どっちが大事?
気がついたらベッドの上だった。
「うぅ……、いたた……」
「お嬢様! 気が付きましたかっ!?」
メイドのリアリーが涙目で私を見ている。
「あの、私何かやったのかしら? 全身が痛いんだけど」
「覚えてないんですかっ!? 階段から転げ落ちて足と腕の骨を折られたんですよっ!」
えっ、骨折てかなり重症じゃない?
リアリーに言われて、その時の記憶がだんだんと思い出してきた。
確か婚約者のエドラー・クラストス候爵子息様とのデートの約束が駄目になってしまい今後の事について考えていたのよね。
で、階段を降りようとしたら足元がグラリと揺れて成す術なく転げ落ちてしまった、と。
リアリー曰く2日間意識が無かったらしい。
「心配かけちゃったわね……」
「いいえっ! すぐに旦那様方を呼んで来ますねっ!」
「お父様は仕事じゃないの?」
「旦那様も奥様も全ての予定をキャンセルしてお嬢様の意識が戻られるのを待っていたんですよっ!」
え、あの仕事優先のお父様と社交優先のお母様が?
リアリーが部屋を出てから数分後、両親がやって来た。
お父様は『意識が戻ってくれて良かった』と私の手を泣いていた。
お母様は『貴女がいなくなったら、と思うと寝れなかった』と寝不足の顔で泣いていた。
あぁ、私は愛されているんだ、と感じた。
その後も友人達がお見舞いに来てくれてそれはそれで嬉しかったけどエドラー様は一度も来なかった。
(手紙でも良いから何らかの連絡が来れば良いのに……)
私が大怪我をしてもエドラー様にとって幼馴染の方が大事なのか、私はそれだけが残念だし寂しかった。
1か月後、漸くベッドの上から解放され車椅子に乗れるようになった頃、漸くエドラー様がやって来た。
「フォンティーヌ、だいぶ顔色も良くなったじゃないか」
「えぇ、1ヶ月も経てば回復もしてきますよ」
そう言うとエドラー様は気まずそうな顔をした。
「いや、本当はすぐにでもお見舞いに行こう、と思っていたんだ。 しかしミーナの体調が優れなくて……、向こうのおじさん達も『君についていてほしい』と言われてしまって……」
言い訳をするエドラー様に私はため息が出そうになった。
「エドラー様、この際だからハッキリさせましょう」
「えっ、ハッキリて何を……?」
「私と幼馴染のミーナ様、エドラー様にとってどちらが大事なのですか?」
「えっ……」
エドラー様は固まった。
返答次第では今後の関係に影響が出る。
私はジッとエドラー様を見た。
「……ミーナにも言われたよ。『私と婚約者、どっちが大事なの?』て。 即答出来なかった……、僕はフォンティーヌもミーナもどっちも大事なんだ……、でもこの答えでは納得してくれないよね」
エドラー様は優しい方だ、でもただ優しいだけではダメだ。
「……私はこの1ヶ月、家族や友人達がお見舞いに来てくれて嬉しかったです。 でも、その分エドラー様が来られなくて私は色々と考えていました」
「それは……」
「このまま婚約していても関係が良くなるとは思えません。 一度白紙にしませんか?」
エドラー様は顔が青くなっている。
「……そこまで追い込んでしまったんだね、本当にごめん。 フォンティーヌが望むなら一度白紙にしよう」
私達はお互いの家族とも話し合いをして婚約関係を解消する事にした。
結論から言えば、私とエドラー様は暫くして再婚約を結ぶ事になった。
あの話し合いから定期的に私とエドラー様は話し合う機会が増えた。
お互いに本音で話す事が出来る様になって以前よりも関係が深くなった。
それでも一度は別れたので再婚約となると慎重になっていたけど周囲が応援してくれて再婚約を結ぶ事になった。
それとミーナ様の事だけど、私とエドラー様が別れた事を知りショックを受けお詫びの手紙をくれた。
『そんなつもりは無かった』、『エドラー様が優しくて甘えてしまった』と書いてあった。
そして彼女は病気を完全に治す為に隣国へと行く事になった。
ミーナ様の病気の治療薬が最近、完成したそうでクラストス候爵家が費用を出したそうだ。
それと我が公爵家も紹介状を書いた。
これは私も大怪我をして少しはミーナ様の気持ちを理解したからだ。
きっと私達の結婚式にはミーナ様も元気な姿で来てくれるだろう。
その時には今回の事を笑って話せれば良いと思う。




