Sランク昇格試験試験官2
筆記試験の監督を終えたが、やはり基準点を越えてくる者は少ないな……。
別に、カンニングをしようがしまいがなんでもいいのだが、バレるようではいけない。不正なんてものは、バレずにやってこそのものだ。
「ということで、このあたりは落としてよいな」
「いいです!」
「……ああ、こういう人だったな、ドラクル様」
他にも数名、不正をやっていた者はいたが、最低限の基準は達していたのでまぁよいだろう。ちなみに最低限の基準というのは私の目に映らないことだ。どこぞの小娘の推しは余裕そうな顔で堂々とやっていたので落とした。私にとっては、有権者など別段恐ろしいものではないからな。第六天に喧嘩を売る方が嫌だな。勝てないことはないが、この国に居づらくなる。ラウルの学校のことなどを考えると都合が悪い。
「一応、こちらのお兄さんを落とすと面倒なのが押し掛けてくる可能性がありますが」
「その女、成人済みなのだろう? 私は子どもにはある程度忖度するし、場合によっては保護もするが、成人なら返り討ちにするぞ」
「いいと思います!」
「確かに、いい薬になるかもしれないな……」
よほど迷惑な女であるのに、親の権力で対処できないことも多かったらしい。そういうところから組織は悪くなるのではないか?
「……想定以上に人数が減っているな」
「基礎点が足りていない者も落としている」
ダンジョンにおける基礎知識もないのに対処なんてできんだろう? わからんやつは上に上がらんでいい。もう少し働きながら勉強しろ。
「妥当だな。というか、今回は特別レベルが低いのか……?」
ハンター協会の職員である篝という名の男の顔が暗い。こんな時代だからな。緊急事態を解決できる人員は多い方がいいだろう。京都の案件はかなり大変であったと聞く。時折、厄介なダンジョンが生まれることは人がどうこうできる問題ではない。
だが、ランクだけ上がればいいという問題でもないからな。
「ランクが上がっても、あまりいいことはないんですけどね……」
「面倒な任務を強制でやらされるしな」
「命の危険があるダンジョンへ行くのはリターンが大きいのは確かですが、それ以上にリスキーですしね」
聖悟の言葉に肯いていると、篝は苦笑した。
その『リターン』に夢を見て、人々はダンジョンに挑戦するのだからな。我々のようなものがリターンを喜ぶよりも、リスクに眉を顰めているのは頭の痛い話かもしれない。
「皆、リスクの方を甘く見過ぎなのです。だから、僕の同期は、僕以外ダンジョンで死んだというのに」
聖悟の言葉は重い。
聖悟は「協調性が少しもない人たちだったので、仕方がないとは思いますが……」と言っていたが、その命が絶たれたことに関しては悲しんでいたのだろう。
「それを思えば、落としてあげるのも親切かと。家族や友人がおらず、自殺がしたいならば話は別かもしれませんが」
それはそれで、何らかの保護が必要な存在なのではないか?
まぁ、ハンターなんてやっていれば多かれ少なかれ死を目の当たりにするからな。考え方も変わっていくだろう。
「それでは、実技試験に進むことができるのは五名でいいですか?」
「ああ、それでいい」
合格者を掲示板に張り出すために篝が出て行ったのを見送り、数分後。
派手な女が突撃して来たので、窓から放り投げておいた。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
○三谷聖悟
日本において十五名しかいないSSランクハンターの一人。重騎士。
共にSランク昇格試験を受けた同期四名が、ダンジョンで死亡している。当時はそれなりに悲しんだ。
重い騎士の装備を身に着け始めた理由は「顔を見られるのが恥ずかしいから」。本人はそう言っているが、中身の顔はかなりの美形。
一度、Sランク昇格試験を落ちた後、フェリクスに少しの間師事する。
現在二十四歳。フェリクスにそれとなく、「眷属にしてもらえませんか?」と伝えている。毎回断られ、「人間としての人生を生きるべきだ」と説得を受けている。




