持ったのか、照れながらそう言ってきた。

「勿論いいよ」

千里は喜びながら、糸葛に追いつき確保した対象者と共に車両に乗り込んだ。

朱梨も車両に乗り込み、管理官執行システムに状況の終了を報告する。

車は緩やかに走り出し、中央合同庁舎へと軽快に足を進めた。


■ 中央合同庁舎 29階 3係 執務室 13:30 ■

対象者を引き渡して執務室へと戻ってきた朱梨は、休む間もなくパソコンに向かった。

さっきの書類を作成して、宜音さんに提出しなければいけないからだ。

パソコンの画面に流れていく文字を見ながら、朱梨はどんどん打ち込んでいく。

半分ほど書き進めた所で、千里が横に立っているのに気付いた。

「どうしたの?」

朱梨がそう聞くと、千里の手にコーヒーが握られていのが見えた。

「これ、良かったら一息ついて」

コーヒーをもらうと、パソコンから目を離すことにした。

上に大きく伸びをすると、背中の筋肉が引っ張られる。

コーヒーを飲み終わり作業に戻ろうかと思うと、今度は糸葛に声をかけられた。

「なぁ氷野? 分析室ってもう行ったか?」

「いえ、まだと思いますけど」

「もしあれだったら、崎守と行ってくるといい。崎守は、あそこと懇意だからな」

崎守は分析室という単語に反応したのか、手を引っ張って連れて行かれた。

糸葛は少し口元を緩ませて、またパソコンに向かって作業を開始した。



■ 中央合同庁舎 29階 分析室 13:40 ■

分析室は同じ29階の奥まったところに存在していた。

以前の組織で言う所の『鑑識』や『医務』の機能が集まった感じで、

かなり広いスペースが割かれている。

自動扉の中に入ると、正面のディスプレイに向かっている人影が見えた。

人が入ってくるのを感じたのか、入口の方を人影が見る。

「あ~ら、千里じゃないの? そちらの綺麗な女性は、どなたかしら?」

どこか間延びした口調ではあるが、女性という事だけ理解できた。

部屋の中に足を進めると、応接席に腰を下ろした。

千里が朱梨の事をざっくりと話をすると、女性も興味が湧いたようだ。

「あ~ら、あなたが新任管理官の? 確か、もう1人いるって聞いたんだけど」

「あっ、片瀬の事だと思います」

それから当たりさわりのない会話で時間を過ごした。

「そう言えば、まだ自己紹介してなかったわね?」

白衣を着ている女性は改めて向き直り、言葉を紡いだ。

「私は分析官の 彩宮寺 杏。分析とか、医務関連は私の所にね~」

そう言えば、さっきから千里の声が全くしない。

何処に行ったのかと周りを見回すと、すぐ目の前にいることに気付く。

「気持ちよさそうに寝てますね?」

杏の膝を枕にして熟睡モードに入っている。

「最近あなたに会うのをずっと楽しみにしていたからね…」

それはとても興味のある内容ではあるが、あまり長居する訳にもいかない。

「それでは、私は戻りますので。適当に起こしてあげて下さい」


部屋を後にする時、杏に『暇があったらまた来て』と言われた。

何だか居心地の良い空間だったので、また時間を見つけて来ようと思った。

朱梨はそんな事を考えながら歩いていると、3係の執務室に直ぐ着いてしまった。

まだまだ始まったばかりの当直勤務…。

糸葛が打ち込んでいるのを横目に、朱梨も作業の続きを始めるのであった。


PM2.5だとか、黄砂の飛来が本格化してきましたね…。


そんな事も気になりだした、作者の SHIRANE です。


ブラックアウトの第3話目を投稿させて頂きました。


自分としても初めての分野と言う事もあり、


手探りの点が非常に……7割以上占めていると思います。


書き方に不快さを感じられた方も居られるかもしれませんが、


この話は20話続けばいいかな?と思っている作品です。


自分で楽しみながら書いていますので、中々個人的には


とても楽しい作品ですが、皆様にとってどうか微妙ですね^^;


何はともあれ、これからもよろしくお願いします^^



2013年 3月 8日 SHIRANE

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