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引きこもり吸血鬼の怠惰なる引退生活  作者: 雪菊


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清明の頼み


「だいたい、その妙な恰好はなんですか。はしたない」

「はし……!? 私だって好きで着ているわけでは」

「千明」



 なんというか、触れるのを避けてはいたのだが、ラウル的にこれはダメか。私も好みではないというか、年端も行かぬ娘がこういった服装をしているのは見るに忍びないという気持ちはあった。しかし、確実に隣の男の趣味なので黙っておいた。



「フェル坊も同じ感想かい?」

「うむ……。その謎に短いスカートとサイズの合っていない胸元はどうにかならんか? 乳房が零れそうだったり、足も隠せていなかったり、腹を隠す以外の利点がない服であると見受けられるが」



 私は清明にそう返すと残念そうに「洋館といえばメイドさんかなぁと僕なりに気を利かせたんだけどね」と言った。



「メイドならそこのオートマタで十分だ」

「なぜそのメイドロボはきっちり服を着ているんだい?」

「人形の魔女の好みだ」



 そう、私がデザインにこだわらなかった結果、うちの家事オートマタはマデリーンの趣味全開となっている。曰く、「人のお金で自分が作りたいデザインのお人形を作れるなんて、マデリーン感激! とびっきり可愛くして差し上げますね!」とのことである。



「そこのオートマタとうちの千明、何が違うって言うんだい?」

「露出度だな」



 本気で言っているのか、適当に言っているのかがわからない。どうでもいい会話だからよいのだが、これが交渉の場であれば大変面倒だ。



「いいじゃないか。せっかくこんなに素晴らしい身体を持っているのだから、見せねば失礼というものだろう?」

「年長者としては居たたまれない、という感情の方が先に出るが。そもそも、なぜ彼女が嫌うだろう私のところに連れてきたのだ」

「僕の所で保護している妖狐の子らだと、持て余すだろうしねぇ……。君はボロッカスに言ったみたいだけど、これでも千明は戦闘関連の成績は良くてね。修行先を見つけるのも一苦労なんだよ」



 眉根を下げる清明の顔を見ながら溜息を吐く。そんな事情で私を頼られてもこれっぽっちも嬉しくない。

 確かに私自身が強いし、アルテとラウルも小娘よりは強いだろう。



「しかし、未婚の娘を男の家に預けようとするのは正直、かなり信じられぬ蛮行だと思うが」

「……君、昔は魔王なんて呼ばれていたくせに、変なところが真面目だな」

「茶化すな」



 私が溜息を吐くと、「魔王の方がこんなにもまともなんて……」と千明が呟いていた。若干涙声であるところを見るに、無理やり連れて来られたのだろう。



「仕方がないだろう? この娘が正義感から君の所に突っ込んだのが事の発端とはいえ、差別思想の連中を排除されるきっかけを作ってしまったんだ。命を狙われているんだよ。生活能力も低く、思想の矯正もしなくてはいけないとなると、預けられる先はどうしても限られてくる」

「生活能力が低い」

「家事とか一切できない」

「フェリクスを、なんだと思ってるんですか」



 理由を聞いて、余計に腹立たしく感じたのだろう。ラウルが清明を睨んでいる。しかし、やつにとってはそんな視線も、殺気もそよ風のようなものだ。気にした様子もなく、ゆっくりと足を組んだ。



「無論、報酬は弾むよ。僕の家の不手際だ。しばらく働かなくてもいい程度のものは出そう」

「いや、資産がないわけではないことをお前も知っているだろう」

「暫く……そうだね。百年ほど、彼女からの依頼も全部僕が巻き取る、ということも含めての提案ならどうだ」

「それは……悪くない話だな」



 そうなると、しばらくは遠方に出向かなくて済む。ラウルやアルテは私が居なくてもまぁ、なんとかやっていくだろうが、やはり心配は心配だ。百年もあれば、ラウルも一人前になるだろう。あと、単純に遠征も絡む依頼は面倒なことが多い。それを押し付けられるのはかなりのメリットと言えよう。



「あの、私の意見は……?」

「千明。お前はそんな立場かい?」



 ……こうやって圧をかけて連れてきたのか。

 ほんの少しだけ可哀想に感じるな。相手があのジジイだから。



いつも読んでいただき、ありがとうございます。


〇マデリーン

 通称「人形使いの魔女」「人形の魔女」。金髪ゆるふわウェーブの美少女。見た目年齢は13、4歳くらいだが、50年は生きている。割と最近生まれた魔女。

 人形を作る、生物を人形に変化させる、人形に魂を入れることができる魔女。ドラクル邸の家事用オートマタ(メイドロボ的なやつ)を作ったのは彼女。

 趣味は人形作りと呪いの人形集め。特に可愛い系の呪いの人形(ガッツがあれば尚良い)が好き。

 彼女の隣にはいつも男女一対の人形が浮いている。その中身が何か、知り合いは察しているものの、真実を知るのは彼女だけである。

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