13 検分
元々国王の近くにいたどこかのご令嬢だろう少女たちが国王と賢者によって確かめられていく。
国王が通り過ぎると、その少女たちは兵士によってどこかに連れて行かれる。きっと家に帰されるのだろう。国王の眼にとまりたかった少女たちは国王が通り過ぎると気を失うもの、何かをわめき散らすもの大勢いたが流石に屈強な兵士には敵わず連れて行かれる。
最後の最後に兵士に連れられてきた私は順番から言って最後。サーエフと話してる間に人数は膨れ上がっていたらしく、国王がここにたどり着くまで時間がありそうだ。
というか、国王は何を探しているのか、ほとんど前を通り過ぎる形で歩みを進めていく。
一瞬あの人と眼があったような気がした。でも申し訳なさそうにすぐそらされる。
ほとんど貴族のご令嬢の山が終わったころ一人の少女が国王の眼に止まったらしい。国王は賢者に一言いうとその少女は今までの人とは違い別格の扱いで部屋の外へと促されていった。
そしてまた国王の良く分からない闊歩が始まる
「シーン、ちゅまんない」
国王の歩みに誰もが話すことのない中少女は飽きてしまったのか話しだしてしまった。
誰も話していない、そんな中の少女の声。目立つのにも程があるだろう。国王が此方に視線を向ける。
後ろであの人が「ああ」と嘆く姿が見えた。
「その子供を抱いているのがシオンだ!!捕えろ!」
国王は今までその列を崩さずにゆっくりと一人ひとりの前を通っていたというのに今は掻き分けるように向かってくる。
その行動は、なんなのか。シオンというのはやはり自分のこと…。
「…簡単には捕まらない!」
サーエフを両手で抱き締める。逃げるには国王の真横を通り過ぎて来た扉に向かうしかない。
一本の活路を見出し、そこの道筋にそってシオンは走り出す。国王に突っ込むというすんでの処でシオンは最小限の動きで体制を横にずらす。
後一歩というところで国王の指はシオンの服を掴めなかった。
まだホールにいる少女たちをよけ続け扉に手をかける、瞬間その人はシオンの腕を掴む。
「良くやった!離すな」
シオンを国王自身では逃したものの、シオンの行動はわかっているというように先回りしていた人物を国王は誉める。
焦ることなく此方に近づいてくる国王にあったこともない筈なのに、嫌。という感情がシオンの中に湧いてくる。
「なんで、あなたがここにいるんですか」
無意識にサーエフを強く抱いてしまう。とらえられている腕を払おうとしても敵うはずもない。
「私は今国王の下、騎士のひとりとして仕えさえていただいているのです。シオン様、すみません」
近づいてきているといってもまだ遠い国王。きっとこの声は聞こえていないだろう。
「本当は、このまま…すみません」
「なんで!離してください!」
「すみません」
そう言ってもシオンを捕えている腕の力は一向に弱まる気配を見せない
「お願いですっ!!ヴィンスさん!!」
「…シオン、さま」
わかっている。国王に仕えているものは国王の命令が何よりも優先だということが。今シオンを捕えているこの手を離したら彼はきっと罰せられる。そんな理不尽なことを自分が言っていると言うことはわかっている。でも…あの国王のもとには行きたくない。
ヴィンスの表情も苦しそうなものへと段々と変化する。
「お願い!お願いだから、ヴィンスさん!!この手を…はなして」
シオンは離してと、ヴィンスに言葉を浴びせ続ける。
「離すなよ!」
「嫌なの!!お願いだから、離して!」
国王とシオンの声が重なり合うようにヴィンスにかけられる。
「シーン?」
なにか切迫した状態といのはわかっているのだろうけどいまいち状況が掴めていないサーエフがとぼけたような声でシオンに語りかける。
「サーエフ」
「ヴィンス、その子供をシオンから離せ」
その声と同じくして国王がシオンのもとにたどり着く。
ヴィンスからの拘束が外れたかと思うと彼の手にサーエフは連れて行かれてしまう。代わりにシオンのもとに来たのは国王。
「…あ」
いやだ…。この人はこわい。
シルバに触られるのは何とも思わない。なのに…腕を取られて国王に抱き締められてこみあげてくる――。
「ああ、無事でよかった。俺のシオン」
耳元でささやかれるその声に血の気が引いていく。
「何カ月も…心配したんだよ」
知っているんだ。わたしを…