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プロローグ
――夢を見る
場所などわからない。
いるのは二人の男女だろうか
男が何事か言葉を紡ぐ。
女は嬉しそう笑う。
すぐ側にいるのに顔が見えない。
誰なのか知りたくてじっと視線を送る。
そして気付くのだ。
此方を向いているはずの女の顔が黒く染まっていることに
一瞬女と瞳があったような錯覚。
それは
侮蔑を含んでいる
汚いものを見るようなそんな瞳。
表情なんてわからないのに……。
そして男は気付かずに言葉を紡ぎ
視界が急激に霞む
――夢。
幾度も見る此れは何なのか。
唯の夢か。それとも私の記憶なのか。
確実に言えることは…。
この夢を見るといつも胸を締め付けられたかのように苦しいということ。
いいようのない恐怖。不安。負の感情に支配される。