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『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第1章 まず家を建てよう

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第1話 森で目覚めたクラフト少女

気が付くと、私は森の中に立っていた。


「……え?」


思わず声が漏れる。


周囲を見回す。


木。


木。


木。


どこを見ても木ばかりだった。


鳥の鳴き声が聞こえる。


風が葉を揺らしている。


太陽は高く、空は青い。


そして何より――


知らない場所だった。


「ここ、どこ……?」


私は混乱しながら自分の体を見下ろした。


小さい。


前より明らかに小さい。


手も足も細い。


着ている服も見覚えがない。


白いブラウスに茶色のスカート。


まるでゲームの村娘みたいな格好だった。


その瞬間。


頭の奥に激しい痛みが走る。


「うっ……!」


大量の記憶が流れ込んできた。


知らない少女の人生。


そして自分自身の人生。


二つの記憶が混ざり合う。


数分後。


私はその場にへたり込んだ。


「……転生、したの?」


前世。


私は日本で暮らす普通の女性だった。


名前は覚えていない。


けれど好きだったものははっきり覚えている。


ミニチュア。


ドールハウス。


ジオラマ。


小さな家具。


小さな街。


小さな世界。


給料の大半をミニチュアに使い、休日は模型店巡り。


自分で家具を作ったこともある。


完成したドールハウスを何時間も眺めていられるくらい大好きだった。


そして――


事故に遭った。


そこから先は覚えていない。


目覚めたらこの森だった。


「まさか本当に異世界転生……?」


信じられない。


だが信じるしかない。


現実だからだ。


私は立ち上がった。


まずは状況確認。


持ち物を調べる。


すると腰のポーチに一冊の本が入っていた。


革張りの古い本だ。


表紙には大きくこう書かれている。


【クラフトガイド】


「クラフト?」


本を開く。


そこには説明が書かれていた。


【本世界の住民は十五歳になるとクラフトスキルを習得する】


【素材を組み合わせ、建築、加工、製作を行うことが可能】


【イメージ力により完成度が変化する】


私は何度も文章を読み返した。


そして思った。


「……ゲームじゃん」


どう考えてもゲームだ。


クラフトゲームそのものだ。


木材で家を建てる。


家具を作る。


道を整備する。


そんなゲームを私は何本も遊んできた。


すると本が光った。


【初心者クエスト】


【木材を十個集めよう】


私の目の前に半透明の文字が浮かぶ。


「うわっ!?」


思わず後退した。


だが消えない。


どうやら本物らしい。


私は近くの木に触れた。


すると。


ポン。


木が消えた。


代わりに木材が十個現れた。


「え?」


私は固まる。


今、何が起きた?


木が消えた。


そして木材になった。


本を開く。


【木材×10】


と表示されている。


「便利すぎない?」


思わず声が出た。


さらに試す。


石を拾う。


【石材×1】


表示された。


草を抜く。


【繊維×1】


表示された。


完全にクラフトゲームである。


私は少しだけ笑った。


さっきまで不安だった。


知らない世界。


知らない森。


一人ぼっち。


本来なら泣いていてもおかしくない。


だけど。


「面白そう」


そう思ってしまった。


なぜなら私は知っている。


クラフトゲームの楽しさを。


何もない場所から。


家を建てる。


家具を置く。


庭を作る。


街を作る。


理想の世界を作る。


それがどれほど楽しいか。


すると再び本が光る。


【木材10個達成】


【報酬:簡易斧】


ポン。


目の前に斧が現れた。


「本当にゲームだ……」


私は思わず笑った。


だがその時。


ふと周囲を見回して気付く。


「……待って」


太陽が少し傾いている。


つまり。


もうすぐ夜だ。


そして私は家がない。


ベッドもない。


食料もない。


「笑ってる場合じゃない!」


慌てて立ち上がる。


まず必要なのは住む場所だ。


雨風をしのげる場所。


安全な拠点。


クラフトゲームの基本中の基本。


最初に作るものは決まっている。


私は拳を握った。


「よし!」


森の奥を見つめる。


「まずは家を建てよう!」


その瞳は希望に輝いていた。


まだ誰も知らない。


この少女が。


やがて王国一の街を作り。


異世界初のスーパー銭湯を作り。


国そのものを発展させる存在になることを。


今はまだ。


森の中に一人立つ、小さなクラフト少女だった。

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