憂鬱ラウル
「殺してください。一思いに」
「息子を殺す親があるか」
「それはあるでしょう」
元の姿に『は』戻ったラウルが項垂れている。もう、本当に死にそうな顔だ。
私に息子を殺す気はないが、親が子どもを殺すということはままある話だったか。ラウルのツッコミを聞きながらそう思うものの、私がラウルに殺されることはあっても、逆は生涯をかけてないつもりでいる。
ステーキをひっくり返しつつ、皿の確認をする。野菜はこれくらいあればよいか?
「ああ、どうして今回の俺は……」
「たまにはよかろう。そら、肉でも食って落ち着け」
「あんた、おれがにくにつられてよろこぶガキだとおもってやしませんか」
「思っているが」
まだ少しばかり気分の上下が激しい息子を宥めつつ、私も食事を始める。
しかし、本当にこうやって二人きりなのは珍しいものだ。今回はアルテも「アルテ、豆太とゲームしながら待ってるね」と言って向こうに行ってしまったからな。
「アンタにとっちゃ、俺はいつまで経ってもガキなんでしょうけど」
「我が子だからな。仕方あるまい」
「襲撃者の子でも?」
「生まれた胎のことなど、忘れてしまえ。向こうも忘れている」
情緒不安定なラウルを見ていると、普段も若干の不安があるのだろうな。こればかりは仕方あるまい。一生付きまとうものだろう。あとは、私の周りが自分をどう思って見ているのかも知っているのだろうな。まぁ、一部には『魔王を殺した』などとも言われているようだし。
そもそも、私はラウルを引き取る時にはすでに魔王をやめておったのだが。誰だ? そんな阿呆なことを言い出したやつは。
「うまい」
「そうか」
「父さんの飯が一番好き」
「それは腕の振るい甲斐があるというものだ」
そういうことは普段からもっと言ってもいいのだぞ? その『父さん』という呼び方もな。
私の実子でないと知ってから呼び方を変えたが、やはり寂しいものだ。小さい時のアルバムを見る度に思い出す。
まぁ、こういう時にそう呼んでくれるということは、私は今でもラウルの『父』であるということだろう。
それを知ることができるだけでも、世話をする甲斐があるというものなのだが、どうにも理解されにくい。
今はまだ、人の姿に戻りたてで本能と呼ぶものが強いのか、腹を満たすとラウルは寝てしまう。
「いくつになっても可愛いものだ」
自分がそう思える親になったことに、少しばかり驚きがある。しかし、私の周囲は元々そうだろうと呆れた顔をするのだ。
いやはや、自分のことは自分ではわからぬのかもしれんな。
そんなことを考えていると、侵入者が罠にはまったという警告音がなる。
監視カメラを向けると、私がSランク昇格試験で落とした三人組だった。ああ、私がせっかく忠告をしてやったというのにそれを無視したのか。
「フェリクス様」
「殺していい」
「かしこまりました」
ジークが笑顔で礼を取る。
弾む足取りを見ていると、苦笑が漏れる。
まぁ、気持ちはわかるぞ。私も、お前やラウルに何か言ってくるやつらは基本殺してしまった方が世のためだと思うからな。
少しだけ漂ってくる血の臭いはあまり美味そうではない。だが、自分の本能がどこにあるかを思い出すには十分だった。
……私も、しばらくは外出しない方がいいかもしれぬな。
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