お隣さんと新年
初詣だけは豆太の引率があるので一緒に行ったが、その他の行事は全て自主性を重んじて子どもたちに任せた。
好きにしろ。私には興味がない。
まぁ、正月の行事で唯一まぁ楽しいと言えるのはお年玉くらいか。普段なら渡すと怒られる程度の金額を受け取らせることのできるよい機会だ。まぁ、それでもやり過ぎると口をきいてもらえなくなるので、ある程度に留めなくてはならないが。
「……しかし、もう私は子どもといえる年齢ではないのですが」
「私と比べればそんなものだろう」
ジークに連絡を取って隣の家に赴き、「明けましておめでとう。ほら、お年玉だ」と言って、それを渡すとかなり複雑そうな顔をされた。マデリーンなど、「わーい! ちょっといいデザートを頼めるわ!」などと言ってはしゃいでいたが。
「まぁ、私が受け取って、フェリクス様が満足なさるのであればもらっておきましょうか」
にっこりと笑ってそう言うジークの後ろにヘスティアがいた。赤い振袖がよく似合っている。なぜか、ソワソワしており、話している我々を少し遠くから見ている。
「……ところで、ヘスティアは何をしているんだ?」
「クリスマス以降、ずっとあの感じです」
「相変わらず、妙な女だな」
そもそも、私に結婚を迫ってきていたのに、少し贈り物をしただけでこれだからな。これでは、いつになっても結婚など夢のまた夢だな。本当はそんなつもりなどないのかもしれんが。私は本人ではないので確かめようがない。
「……姉はピュアなのです」
「そうだな」
だが、男女の関係などそれだけでは成り立たんぞ。
「ラウルが成人するまでに、もう少しマシになっていればよいがな」
私がそう言うと、ヘスティアは急に目の前に現れた。逃げられないようにだろうか。両手を思いきり掴まれている。なんだ、この女。本当に行動が読めない。
「あの子が成人したら何かありますの!?」
「なんだ。お前は私と結婚したいのではなかったか? とりあえずは交際からだが、考えなくはない」
「はわ……はわわ……」
「本当に大丈夫か? ヘスティアは」
「大丈夫ではないかもしれませんね」
解放された手を彼女の目の前で振るが、「交際……結婚……」と呟くばかりで反応がない。ジークはジト目で私を見ている。
「そういうことを言うと、姉さんは明日には婚姻届けを持ってくると思いませんか?」
「しかし、言っておかないと納得もせんだろう。あと、以前から思っていたが、こういうものは結婚からではなく、恋人から始めるものではないか?」
「……そうですね」
私がそんなことを話していると、「結婚から始まる関係もありますわ!」というヘスティアの反論が返ってきた。
まぁ、確かに長年の知り合いではあるが、友人としての相性と家族としての相性というものは違うだろう。少しばかり、共に生きる者としてのすり合わせの期間というものは必要ではないかと思う。我々は長命種だしな。
「気概があるようで何より。とりあえずは私に慣れることだな」
そう言ってヘスティアの頭を撫で、私は立ち去った。
ラウルの卒業まであと二年はあるからな。のんびりやればいいだろう。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。




