求:仕事
「げ。祖」
「げそ?」
帰宅した小娘と豆太が酔いつぶれて寝ている清明のジジイを見つけたようだ。豆太は「イカはいませんよ?」と言っている。意味が通っていない。
「おかえり」
「ただいま。ドラクルさん、なんで祖がいるんですか?」
「何か……もてなせと言いながら急にやってきた」
仕事が大変だったのは確かだろうが、それにしたってわざわざ私の所に来ずともよかったのに。都合のいい女の子とやらがたくさんいると言っているこの男が酒だけを目当てで来るものか? 案外、小娘の様子を心配して……それはないな。こいつ、私が言うのも少しあれだが、コイツは結構人の心がない。
「ドラクルさんが優しいからって……」
喧嘩をするのが面倒で放置しているだけだが……。ヘスティアも以前同じことを言っていたな。私が甘いのか……? コイツと仲間になるのは嫌だが、協力する体制は作っておいて損はない。
「それより、チーズケーキが冷蔵庫にあるぞ。宿題を終えた後におやつとして食べるといい」
「「ありがとうございます!」」
嬉しそうにリビングへ向かう子どもたちを見送って、溜息を吐く。
この、どうしようもない酔っ払い。どこに捨てようか。
「迎えを依頼して、厄介な人間が来ても面倒だしな」
そう言うと「そんなあなたに!」という声と共に窓が開いた。
「俺、報酬出してくれたらタクシーできますよ!」
「それより、何をやってるんだ? 太郎」
換気のために少しだけ窓は開けていたが、そこから身を乗り出しているのをみるとそうとしか言えない。
「仕事もらえないかと思って、先生に会いに来ました!! いやぁ、流石ドラクル先生の知り合い! かなり腕はいいが金がかかる。貯金が本当にヤバいんですけどどうしたら」
「働けばよかろう」
「それはそう」
というか、腕に見合った金は渡すべきものだろうが。
それはそれとして、なぜ仕事を私から紹介してもらうような事態になっているんだ。目の前のSランクは。
「働こうにも、今俺に頼むような仕事はないって言われてしまって……」
「確かに、Sランクを動かすような仕事がそんなにたくさんあってたまるかという話ではあるのだが、それならダンジョン平定作業でもしていけばいいのではないか?」
世界中飛び回れば平定待ちダンジョンなどいくらでもある。
「前にそうやったところ、俺よりも下のランクの連中に『俺たちの生活はどうでもいいのか』とキレられまして……俺はそんなもん、弱いお前らが悪いと思うわけですが」
私もそう思うが、今これ以上の問題は抱えたくないというところか。
過去よりはマシになっているとはいえ、いまだに異形への差別は根強く残っている。そのくらい『個性』で受け入れろ、なんて思うこともあるが力ある者を恐ろしく思うことも生存本能としては間違っていないか。
「とりあえず、タクシー代はそんなに高くないぞ」
溜息を吐きながら、第六天にメッセージを送る。
仕事のいくつかくらいは振ってくれるだろうが、厄介事を持ち込んでくる予感しかしないな。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。




