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引きこもり吸血鬼の怠惰なる引退生活  作者: 雪菊


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年末は忙しいもの


 甘い匂いに釣られて、小娘とマデリーンがちょくちょく顔を出す。

 栗きんとんの味見を本気で求めているようだ。



「黒豆煮を作っている時もソワソワしていたが……」



 黒豆煮なんて、次は自宅で作らない。絶対にだ。

 何だ、あの時間がかかる料理は。作るのに三日かかった。割とうまく作ることができたので少しずつ味見をさせた後からこうやってうろつくようになった。お前たちはもう少し豆太を見習え。

 溜息を吐いて、鍋に目を落とす。砂糖が完全に溶けたのか随分となめらかになった。仕上げに栗の甘露煮を加えて混ぜながら加熱する。それからそれをバットに取り出す。



「あとは冷ませば完成か」



 これでおおよそのものは完成したか。

 つまみ食いをしようとするマデリーンの頭を軽く叩いて、外に出す。油断も隙もない。



「一応、正月用だからな」



 だからさすがにこれは出せないが、他の甘い物でも出してやれば少しくらいは満足をするか。こんなに手のかかるものを食いつくされたらいくら私でもキレる自信があるぞ。来年も小娘たちがいるのなら、そこそこよい店でおせちを買おう。そうしよう。今年はなんとか乗り切ったが、来年の私が頑張ってこれを作ることができるという自信がない。



「とりあえず……うむ。これでいいか」



 通販で買ったバターサンドでもやっておくか。たまにリピートしているものだから、私は好きだが、やつらが好きかどうかは知らん。


 用意をして扉を開けるとマデリーンがしょんぼりした顔で立っていた。



「ちょうどよかった。マデリーン。これはお前の分だ」

「……怒っていないの?」

「やる前だったからな。あれをつまみ食いすれば本気で怒るぞ」



 おやつを渡してやれば嬉しそうな顔で「マデリーン、こんなおしゃれなお菓子は久しぶり!」と言って戻って行った。



「エマ、これは小娘と豆太の分だ」

「かしこまりました。ラウル様のものはよいのですか?」

「あいつは直接私の所に来る」



 ラウルには足りないだろうな。だが、そう言って増えるものではないし夕食で調整してもらうとしよう。



「さて、それまで片付けでもしながら待っているか」



 料理は作っておしまいではないのが面倒よな。たまにはよいが。

 エマが去って行くのを見送って鍋などを洗っていく。

 片付け終わる頃にラウルが顔を出しに来た。



「鍛錬は終わったようだな。そこにおやつを用意しておいたぞ」

「これ、フェリクスのお取り寄せスイーツじゃないですか? いいのか?」

「たまにはな。これよりも黒豆煮や栗きんとんに手を出される方がキレるかもしれん」

「……ああ。手間かかってるもんな」



 理解してくれているようで何よりだ。

 私も身内の血はみたくない。



「でも、よくあんなめんどくせぇもん作ろうと思ったな」

「たまにはな。家事用オートマタが対応していないのは想定外だった」



 マデリーンに拒否されたからな。もしかしたら、エマならば一度やらせれば覚えるかもしれないがな。あれは成長する個体らしいから。

 何はともあれ、もう明日には年末だ。掃除はオートマタがやってくれているし、やり残しはないだろう。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

フェリクスはこのままラウルとプチお茶会すると思う。

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