隔離と避難
「それで、ラウルちゃんの武器に使う素材って何かしら?」
マデリーンにワクワクした顔でそう問われたが、面倒になりそうなので「秘密だ」と言っておいた。
ついて来られたりするとややこしい。手間がかかる。
「それよりも、今日のお前の寝床はホテルを取ってやっただろう。どこまでついてくる気だ」
「それも納得がいっていません。どうしてマデリーンが工房を離れなくっちゃならないのですか」
「なぜって……。今日が特別な月だからだが」
忘れているようだが、ラウルは『人狼』だぞ。
神秘の薄れた現代の月では満月であっても変身しないことの方が多くなってきた。しかし、それでも変わる時もあるようだ。私は魔力の膨張度などで把握しているが、厄介なことに当人は自覚が薄いらしい。
「別に食われて糧にされたいならば話は別だが」
「だって、フェリクス様は一緒じゃありませんか」
「種族的に問題がないからな」
むしろ、外に出ないように見張る者が必要だ。それができるからあれの実父は私の所にラウルを連れてきたのだからな。
今晩から数日は危険だから、小娘や豆太もすでに避難させている。
学校から微妙に遠いところなので、一応期間限定でスクールバスに乗ることができるように申請はしておいた。ダメだったらタクシーを使えばいいと思って頼んだのだが、問題なく申請が通ったので安心した。小娘たちが。
「学校にタクシーは、ない、です」
小娘にそう言われたのだが、友人に引かれるとかそういった理由だろうな。だが、事情があるのでどうにもならんからな。もし申請が通らなかった時はやらせた。
そこまでやっているというのに、マデリーンのわがままが通るはずもなかろう。
「なぜ工房を離れないといけないのか、と問われれば、危ないからだ。食われるか同じく人狼になりたいなら止めんが、魔女としての能力がどうなるかまでは保証できんぞ。そもそも我が家に勝手に工房を作ったお前が悪いとしか言えぬ」
「それは、そのぉ……マデリーンが悪かったです」
そうだな?
むしろ、ホテルを取って、それなりの部屋を用意してやった私に感謝すべきだろう。
「帰って来られるようになったら連絡は入れてやる。お前たちだけだと不安だからな。ヘスティアに世話を頼んでおいた。頼るといい」
「それはちょっぴり素敵!」
嬉しそうにしているマデリーンは弾む足取りでホテルへと向かった。
ちなみに、私の心は全然弾まない。今回助けてもらうために、私は彼女とデートの約束をさせられた。まぁ、そのくらい全然構わんのだが、ヘスティアが最近、私と関わる度に気絶、フリーズ、鼻血を出すなどしているのが少しばかり憂鬱だ。結婚したいとまで言うのなら、もう少しばかり私に対する抗体をつけた方がいい。……いや、抗体をつけたいならば良い機会なのか?
さて、私もさっさと帰らなくてはな。ラウルが待っておるし……待っているか?
「まぁ、まだ自我は残っていると思うが」
念のために、ジークに見ていてもらっている。
まぁ、昔の人狼のように満月の度に狼や狼男の姿にならなくていいのはラウルにとってはよかっただろう。普段はどうでも、その『一日』で恐れられ、狩られた者は少なくない。
ラウル自身が私から離れれば、将来的にどうなるかわからんが……願わくば平穏に生きてほしいというのは親として仕方のない話だろう。
そう言うと、「実子じゃないだろう」と言う連中がたまにいるのだが、あれは何なのだ?
まぁ、食糧の手配はしてあるし、万が一を考えて色々買い込んでもいる。これで大抵の出来事は平気だろう。
問題は登校が難しい間の勉強だが……これは、うむ。本人に頑張ってもらうしかあるまい。
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