あまり美味しくない
「ジークさんが人殺すのって珍しいですね」
「そうでもありませんよ? フェリクス様と姉さんの敵対者は大体殺してきましたし」
息子たちのそんな会話を聞きつつ、私は薬を飲んでいた。普通に足りない気がしてきた。仕方ない。後で通販しておいた血でも一気飲みするか……。大抵不味いのだが。
オートマタにそれを注文して待っていると、ジークに「美味しそうな血の方でもいたのですか?」と問われる。
「だったら申し訳ございません。私が全て飲み干してしまって……」
「いや、最近薬しか飲んでいなかったから飢えがきていたのだろう」
偽血錠は成分的に私たちの身体を支えてくれるが、やはり本当の血とは違うのだろうな。たまにこうなる。血を側に感じた時には特にだな。
血、というよりは死かもしれん。
「そういえば、フェリクス様は『不味い』と言ってあまり血を飲んでいませんからね」
「まぁ、確かに肉の方が美味いと思うけど」
「美味しいものではありませんからねぇ……」
ジークからしてもやはり血など美味しいものではないのだな。私という吸血鬼の親の性質が受け継がれたのかもしれんが。
「そろそろ、外にも出れそうですし、口直しの肉でも狩ってきましょうか?」
「いや、まだダメだ。出るべきではない。阿呆な人間と遭遇したらたぶん、即座に殺してしまうだろう」
「阿呆なら俺が殺さなくてもそのうち死ぬんじゃないですか?」
それはそうだがな?
あの三人組など最たる例だ。こんなところまで襲撃に来なければ、今頃まだ呑気に寝ていられただろうに。
「姉さんが居たら、もっと苛烈に殺したのでしょうけど」
「ヘスティアにも世話になっているな。礼はデートでいい、などとよくわからぬことを言っていたが」
どこに行くべきだろうか。
私は基本的に引きこもりなのだ。家の中が好きで好きで仕方がない。特に自室。
私は部屋で本を読んだりゲームができればそれでいいというのに、皆、理由をつけて外に連れ出すのだ。
魔王をやっていた時代でさえ、私は外に出るのが億劫で仕方がなかった。
「フェリクスは根っからのおうち大好き吸血鬼だからな」
「そう。外界に詳しくない」
興味もあまりない。
お取り寄せグルメには興味があるが。
「どうしてこんなに面白みのない人間に求婚ができるのだろうな?」
「フェリクス様はかなり面白い方だと思いますけど」
ジークがそういうが、どこがなのかわからない。自分ではそういうものなのかもしれないな。
そんなことを考えていると、オートマタが血の入ったグラスを持ってきた。
それを受け取ると、久しぶりに濃い血の臭いがした。
「……薬だと思って、飲むか」
昔はもう少し美味いと思って飲んでいたのだがなぁ。
年を重ねると、味覚が変わるというから仕方がないのかもしれぬな。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
通販で出回っている吸血種用の血は、支援者たちが提供している。
もう少しありがたがれフェリクス。人間がそう思っても仕方がないが、長期保存するための処理をされているため仕方がないのである。
ちなみに、人に輸血するには少し古い血が使われているのも不味い理由の一つである。




