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紫の旋律  作者: 蒼夜
第三章
44/75

43 探し人

「外で待っててって言いたいところだけど、一緒に来てもらえると俺が大変助かるんだが…一緒に来てくれるよね?」

 

 魔術師専用の塔。その目の前に来るとトルテはシオンの方に向き直ると、先の発言をしたのだ。

 

「本当はもっと早く帰ってこなきゃいけなかったんだけど、のんびりしてたら時間が過ぎちゃってて、このまま帰ると大目玉が確実なんだよ。そこで、シオの存在!ほら、魔術師見つけたからっていって話をそらす。そんなに時間はとらないと思うから、ちょっとだけ付き合って」

「まあ…良いですけど」

 

 それに、魔術師の集まる場所ならルークがいるかもしれない。

 手前にある水晶にトルテが手を置くと白く発光する。

 

「珍しいっしょ。ここは、魔術師か、それに連れられてしか中に入れないんだよ。これが、鍵だからね」

「じゃあ、普通の人はどうやって入ってくるんですか?」

「許可証が発行されたらかな、それがあれば一人でも入れる…。精霊を使役できる君になら特別に発行されるかもしれないよ。」

「そうなんですか」

「将来有望なら、誰だって歓迎だよ」

 

 開けられた扉の中の景色は夜の闇。

 

「変なのが多くって…今日の当番の奴は光が嫌いなんだよ」

 

 一面の闇にびっくりしたのを感じてトルテが補足的に説明をする。

 

「この正面玄関は当番があって…それぞれの性質が反映されるようになってるんだ。だから、もし、当番の日に酒に酔い潰れてたりすると…随分と歪んだ景色が出来たり。今日のこの真っ暗は明らかに故意的だけど…。」

 

 トルテは腕を軽く振って辺りの燭台に一気に火をつける。

 

「ここから俺達がいなくなったらまた消すだろ。さ、行こう」

 

 歩いていくと通ってきた道の火がどんどん消されていく。その代り、ついていなかった先にどんどんと火がともる。そんなに長くないはずの道が燭台の火だけが、頼りなためか、随分と長く感じる。

 

「トルテ。随分長い一本道じゃない?」

 

 あまりにも長くて感覚というより、現実なことなのではないかと尋ねる。

 

「そうだね」

「そうだねって」

「大丈夫。もうつくから」

 

 

「僕は、お前たちから報告を貰ったから捜索を止めたんだ!!今さらそんな…言いがかりにも程があるだろ!!」

「少しでもおかしいと思ったら、確認の連絡でもしてくれば良かったんじゃないか」

 

 

 正面の扉から聞こえてくる怒号。

 今まさに扉をノックし様としていたトルテの手も止まる。

 

「そっちこそ、連絡が欲しいのにこなかったんなら、何らかの方法で連絡してくるとこあ出来なんじゃないのか?僕の方からは連絡は取れないと何度も言っておいただろう!?」

「お前が、忘れているだけかと思ったよ。」

「忘れるわけないだろっ!!そっちから…ああ、もういい。早く迎えに行って差し上げればいいだろ」

「そうするさ、失礼する」

 

 

 バンっと扉が乱暴に開けられる。内開きの扉だったからトルテに直撃することは免れたが外開きだったら顔面に直撃していたのではないかと思う程の勢いだった。

 

「あっ」

 

 扉から出てきた人は一瞬目を見開くとそのまま出ていく。

 

「やっほー」

 

 明らかにタイミングが悪いものの扉の目の前に立っていたので隠れるわけにもいかずにでたトルテの苦し紛れの挨拶。

 

「お前は…一週間もどこほっつきあるいてたんだ!!!」

「ほらほら、あんまり怒らないで…戻っちゃってますから」

「ったく……」

 

 トルテの真後ろで二人の動向を見守っていようと思っていなのにグイッっと前に出される。

 

「ほらほら、精霊持ちの収穫だって~。機嫌直してよ」

「ちょっ、トルテ?」

 

 なんでこんな怒ってる人の目の前に出すのよ。

 

「シオン?」

「って…ルーク!!やっと会えた!」

「なに…知り合い?」

 

 あの記憶の夢から起きた時に目の前にいた人と同じ。

 

「シオン、なんだってこんなところに?カルスが許可…は出してないよね?侍女服を着てるってことは、まさか…」

「違うのよ。オルフェお嬢さんのご飯を厨房に貰いに行こうと思っていただけで」

「トルテ、シオンをどこで拾って来たんだ」

「立ち入り禁止区域の扉の前で迷ってたから拾ってきた」

 

 来客が出ていってから立ち上がったままだったルークは力が抜けた様に椅子に雪崩落ちていった。


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