バレンタインデート
まさか清明のジジイに「もっと金を使え」と言われるとは思わず、溜息を吐く。
まぁ、うん。そのうち使うさ。
とりあえず、気分を切り替えようと、元々誘わねばならなかったヘスティアを連れ出すことにした。
「それにしても、日本のバレンタインデーはよいな。有名なショコラティエの監修したチョコレートも売られているし、種類も豊富だ。しばらく楽しめる」
「フェリクス様、あの……」
「ヘスティアも選ぶといい」
「いえ、あの」
ヘスティアは私の顔を見ると、意を決したように言った。
「今日って、デートなのですよね!?」
「そうだが」
そうでなければ、そもそも外になど出ない。菓子など取り寄せればいいのだ。
買い物というのもデートに含まれるものなのだと聞いたぞ。違うのか?
「なぜ、行く先々全てチョコレート売り場なのです」
「この時期ならではよな。美味だぞ」
そもそも、ヘスティアは私に何を期待していたのだ。贈り物は当然するが、先にあれこれすると気絶するのは誰だ。ディナーまで一応予約もしてあるが、そこまで耐えられるのかも疑問に思っているぞ。私は。
「そもそも、夜だけでもよかったのではないか?」
「一日フェリクス様を独占できるというのが約束のよい点ではありませんか」
それはよいことなのか? 私の時間など、割と空いているが。
ラウル関係以外は放り出しても微塵も罪悪感すら抱かんし。
「つまり、ジャージ姿の私と引きこもりゲームでもよかったという話か?」
「なぜそう極端なのです」
「ふむ……それでは、ああいうのがよいのか?」
女の好むものなどわからんが、こういった時期に合わせてやっているカップル向けイベントならば間違いないだろう。そう思ってプラネタリウムの展示を指さすと、ヘスティアの顔がパッと輝いた。
「そうです! こういうカップル向けイベントでいちゃつくのがよいのではありませんか!」
「しかし、最近のお前はすぐに鼻血や吐血で倒れるだろう。あまり私と近づかない方が良いと思うのだが……」
席の例を見ていると結構距離が近いぞ。本当に平気なのだろうな?
「平気でなくとも、フェリクス様と恋人らしいことができれば、ヘスティアは満足です♡」
「まぁ、恋人ではないが」
私の声が聞こえているのか、いないのか、さっさと行ってしまう彼女に溜息を吐く。
すぐに追いかけると、浮かれているのかエスカレーターにヒールを引っかけてバランスを崩したので、急いで抱き寄せた。
「全く……我々の時間は長いのだからそう焦ることもあるまい。怪我はないか?」
「……は、はいぃ♡」
「ならばいい」
意外と抜けているのだ。私も人のことを言えたものではないが。
ヘスティアがまた走り出さないよう、しっかりと腕の中に閉じ込めておく。
……おい、これくらいで気絶しているのではなかろうな。
してる。
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