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引きこもり吸血鬼の怠惰なる引退生活  作者: 雪菊


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人狼ラウル


家に戻ると、赤い狼が飛びついてきた。

 これが、ラウルである。


 ここ数年は二本足で立っていたはずだが、この姿になるのは小学生の時ぶりなのではないか? 元気なようだったが、体調でも悪かったのだろうか?

 この私が気づかないとは、隠すのが上手くなったな。あまり褒められたことではないが、まぁ……ある種、成長過程としては間違っているとはいえないだろう。将来的に、人に隙を見せすぎるのもよくないしな。

 我々のような存在は、少し体調が悪いという素振りを見せると、「討伐するチャンス」だと思われてしまうことがある。寝込むほどでないときは大抵皆殺しにしてしまうものだが。体調が悪くて機嫌も悪い時というのはな、加減が難しいのだ。



「おかえりなさいませ、フェリクス様」

「留守番をありがとう、ジーク」



 奥から出てきて、頭を下げるジーク。本当に姿勢が美しいな。確か昔、我が家に仕える執事に習っていたのだったか。

懐かしいな。あの執事、今はどこにいるのだろうな? 悪魔だったから、聖系種族に滅されていない限りは私と同様に生きていると思うが。

 魔王引退の際に別れたが、「フェリクス様が本当にお困りの際はどこにいたとしてもかけつけます」なんて言っていたが、その後音沙汰がない。お困りの際ではなく、たまにフラッときても良いと思うのだが。



「それにしても、ラウルくん……妙に甘えん坊ですね」

「昔を思い出すな」



 これはおそらく、姿が戻った後にしばらく無視されるやつだな。無視というか恥ずかしくて穴があったら入りたい状態の死んだ顔で生活しているというか。

 私が割と、憂鬱になるやつだ。



「まぁ、この状態であるうちは外に出たりしないからよいか」



 後に残るラウルの精神的ダメージは大きいだろうが。



「これを見ていると、同居人が増えてラウルくんが我慢していたんだなということがわかりますね」

「……ジーク。記憶は、はっきり残るんだ。あまり言ってやるな」

「それは、はい。可哀そうに……」



 今物凄く本心からそう言っただろう。お前。

 まぁ、私も記憶がなくなっていればいいのになと思ったことはある。思春期の子どもにこれは残酷な仕打ちに他ならないだろう。

 それはそれとして頭も腹も撫でるし、ブラッシングもするが。



「そこまでわかっていて……」



 大きくなった息子というのは、本当にかかわりがないのだ。これくらいよかろう。ほら、喜んでいるではないか。

 私とは違って、食事のこと以外は妙にクールに育ってしまったからな。自立心が高いのはいいことだが。



「それはそれとして、ラウルくんは卒業後、この体質をどうするのですか?」

「まだ狼化を止める手段が開発されておらんからな。まぁ、ここで今まで通りに暮らしてもよい。親の力を頼ることができるのは子の特権だ」



 狼状態のラウルを転がしながらそう言っておく。

 こういうことを話すと子煩悩だの甘いだの言われることがあるが、それがどうした。大体、対策をするにも利用できる手段が限られているのだぞ。放り出す方が無責任というものだろう。

 ラウルのことを思うと、早く薬ができればいいとは思うが。そのために寄付もしているが。

 やはり、制御できるのとできないのとでは、自由度が変わってくるからな。自分の道を選ぶためにも手段が多い方がいい。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


ラウルは元に戻ったあと、大体頭抱えて「忘れてください!!!!!!!!」ってなっとる。

今回もなる。

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