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引きこもり吸血鬼の怠惰なる引退生活  作者: 雪菊


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Sランク昇格試験試験官6


「良く連携が取れているな。態度はよろしくないが、三人セットならば悪くない」

「個々の評価は?」

「A級の中でもそこまで強い方ではないだろう。これならば、A級で活動していた方がよいと思うが」



 それよりも、あの欠伸をしていた男の方。なかなかによい。あれはもしかすると、少し手をかければSSランクにも届くのではないか?

 女の方は……決め手に欠けるのが惜しいな。技術やスピードは素晴らしいが、残念なことに力が少しばかり弱い。小娘のように内にある力を駆使して瞬間的に力を増す芸当ができればよいのだろうが。



「……腕の一つも落とせるならば考えてもよいが」



 そうボヤくと、隣で聖悟が苦笑していた。

 確かにそれなりには見どころがあるが、正直なことを言えば、よくA級の試験に通ったな、とすら思うぞ。



「ですが、彼女の誘導で皆が戦い易くなっているのは確かでしょう」

「この娘はソロだろう。一人でS級に許される高難易度ダンジョンに入れる状況下を作るのはよくない。いっそのこと、アタッカーでなければよかったのかもしれんが……」



 それを、これだけ技術を突き詰めた者に言うのは酷かもしれぬな。


 そんなことを思いながら、ミノタウロスの首が飛ぶのを見つめていた。



「今回は一人だな」



 他の昇格はまだ早いだろう。

 あの男に関してのみ言えば、一人でもミノタウロスを倒せただろう。にもかかわらず、周囲に見せ場を作ってやる余裕もあった。こいつは昇格させるべきだ。


 ミノタウロスの死が確認されると同時に結界が外れ、例の三人組が攻撃を仕掛けてきた。

 それを周囲に飛んだ血を操って縫い留める。この程度だからダメなのだ。



「よし。今回の昇格試験だが……」

「いや、そのままでいいんか?」

「よい」



 どうせ不合格だ。



「昇格は一人」



 その言葉に全員が息を呑んだ。

 そこまで驚くほどのことでもないだろう。過去には全員落としたこともあるぞ。



「他はとりあえずA級残留だな。まずこの三匹は残留だ。残念ながら、連携の取れた動きには多少評価できる。あとは軽率な行動を慎み、相手との能力差を計る力を養うことだな。今回は私が『試験官』で貴様等が『受験者』であったからこの程度で済ませたが、普通に襲い掛かって来られたら次は殺すぞ。成人ならば、やったことへの後始末はせねばならん」



 もう少し弱ければB級に落とすまで考えたが、残念ながらA級相当ではある。そこまで強くはないが、ランクを落とすまでではない。本当に残念である。



「次に、三雲(みくも)美紅(みく)

「はい」



 黒髪の少女が緊張した面持ちで返事をした。薙刀を握る手が震えているのは悔しさからだろう。



「一応聞いておくが、身体強化及び、武器の強化魔術等の手段は所持しているか?」

「いえ。わたくしの武道に必要なものではありませんでしたので」

「そうか。三雲の場合は決定力不足だ。ソロのハンターで、このままの能力では昇格させることはできぬ。パーティを組んで自身の足りぬ部分を補うか、何らかの手段で自身でSランク以上に許されるダンジョンの魔物を狩れる程度の力を得ることができなければ死ぬぞ。私は昇格を認められない」



 そう言うと、彼女はやはり悔しそうに下を向いた。

 最後に、男を見る。



空条(くうじょう)(つかさ)。お前は合格だ」

「ええ……俺には総評ないんですか?」

「必要か? 空条は十二分に強いだろう。怪我に気をつけつつ、上を目指すといい」



 特に言うべきことはないな。これだけできるならば、よい師がついているか、我流で強い人間なのだろう。立ち回りを見ても余裕がありそうだったからな。

 これで仕事も果たしたし、後は食事でもして帰るか。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


○三雲美紅

 黒髪ロングヘア―をポニーテールにした凛とした雰囲気の美人。20歳。

 フェリクス曰く、確かな技術と素早さを持つが力が足りない惜しい子。

 フェリクスの問に関する能力を持っていればワンチャン合格できていた。

 落ちたとはいえ、今後が楽しみな逸材であることに変わりはない。

 聖悟とは幼馴染である。

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