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紫の旋律  作者: 蒼夜
第三章
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 以前話した時も相当、サリューは話辛かっただろうに。

 そんなサリューの傷を抉るような話を本人から二度もさせてしまうなんて…。

 どうせなら、あの時思い出してしまえばよかったのに。どうして思い出していないんだろう。

 

 戦が始まる前から無関心だった王が、急に私を訪ねてきたのは、サリューの存在があったから。

 自分の地位を脅かす存在だったから?

 離宮でみたサリューとカルスは仲睦まじい兄弟のように見えたのに…。

 

「ルークとシルバは、何でも会った瞬間に喧嘩して。シルバが負けたんだって」

 

 心が読めてしまうから、感じてしまうから。

 カルスの心の奥底に隠している感情を見てしまった。今でこそ力のコントロールが身についているといっても、幼いころもそうとは限らない。無差別に読んでしまうこともあったはず。

 

「俺がシルバと会ったのは…いつだったかな。忘れたけど小さい時だったな~」

 

 優しいリアリリス様が全部サリューに話したとは思えない。でも、王族という立場のサリューは全部知っていなきゃいけないのかも知れなくて、ありのままをサリューに話したのかもしれない。

 

 サリューはむやみに他人の心を読んで喜ぶような人じゃない。

 

「共通の友人ってところなのか。でも三人で一緒に会ったことってまだないんだよ。いつ皆一緒に会えるかな」

「シルバってなんだか、顔が広いのね」

「そうだね、旅人として世界中放浪してるやるだからね、俺なんかよりよっぽど心強い味方だと思うよ」

「……そんな風に見えない」

 

 一緒にいたときはだいたい何もなければ昼過ぎまで寝てるような、のんびりしてる人だったし。

 でも、困ってるときはいつも助けてくれて、居場所がなかった私のそばにずっといてくれた人。

 

「普段があんなんだから、しかたない。」

「でもすごくシルバって情報通なのよね。よく考えれば…私が王宮に行くことになるのもわかってたみたいだし」

 

 衛兵の人に私を渡すときやけに落ち着いていたし。

 

「サリュー今シルバがどこにいるか知ってる?」

「今?」

「うん。記憶がね、全部戻ったら一緒に旅をする約束してるの」

 

 そのために今私は自分の記憶を探しているんだから。

 

「今ね、いつもあいつから勝手に会いに来ることがほとんどだからな。探しとくよ」

「ありがとう」

 

 あと幾ら記憶を思い出せばいいのか定かではないけど…。全部見つかったら、この世界をシルバと一緒に旅をする。

 

「そうだ、サリューなら知ってるよね。私がこの国に来て何年ぐらいたってるのか」

 

 カルスに聞いても言葉を濁されるだけで、決定的な証拠になるような年数は一切教えてもらえない。

 記憶の中にある歴を思い出そうにも、そういう日付なんかを気にしていなかった。

 思い出した記憶の中で思うのは一回ぐらい季節が廻ったのかもしれないということだけ。シルバと過ごしたのは数か月。

 

「シオンがこの世界に来てから?」

「そう。今私が覚えてる記憶だけだと…多分一年ぐらいはたってるんだけど、その後がわからなくて」

「俺と会ったのが来た年で良いって言うならだけど」

「うん」

「ざっと四年ぐらいたってるよ」

「よ…ねん」

「うん、でもシオンが今思い出している場所からすると後半分、っあ!」

 

 途中までいってサリューが話すのを止める。

 

「どうしたの?」

「勝手なこと言うけど…これからのことはあんまり思い出さない方がいいと思わなくもないんだよ俺」

 

 ずいぶん遠慮してる言い回し。

 

「あの後、俺はシオン付きの侍従に戻れなかった。シオンがよく一緒にいた侍女のシーラも…。」

「そうなんだ」

「…アスカとは、会えた?」

「この前窓から来てくださって」

「シオンの今目の前に写ってるアスカがアスカだよ。って…俺にはそれぐらいしか言えない、かな。」

 

 どっちの味方にもなれないから

 

 とても小さい声でサリューは呟いた。

 

 


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