ヴェルグへの依頼
空条は一戦してやったらホクホク顔で帰って行った。
「また遊びましょうね、吸血鬼殿!」なんて言っていたが、私としてはもういい。半端に強い相手と戦うと、弱い相手と戦うよりも加減が難しいからな。……あれは強くなるだろうな。聖悟が見どころのある人材と言っていたのはあの娘の方であったらしいが、私としては空条の方が面白い。
それはともかくとして、素材である。
協会で受け取ったそれをすぐにヴェルグの所へ持ち込んだ。奥方から間違いなく本物だという証明書を出してもらい、そのままアルテの武器に加工してもらう
手続きを頼んだ。
「よくクリスタルゴーレムの結晶石なんぞ手に入ったな。やっぱり、権力者と仲良くしとるといいこともあるんか」
「面倒も多いがな」
むしろ、面倒の方が多い気がする。最近は特に。
「フェリクスが無駄に世話焼きなんがわかっとるからかもしれんな」
「無駄とはなんだ」
「普通は襲撃して来た高ランクハンターの子どもなんぞ育てん」
それを言われると黙るしかない。
まぁ、ラウルを育てていることに後悔など一つもないが。
「あとはあの嬢ちゃんの矯正もか。普通そこまでせん」
呆れたような視線が刺さる。
そんなことを言われても、手を出してしまったものは仕方がないのではないか?
「それより前となると、業火や人形、星読みの面倒も見ておったな。戦いをしかけてきた人間の間では黄金の魔王は悪名高き存在であったかもしれんが、ワシらの間じゃあ善き魔王だったよ」
「おだてるな」
懐かしそうに言われても、もう引退済みだ。それに、もう絶対戻りたくない。
魔王は、忙しすぎる。
あれは一つの国の王というのが近い考え方なのだ。私は割と真っ当にやっていた方だろう。他所のことまでは知らんが。
「まぁ、十分に頑張っただろう?」
「……そりゃあそうだ」
そんなことを言っていると、マデリーンが奥方との話を終えたらしい。「ちゃんと、少しは残るようにしてね! お願いですよ!」とマデリーンがヴェルグの近くにやってきた。
「そりゃあ、やってみんとわかんねぇな」
マデリーンが少し泣きそうな顔になっているが、こればかりはな。
優先はアルテだ。なくなったら諦めてほしいところだ。
「そういや、ラウル坊の分はええんか?」
「構わん。次の素材に目星はつけてある」
「ほう。そりゃあ、ワシも楽しみにせんとな! がはは!」
あれは確か近場でダンジョンがあったはずだから自分で行くのが手っ取り早いだろう。これが出来上がった後に、アルテとでも行くか。散歩のようなものだし。
「加工なんかも合わせてこんくれぇかかるぞ」
「わかった」
出された金額は大きかったが、技術料だ。そこをケチるつもりはない。専門になっている職業には、その値段を提示するだけの理由があるものだ。特に、ヴェルグはそうだと感じている。機械では解決できんややこしい問題も、まだ多い。自分ができんことには素直に金を払った方がいいこともある。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
専門職が専門職なのにはやっぱり理由があるよなぁと思う今日この頃。
確定申告の時期ですね……。




