第1章-2
ついに始まるワンマンツアー
大阪に着く頃には深夜2時になっていた。
大阪にくれば必ず実家に泊まることにしている。
ドアをあけると母が「おかえり」と迎えてくれた。
毎回帰ってくるたびに、母は好物を作って待ってくれている。
今日はクリームシチューが用意されていた。
ありがたく平らげて、風呂に入り、すぐベッドに入った。
とうとうツアーが始まる。
<俺のせいで売り切れなかったツアー初日>
漠然とした不安感。
もうほとんど自信を持てなくなっていた。
散々言われた「楽器は上手いんだけどなぁ」
そんな言葉が頭の中で回っている。
なんとか眠ることができ、翌朝。
バンドワゴンの中、
ヘッドフォンをして、窓の外を見ながらぼーっと揺られている。
「みんなはどんな気持ちで今を迎えているのだろう」と考えていた。
「リン、ジュン、ユキ、俺はどうしたら良いんだろうね。もうわかんなくなっちゃったよ。」
心の中でつぶやいた。
午後13時、会場に到着した。
このバンドが初めてお世話になり、今でも応援してくれているライブハウス。
どうしても今回のツアー初日はここが良かった。
収容人数は200人もいかない、K-POPアイドルがライブをするのは2万人の箱なので、
ざっくり1/100だ。
世間からみたらかなり小さい箱だろう。
しかし、チケットは売れ残っていた。
会場にはすでにスタッフが準備を進めており、
挨拶を済ませるとリハーサルの準備をした。
リハーサル中、「誰からも求められていない歌を歌っている」そう思うと吐き気がしてきた。
本番前、エンジンを組んで気合を入れる。
メンバーの顔をまともに見れないまま、ステージに上がった。
歌を歌うことは好きだ。生きているって感じがするから。
だけど、それだけじゃダメみたいだ。
初日を終え、ステージを降りたら
まだ世界は灰色のままだった。
2日目の名古屋で、手応えのないライブをした。
その結果また言い合いになってしまった。
そのあたりから、リンとジュンに元気がない。
それを見ているのも自分から出てくる言葉を俯瞰してしまうのも苦しい。
「俺は結構上手く歌えたと思ったんだけど」
—苦しい
「むしろもっとお前らが盛り上げないからだろ」
—苦しい
「は?もっと必死にライブやれよ」
—苦しい
水の中にずっといるみたいで息が苦しい。
本当は全て俺のせいだってことを理解している。
メンバーが気を遣って直接的な表現を避けていることも。
車は東京に帰ってきた。
結局まともに仲直り出来ないまま、
移動中ずっと考えていた。
「もうやめようと思っている。新しいボーカルを入れて売れて欲しい。」
喉から飛び出そうになるのを必死に抑えた。
気づいたら涙が流れていて、寝ているふりをして隠した。
家に着いたが時間は何時なんだろう。
体力も心も限界だったと思う。
まともに服も着替えることなく、気絶するようにソファーに倒れ込んだ。
読んでいただきありがとうございました♪




