裏の家完成
年が明けて一週間ほどしたころ、太郎の家が完成した。
異能を持つ者が増えた世の中では、昔より随分と仕事が早くなった気がするな。
「いやー、この年齢でマイホームを持てるなんて、流石に思っていませんでした!」
太郎はそう言っているが、ラウルは「ハンターなんて仕事がある今、太郎さんほど強い人ならこれくらい、普通なんじゃないスか?」と言っている。
まぁ、その通りではある。
才能のある者たちはダンジョンの探索や、危険な魔物の退治。珍しい素材の採取などで若くして大きな財を得ることができる。一方で、危険な職業でもあるからな。現役で稼げる時間は人間という種族に近ければ近いほど短い。あとはケガや病気などでも身持ちを崩す者は多いな。
「家を建てるってのは、結構覚悟がいるものだよ。俺は『宵越しの金は持たない』っていうタイプじゃないんで。ローンとかも考えると、胃が痛くなりますねぇ!!」
思いきり「HAHAHA!!」と笑う太郎は少し疲れているように見える。
「魔王殿に扱き使われている間は、金には困らないけどね」
「ああ、それで」
日本を根城にしている第六天魔王を名乗る織田信長という人物。
彼、と言ってよいか彼女と言うべきかはわからんが、あれは金払いだけは保証できる。本当に厄介な依頼が多いのが難点ではあるが。それでも、各々の実力を分析して各地に派遣しているだけマシか。魔王を名乗る中にも、第六天など比べ物にならないレベルで厄介な者もいるからな。
「太郎の場合は、各方面に喧嘩を売りながらランクを上げたから、助けてくれる存在が少ないのが難点だな」
「ええ……。フェリクスって確か、可能な限り根回しをして敵を減らして活動しろとか言ってませんでした?」
「言ったぞ」
「そうでしたか?」
私はハンターとして活動を始める者にはきちんと言っている。私だけであれば、私に逆らうものを血祭りにあげればいいだけの話なのだが、生活というものは自分一人で成り立っているわけではない。特に、子どもを育てていたからな。自分が恨みを買ってラウルに何かあれば、後悔することになるのは私だ。
自分のやったことがストレートに自分にだけ返ってくる世界ではないからな。言うことを聞くかどうかは別として、一応はしっかりそういう話はしている。
「本音では『お前が弱いのが悪いのでは?』と思っても、能力だけでうまくいくほどよくできた世界ではないからな」
「弱肉強食を『よくできた世界』とかいうの、ドラクルさんくらいでは……?」
「僕もそう思います」
小娘たちの言葉にそっと目線を逸らす。
仕方がないだろう。昔はそういったものだったし、私にとってはそれが楽だったのだから。
「そういう道を外れた以上、あのわがままに付き合うしかないってことですね……」
「ちなみに、アレ相手にやらかすと、今度こそ本気で日本に住めなくなるぞ」
「おっかないなー」
よりにもよってハンター協会でやらかすから悪い。正直に言うと、太郎にしてやられるような阿呆も悪いと思うのだが。弱いのにランクだけが上がってもろくなことがないぞ。面倒でややこしく、強い敵と戦う羽目になるし、色んな招集を受けることになる。実力を伴わない人間がそうなっても、よくて大怪我、悪ければ死ぬだけだ。
「そういえば、もうすぐまた昇格試験がありますね。試験官とかはなさらないのですか?」
「しない」
ハンター協会にもきちんと言ってある。
私は実力に関して忖度ができぬから呼ぶなと。
一度、仕方なく引き受けて全員落とした後、呼ばれなくもなった。人間らが決めたランクのダンジョンで生き残れるかどうかで判断してやったというのに!
今でも納得がいっていない。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
当時試験官としてフェリクスを呼んだ方々
「まさか本当に全員落とす!?」
数か月後、他の試験官がその内の何名かを通過させたものの、フェリクスに落とされた理由を聞きに来た一人以外はダンジョン内で死んだ。




